たくさんの方に心がぽっと温もるコメをいただいて、うれしい。皆さん、どうもありがとう。ご心配おかけしました。


さて、紙吹雪の翌日。
オットは早く寝たものだから早朝に起き出し、どこかへ行ってしまった。そして午後から一人でお医者さんのところへ。本当は一昨日、「今度の予約日はワタシも一緒に行く」と言っていたのに「イヤ。来てくれるな」と拒まれてしまったのだ。

だから、ちょうど仕事がなかったので、家を片付けることにした。
今年に入って、発病してからそうだったが、オットは台所のストーブにあたって鬱々とする。そしてそのまま床に寝てしまうのだ。ここにずっと居ればハハと遭遇する機会が増える。ハハも台所へ出てきにくいだろう。なのに、なのに。
オレが一人になれる場所がない」とこぼしてもいたので、2階の物置になり果てている4畳半を大掃除。
ここにはオットの荷物とパソコンのケースやソフトの箱、そしてワタシの着物なんかが詰め込んであった。それを押し入れに片付けたり他の部屋に移し、掃除機をかける。すっきりして気持ちいい。
それからコタツを出してセットする。
うーん、こぢんまりしたスペースが出来たわ

ついでに寝室の敷きパットも替えて、さっぱりさせる。


そうこうするうちに電話が鳴った。
オットからである。クリニックかららしい。そしてすぐに「先生と変わるから」と言って、主治医の女医さんが出られた。
「いつもお世話になっております。ご迷惑おかけしていてすいません
「ご主人、今は話をするのもおっくうそうなので、もう少しゆっくりさせてあげて落ち着いたら、話し合いしてくださいね」
“話し合い”というのは、たぶんバイクのことなんだろう。オットは、どういうふうに言ってるんだろう。
「はい。このところかなり落ち込んでますので。今日も一緒に伺いたかったのですが、オットに拒まれたものですから」
「そうですか。ちょっとお薬を変えますが、しばらくこれで様子を見てください」そう言って電話は切れた。

しかしなぁ。話し合いって、いったい何をどうしていいのやら。
それより先生に、ワタシの話を聞いてもらわねば。


夕方オットが帰ってきたので、「おかえり。一人でゆっくりできるように、2階を片付けてコタツを出したよ」
そう言ったがオットは「フンッ」と無視。

夕食も、ありあわせながらオットの好きそうな洋風料理にしたが、ほとんど進まない。食欲の秋だというのに、また激やせしそうである。
それから、「またあのイヤな薬を飲まないといけないのか。手が震えて物が黄色く見える」と嘆く。確かに一時、躁状態になってしまったとき、そういう副作用の出る薬を処方された。それは端から見ればよく効いたと思えるのだけれど、本人はすごく不快だったらしい。
そしてまた、バイクの話である。もう、堂々巡りなのだが。

ひとしきり憤ったあげく、立ち上がって昨日より食器棚をきつく揺さぶる。
うちの食器棚は、古家の押し入れ部分をつぶして、そこにオットが棚ユニットを組み立てしつらえてくれたものである。だからオットは、ビスで留めたところとそうでないところを揺すぶって確認していた。
「こっちの棚は留めてないな。オレが今度切れたら本当にこれを倒すからな
「やめて。本当にやめて」
「どうしてだよ。オレと食器とどっちが大事なんだよっ」

新妻が「私と仕事、どっちが大事なの」と夫に聞くのは、よくある話。バカらしいけれど、そうやってすねてみせるのが新婚さんらしいじゃれ合いなんだよね。
しかし、しかしである。
こんな比較にならないようなことを結婚15年目のおっさんに聞かれても、返事のしようがない。コレクションの価値より、また床に散乱する破片を片付けるのがイヤなのだ。今度は紙みたいに簡単じゃない。人も犬もケガしてしまうから
でも「掃除が大変だから」なんて言ったら、逆上するだろうなぁ。そう思って黙っていると、またストーブをつけて床に寝っ転がる。

さんざ揺り動かし、歯ブラシを口につっこんで薬と水を出し、一通り終わらせて寝室へ上がらせた。