オイシックス・ラ・大地の2024年3月期 第3四半期(Q3)決算が
2月13日に公表されました。
この会社の収益の柱は「国内サブスク事業」で、
下記の3つのブランドで国内の消費者向けに食材を
宅配で販売しています。
① Oisix; 全社売上の 52%を担う主力事業。
② らでぃっしゅぼーや; 全社売上の 14%
③ 大地を守る会; 全社売上の 10%
計 全社売上の 76% (2024/3年度Q1〜3実績)
ところが、本年1月に上場企業のシダックスを子会社化し、
Q4からは同社を連結する事としました。
これで、上述の消費者向け主体の事業体から
Q4からはシダックスの企業の食堂や学校給食などの
運営を取り込んで「B to B」と「B to C」の両方を
備えた事業体に脱皮する事になりました。
今回の決算は、脱皮前の最後の決算となります。
決算内容を見る前に、株価の動きを月足で見てみます。
月足
500〜600円程度で安定していた株価が2018年に入って上昇開始、
2021年9月には最高値 5,220円に達し、約4年でほぼテンバガー!
だが、そこで頭打ちで同年11月に急降下。
翌2022年6月に 1,400円台で底を打ち反転上昇、
本年2023年5月に 3,000円台まで戻したかと思えば
そこから再度急降下してしまいました。
直近の動きを日足で見てみます。
日足
昨年5月の2023/3期 通期決算発表を受け株価は急騰し
一時は 3,000円を超えたが、そこから反転急落。
一旦は2,300円前後で落ち着いたが、8月に2024/3期Q1の
決算発表を受けて更に下げ、以後もジリジリ下落、
10月には 1,200円を割り込みました。
11月に入って少し戻し、Q2の決算も無難に通過し、
以後は概ね1,250〜1,450円辺りで推移。
そして、Q3の決算発表を迎えました。
それでは決算の中身を見てみましょう。
1) 当期決算: 増収増益。
a) 当年度Q1〜3の売上は前年同期比 4%増、営業利益は 24%増。
売上と営業利益率の四半期別推移は下図の通り。
売上は2020/3期 後半から2021/3期 前半にかけて急拡大。
これは、コロナ禍初期の宅配需要急増が主要因。
以後は上昇スピードがかなり緩やかになっている。
毎年Q3の売上が突出しているのは 10〜12月なので
クリスマス/正月需要(特にお節)だと思われ、
今年度のQ3も同様に大きかった。
営業利益率は以前は 6%前後だったものが、
2022/3期 Q4に新設の物流センターのトラブルを受け赤字転落。
2023/3期はQ4に特別PR費 11億円をかけた事により
営業利益率が低かったが、それ以外は概ね 3~4%で低位安定。
だが、このQ3は 6.9%に上昇した。
2) 安全性: 差し迫っての不安はないが、改善が必要。
a) 流動比率は118%と低め。
一般的に「余裕あり」と言われる200%には遠く、
「厳しい」と言われる100%に近い。
前年度末の117%からほぼ横這い。
前々年度末は179%あったが前年度に悪化した原因は
投資有価証券の大幅増(シダックスへの出資)と
その資金の殆どを短期借入金で賄った事と見られる。
b) 営業キャッシュフローは少なくとも過去6年間は常にプラス。
今年度もQ1~2は大幅にプラスだった(Q3の数値は非公開)。
c) 売掛金回収期間は1.3ヵ月、在庫期間は0.5ヵ月で、危なげない。
d) 上記より、財務面での安全性は何か非常事態が起こらない
限りは問題はないと思うが、非常事態が起きても
耐えられるように改善すべき。
その為には投資資金を長期借入金など
すぐに返す必要のない資金で賄うべきで、
銀行などと交渉しこの点を改善していくべきと考える。
3) 収益性: 営業利益率が低いが、改善傾向
a) 売上総利益率は前年度は 48%、当期Q1~3は 49%と
安定的に高い。
b) 営業利益率の四半期毎の推移は上述の通りで、改善傾向。
従来は捨てられていた食材や豊作品の有効活用、
加工内製化の加速、物流効率化などにより
収益性の改善を図っている。
4) 成長性: シダックスの子会社化による成長加速期待
年間の売上推移は以下の通り;
a) 2021/3期までは既存のBtoC会員ビジネスが順調に成長し
2017/3期からの 4年間で売上は年平均 44%増加。
だが、以降はほぼ横這い。
b) しかし、今年度のQ4からはシダックスの連結を開始する。
2024/3期の見通しにはシダックスの3カ月分の売上
(上図のオレンジ部分)が乗っかるので、売上は急増見込み。
来年度の見通しからはシダックスの売上の1年分が
乗っかる事になるので、急拡大が期待できる。
5) 通期見通しの修正;
今回、2024/3通期見通しを修正した。
①売上; 16%上方修正
②営業利益; 30%下方修正
売上を上方修正した主要因は、シダックスの連結開始。
営業利益を下方修正した主要因は;
・今年1月に厚木の冷凍ステーションが完成。
Q4には冷凍設備などを既存の倉庫から移設したり
在庫の移動などあり、一時的なコスト増となる。
また、混乱を防ぐ為、冷凍食品の販売を抑制する。
・シダックス子会社化関連の一時的な費用や
のれんの償却など。
いずれも一時的なコストを多く含んでおり、一方で
厚木冷凍ステーションの稼働が開始すればコスト削減に
資するので、来期以降の収益力向上に繋がると見られる。
総括;
① 現状の主流である消費者向けサブスク事業は成長は
継続しているが、伸びはかなり鈍化。
但し収益性は改善している。
② 一方で、シダックスの連結子会社化により
売上・利益は倍増が期待される。
③ 上記より今後に期待できるが、
今年度の通期利益見通しを下方修正した事は
市場では嫌気される可能性がある。
以上です。
このオイシックス、株式投資に興味ある方は、会社の事をより良く
知るためにも、一度サービスを試してみてはいかがでしょうか?
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。
以上です。