「二流小説家」という２０１０年公開の日本映画を観た。

知らなかったがアメリカの小説家、デビッド・ゴードンの推理小説を映画化したということだ。

一番驚いたのは、主役の上川隆也の実年齢（実に若々しい！）だが、なかなか楽しめた。

ストーリーには突っ込みたくなる部分もあったが、それは置いておいて、小説家についての設定でふたつほど気になったところを書いてみたい。

①執筆に原稿用紙のフォーマットを使う作家？

小説家である主人公がノートパソコンで原稿を書いているときに、原稿用紙のマスが出るフォーマットを使っていたが、こんなフォーマットを使っている作家は聞いたことがない。

まあ、今でも、手書きの作家が残っているから、あながちいないとは限らない。

もしかすると、主人公は昔ながらの作家なのかもしれない。原稿用紙に手書きする時期が長かったので、こんなフォーマットを使っているという設定なのだろうか。

書き下ろし小説の場合、原稿用紙何枚と指定されることは滅多にない。

プロなら、どのくらいのページ数で書けばよいか、ざっと分かっているからだ。この辺は、版元と小説家の間には暗黙の了解がある。

（すごく厚い本だとか、上下巻のように複数巻を出版できる作家はかなりの売れっ子である）

印税は短編でもない限り、原稿用紙一枚あたり幾らという計算ではなく、一冊いくらで計算される。

パソコンで書いているなら、４００字詰め原稿にこだわる必要はないのである。

新人賞で４００字詰め原稿何枚と規定しているのは、出版したとき、標準の本の長さに収めたいからだ。

制限を設けないと、とんでもなく長かったり、短い小説が応募されてきてしまい、出版が困難になる。

かくいう私も、原稿を横書きするので、周囲のひとに驚かれたことがある。

作家の多くは縦書きらしい。

わたしが横書きなのは、ワープロ時代の名残りだ。初めて使ったワープロの書院は、３行分くらいのディスプレイしかなかったから、縦書きで原稿を書くという選択肢はなかった。

横書きは、パソコン世代の前のワープロ世代の書き方なのだろう。

②小説家は先生？

映画では、でんでん演じる編集者は、主人公の小説家をニックネームで呼んでいた。

編集者が主人公と親しい、あるいは、軽んじているという設定なのだろう。

別の場面では売れっ子作家は、どこかのクラブで接待され、しっかり「先生」付で呼ばれていた。

ところが昨今では、編集者は小説家を「先生」とは呼ばない傾向がある。多くは、先生ではなく、さん付けである。

もちろん、いまでも編集者に小説家を「先生」と呼ばせる版元もあるが、少数派である。

小説家を先生付けしなくなった理由は「小説家が嫌がるから」と聞いた覚えがある。

もっと気になった点はあったのだが、個人や状況によって差があるから、指摘はしない。

でも、まあ小説家がプロトタイプ的に描かれるのは仕方ない。

↓　よろしかったら、クリックお願いします。

映画「二流小説家」