美男2
~Another Story~
「至福」
*78*
翌朝、先に目覚めたのは、テギョンだった。
暫くの間、微睡みながら、ミニョの髪に触れ、その髪にキスを落とす。
まだ、起きそうにないミニョを、そのままベッドに残すと、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取りだしながら、バスルームに行き、バスタブに湯を溜めると、掛けてあったバスローブを羽織り、また、ミニョが眠るベッドに戻ってくる。
身体を横に向いたまま、無防備に眠っているミニョの姿に、テギョンは、思わず咳き込んでしまった。
頬にかかる髪、シーツから剥き出している細い肩、盛り上がっている双方の胸には、昨夜の情事を思い出させるように、自分がつけた紅い花びらの痕が色鮮やかに残り、ひどく艶かしく見えた。
テギョンは、拳を口に手を当てたまま、珍しく、顔を赤くしたまま、突っ立っていた。
“ヤバイだろ・・・これは・・・襲え・・・って言ってるようなモノだろ?”
ミニョに、こんな、破壊的な色気があったとは思いもよらず、一晩中、その身体を抱いたにも関わらず、抑えきれなくなっている自分の色欲にも驚いた。
テギョンは、ミニョに誘われるように、ベッドに腰掛けると、ミニョの頬にかかった髪を払いながら、ミニョの唇を吸うように、何度も口づけていく。
「ん ッ・・・ふ ッ・・・」
ミニョのくぐもった吐息が聞こえ、テギョンは、唇をゆっくりと離した。
「・・・テギョンさん?」
起き抜けの掠れた声を出すミニョは、目覚めたもの、意識が、まだ覚醒していなく、自分の状況を掴めていない。
「水、飲むか?」
ミニョが頷く前に、唇を塞がれ、冷たい水が喉に流し込まれた。コクリと喉を動かし、飲み干す。
まだ、欲しそうに、テギョンの唇を吸うミニョに、テギョンは、妖艶な笑みを浮かべた。
「もっと・・・?」
ペットボトルの水がなくなるまで、その行為は続き、水がなくなっても、深い口づけは終わらず、シーツから剥き出したミニョの胸に、テギョンの大きな手が被さる。
テギョンの貪欲な愛に、ミニョは、テギョンにしがみつくように、身を委ね、溺れていた。
ぐったりとしたミニョを抱え、テギョンは、バスタブに入った。
ミニョは、テギョンに背を預けている。
乳白色の湯に浮かぶ、ミニョの白い肌には、さらに色濃くなった独占欲の痕に、テギョンは、満足そうに笑みを浮かべた。
それから、ふたりは、何度も、飽きることなく、情を交わした。
数日後、ふたりは、十分に満たされた幸せそうな顔で、空港で待つ記者たちの前に現れる。
サングラスをかけたテギョンは、ミニョの腰に手を回し、ミニョは、俯いたまま、テギョンの腕にしがみついて歩いている。
飛び交う記者たちの質問には、一切、答えはしないが、サングラス越しのテギョンの目は、ニッコリと微笑んでいた。
ふたりは、颯爽と、用意された事務所のバンに乗り込み、帰っていった。
★★★★