まぁ・・・探していたのは、「中島埠頭でPE2号を100mくらい投げられるリール。」
いろいろ他にも選択肢はあった訳ですが・・・
とにかく、某ネットオークションで一目惚れ、買っちゃいました。
メカ好きには、たまらない・・OLYMPIC Thunder Birdです。
1960年代後半~70年代にかけて販売されていた、アウタースプール式のスピニングリールです。
ちょうど、国産のスピニングリールがMITCHELやCARDINALなどの名門スピニングリールを超えようとしていた過渡期のリールです。
この時代は、「少しでも新しい機構を・・・」と、どの国産メーカーも凌ぎを削っていた時代で、
さらに、インスプールからアウタースプールへの過渡期、国内のリールメーカーも、
ダイワ(大和精工:1958)、オリムピック(植野精工:1948)、ダイヤモンド(大森製作所:1952)、
シマノ(島野足立株式会社)、RODDY(稲村製作所)、STRONG(五十鈴工業)、
アングラー(日工産業) と群雄割拠していた時代のお話です。
当時の、オリムピックは国内市場ではダイワと市場を2分する大メーカーであり、
日本で最初に釣り用リールを製造した老舗でもありました。
1960年~70年代は、まだまだ日本のルアーフィッシングは草創期で、
主な用途はサーフでの投げ釣りです、
そんな中オリムピックは投げ竿のアマゾン、スピニングリールは「93」で一世を風靡していました。
さて、このThunder Bird・・・何がすごいのか、と言うと、そのスタイルもさることながら、
・重い(795g)
・でかい(今の4500クラス)
巨大なスプールは、ナイロン7号を150m巻いて、さらにPE2号を300m巻いてやっとイッパイ。
で・・中を開けてみると、そのスゴさがよく解ります。
まさに、「ギヤの見本市」
ドライブギヤは2段で増速した後に、ウォーム・ホイール+ウォーム・ピニオンで駆動。
オシレーション機構は、ウォーム・ピニオン後端にある平歯ピニオンギヤで別駆動された上、
水平に配置されたオシレーションギヤには、内輪ギヤが切ってあり、
さらにその中を遊星ギヤが回って、オシレーション・カムを動かす。
そのギヤ配列や、クリアランス管理はまさに「超絶技巧」・・・・
・なんで、こんなに複雑になっちゃったの?
と聞きたくなるくらい複雑です。
おそらく、巻きムラの軽減や、重量バランスなど・・スピニングリール特有の欠点をなんとか克服しようという努力なのかな??と好意的に解釈する事もできますが・・
・おそらく、初の本格的アウタースプール・スピニングリールと言われる「93シリーズ」が、
あまりにも良くできていたため、それを超えようと、いろいろもがいた結果かな?
そもそも、「93シリーズ」は1954年に開発が始まり、1956年に初代「93」が発売、
その後も、なんと1980年代までサーフキャスティングEX-93として販売され続けた名機中の名機です。
その「93」の解説は、またそのうち・・・ですが
「93」の設計にあたってのコンセプトは3つ、「戦艦大和」「フォルクスワーゲン」「零戦」
だったそうで・・そりゃもう、「工業製品の王道」を行こうとした訳ですから、
その「93」を超えるのは、そんなに容易い話じゃありません。
で、「93」に代表される当時のスピニングリールの一番の問題は上記オシレーション機構でした。
特に、投げ釣りなどで遠投して何度も投げているとドライブギヤにエキセントリックカムを付けただけの構造では、どうしても「綾巻」になってしまって、
スプールの上端と下端が多く、中央が少なく巻けてしまいます。
現代の高級機は、この部分を円筒カムに置き換えて「平行巻き」できるようになっているので、
連続して遠投しても、ライントラブルが起きにくい構造になっています。
そのあたりの対策で「どうしようかな~~」の中での一つのトライとして、
オシレーションギヤに遊星ギヤを入れて減速するという構造だったのでしょうか?
そう、あまりにも良くできていた「零戦」があったため、後継機の開発が難航したように、
あまりに良くできていた「栄21型」エンジン以上の物を作ろうと、複雑な「誉」を作ってしまったように、Thunder Birdも非常に短命に終わっています。
実際にオーバーホールしてみると、あまりの複雑さに各部のバックラッシュやスラストクリアランスなどをシムプレートで調整しながら「順番を良く考えながら」組み立てなくてはならず・・
精度管理には、相当のコストを要したんじゃないでしょうか?
では、Thunder Birdは駄作か?・・・と言うと、そうでもないと思うんです。
そもそも、釣具、特にリールに関しては車やバイクと同じように「思い入れ」とか、
「エンスージアズム」といった部分、ようは「味」と言われる部分はとても大事です。
完全に分解清掃して、各部のクリアランスを調整し、きちんと注油したThunder Birdは、
さすがにギヤの数が多い分、動きが非常にスムーズかつ滑らかです。
なんといっても個性的なスタイルで、
その重さも僕のスーパーパルサーFWB-102に装着すると絶妙な重心バランスになる。
とりあえず、これで座布団サイズのヒラメでも釣ってみよう・・
でっかいジグをどこまで飛ばせるかな??
と思わせるリールです。


