歩きながら、友だちに聞いてみた。
「出会い系の女って、ボーダーよね?」
「決まってるね。もう典型的なタイプ
「あれって、普通は気付くよな。ほんと、バカとしか言いようないな
「人のダンナさんにこんなこというのは気が引けるけど、そうだね」
「もうワタシ、やっていけなくても当然よね?」
「うん、そう思う。でも、話をしているときに思ったんだけど、ダンナはめちゃくちゃ甘えたよね。あの、謝るときの口調とかを聞いてると、甘えて謝ったら許してもらえるという魂胆見え見え

そうなのだ。
オットは「じゃぁどうしたらいいんだよ」とか言うときは、ふにゃけたわらび餅みたいな口調とすがるような目つきだった。
迷子になった仔犬みたいな目
あのなー。本当の仔犬なら抱きかかえてよしよしと連れて帰ってやるけどね、40をとうに越えたおっさん、しかも陰で自分の欲望むき出して女遊びしてるような男が、そういうことをしても可愛くないんだよ
むしろ、気色悪いだけで余計に腹が立つ。


そのときオットは
「オレは温もりが欲しかったんだよ。オレの昔の仕事仲間が廃業するって聞いたときも、つい淋しくてみかんに『○○、あの仕事を辞めちゃうんだよ。失敗もしてきたけど、憎めないヤツだったのに』と言ったらにべもなかった。みかんの言うことは正論だけど、何でも理詰めで物を言われると情がない
「あのさ、その友だちってちょっとヤバイ物を売ってたんでしょ。警察の世話にもなたことあるし。そういう人が足を洗って出直すって言ってるんだから、祝福してあげるべきじゃない。だからワタシは『良かったじゃん。真っ当な仕事で頑張れるんだし』って言ったんだよ。もう二度と会えないわけじゃなし」
と、ワタシ。
「ああ、ダンナは『そう、それは辛いね』とか言って欲しかったの」と友だち。
「そうなんだよ」と、またすがるような目をするオット。
ワタシはせっかちなので、そういう慰めや同情のプロセスを省いて、一気に励ましと祝福をしたんだけど、オットにしてみれば、たっぷり同情とかをして欲しかったみたいなのだ

淋しいのはわかるけど、そこでグジグジ言ってても始まらないし、ワタシは励ましたつもり。でもオットにしてみたら、たっぷり感傷を味わいたかったようなのだ
我が家は、たぶんコップに入った水を見ると、オットは「もう半分しかない」ワタシは「まだ半分もある」と感じるタイプのようだ。

「ワタシはね、前を向いて歩いていきたいんだよ。あんたは何回も仕事を転々としてるけど、そのたびにワタシは文句を言ったこと無かったでしょ。やりたいことがあって、そのために何かが必要だとしたら、ワタシは協力を惜しまなかった。もちろん資金面でもサポートしてきたよ。今の仕事も、成功して自分に自信を付けて欲しいから、ワタシだって接客したり、いないときの電話応対とか自分の仕事を後回しにしてでもやってるじゃん。それに対して、恩を売ったり見返りを求めたりもしたことないよ。家の用事や食事の支度だって、居心地が良いようにちゃんとやってるし、それもこれもあんたに成功してほしいからのことじゃない。とは言っても、それに関してプレッシャーもかけたことないしね」


そう言っていて、気がついた。
この家には“奥さん”がいなかったんだな
ワタシは性格テストなんかでも、かなり男脳の結果が出る。物事はきちんと筋が通ってないといやなのだ。でも、動物占いは天衣無縫なペガサスだけどね。
オットは愛情豊かなトラだ。性格テストはやったことないけど、女脳なんじゃないかしら。
以前、古くからの仲良しでうちのことを気遣ってくれる友だちに
「ダンナって、ものすごくみかんに対してコンプレックスとか勝てないとかいう思いを持っていて、その裏返しで荒れてるみたいね」と言われたことがあったけれど、ますますそうかもしれないな。私はそれで偉そうにした覚えもないし、いい迷惑だけど
つまりはワタシが「家庭を守る」と言うことの中には「家族を信頼し、可能性を信じて頑張る。もちろん自分も努力するし、みんなで上昇していきたい」という考えが大きい。たぶんワタシは、この家の夫であり母であった訳だよね
守ってあげたい、か弱くてやさしい妻ではなかった
オットは、そういうのを求めていたのか。でも、それでは生活が立ちゆかなくなるぞ。


そんなこんなを話しながら、電車に乗る友だちを見送る。
友だちは別れ際
「また仕事があったら言ってね。仕事がなくても、何か困ったことがあればいつでも連絡頂戴ね」と言ってくれた。本当に、オットはなんだけど、いい友だちを持って幸せだと思った


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