その夜、ワタシが横になったのは真夜中。夏なら薄明かりが差してくる時間帯だ。
しかし、ひっきりなしに姿勢を変えて辛そうな犬の様子をうかがったり、体をさすったりしていると、結局は一睡もできなかった。4時が過ぎ、2階で寝ていたオットも起き出してくる。やはり、どうにも気がかりなんだろう
入れ替わりにワタシは2階へ上がったんだけれど、1時間ほど経過して突然、オットの叫び声が聞こえた。慌てて飛び降りると、もう、犬の息はなかった。ついさっきまで荒い息をしていたのに、今は目を開いたままピクリとも動かない
鼻面をつかんで何度か息を吹き込んだけれど、肺のあたりがわずかに動いただけで、心臓は止まったままだった。
騒ぎを聞きつけて起きてきたハハと、3人でその場にへたりこんでしまう。

ああ、可愛がっていた家族が旅立ってしまった。もう、虹の橋のたもとまで行ってしまったんだろうか。

なんとも言えない気分で夜が明けるのを待ち、オットは大きな箱にきれいな布を敷いて犬を寝かせた。そしてハハが仏壇から台を持ってきて線香を上げる。
そのまま朝を迎えた。
翌日、動物霊園まで犬の亡骸を持って行く。火葬してもらい、小さな骨壺を持って帰ってきた。
誰もケンカしない平穏な状態だけれど、みんな沈んでいる

つい一昨日まで居たはずの犬が、もう居ない。いつも寝ていた場所に、大きな空間ができている。そして、それはもう埋まることがない。家族の隙間も埋めてくれていただろうに、今はぽっかり空いたままだ。
もう一頭いる犬も、すっかり元気をなくしてしまい、数日は食欲もなかった。

犬を見送った当初、オットは自分を責めた
どうして皮下の腹水を抜いただけで帰らなかったのか。内臓の分まで抜いてもらうように頼んだから、そのショックで死んだんじゃないか。連れて行った自分が悪い、と。悔やんで悔やんで、ますます落ち込んだ
秋に調子が悪くなり、末期の悪性腫瘍だと診断されたとき、すでに覚悟はしていたこと。それをなんとかだましだまし、今まで生きながらえたんだから。ほんとに寿命だんたんだ、仕方ないよ。そう慰めても、オットは落ち込んだままだった。
まさにペットロス状態である

ワタシは・・・「しんどい毎日だけど、お前たちが居るからがんばれるよ。お前たちを見送るまではちゃんと最後まで面倒みるから、安心して長生きしろよ」と犬に言い聞かせていた。事実、今すぐにでも別れたくても、犬のことを思うと踏ん切りがつかない。縁有って我が家に来た犬たちなんだから、彼らはきっちりと面倒をみてやらねば。そう思っていた。
そんなワタシを見て、腫瘍ができてしまった犬は生き急いだんじゃないだろうか。飼い主を早くラクにさせたくて。そう思うと、涙が出てしょうがない。ごめん、ワタシがあんなことを言ったから、逝ってしまったんじゃないか
ワタシも、「寿命だ」とオットに言い聞かせながら、ワタシを気遣ってくれたんじゃないかと思うと胸が締めつけられた。

後日、獣医さんへ挨拶に行ったのだが、長く持っても2ヵ月ぐらいかもしれないと心配していたのが、その倍も持ったのは本当によくがんばったと言ってもらう。それで、なんとかやるだけのことはしてやれたかなと、残念ながらも少しは傷が癒えるようだった。
とはいえ、淋しいのには変わりない
愛嬌のある素直な犬だっただけに、しかももう一頭より年下だっただけに、惜しくてならない。もちろん、残る一頭も大事に面倒をみてやらねばならないし、覚悟の日はもう一度来るのだが。
本当は、若い犬をまた飼うと、こちらの犬も元気を取り戻すかもしれない。そしてわたしたちも元気になるかも。
でも、でも。
また飼ってしまうと、また踏ん切りがつかなくなるからダメだろう。


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