増資は良いのか?悪いのか?(初心者向け) | 投資家リプリーの気まぐれブログ

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株式投資に関して気になった事、調べた事などを気まぐれにアップしていきます。

株価を動かす材料として時々目にする増資。

増資が発表された後、株価は上昇する場合、下落する場合、両方あるようです。

 

そもそも増資って良い事?悪い事?どっちなんでしょうか?

 

(1) 増資の目的、それはズバリ、資金調達です。

 増資をするのは、何かの理由でお金が必要な時です。

 

 その理由とは何でしょうか?

 大きく分けて4通りあると思います。

 

 (a) 会社の買収:

  この場合、業容拡大が期待できる、つまり売上は確実に増えます。

  ただ、利益も増えるかどうかは買収先次第です。

 

 (b) 先行投資 ー 資産拡張:

  具体的には、増資で調達したお金を使って以下を実施するケース。

  ・新たな工場や物流センターなどの施設を購入または建設

  ・設備の増設/更新

  ・lTシステム開発

  などなど...

 

  この場合、これらを行う事により売上増、合理化により利益率改善、など、

  将来の増益が期待できます。

 

  会計的には、こうして使ったお金はバランスシート上に資産として残り、

  「減価償却」という形で数年に分けて経費として落としていきます。

  つまりお金を使った年に決算が大きく悪化する、という事は起こりにくいです。

 

 (c) 先行投資 ー 経費拡大:

  具体的には;

  ・広告宣伝費

  ・人員のリクルート費用

  ・その他、ビジネス拡大に必要な経費の増大

  などなど...

 

  この場合も、これらを行う事により売上増を狙っている訳ですが、これにより

  本当に売上が増えるかどうか?それは(b)の場合よりは確度が下がると思います。

  

  例えば、(b)の代表的なケースでは

  「受注が伸びてるのに生産が追いつかないからこれ以上受注を増やせない」

  だから「増資して生産キャパを増やせば受注は更に伸びる」

  つまり既に「受注が多い」状態。

 

  対して(c)で多いケースは「広告宣伝を増やして受注を増やす」

  つまりこれから受注を増やしていこうという話。

 

  会計的には(c)の場合は使った時に全額経費として落ちます。

  つまりお金を使った年の損益は悪化する可能性が高いです。

  

 (d) 損失穴埋め:

  過去に大きな損失を出し、自己資本が毀損してしまった &/or 資金繰りが苦しくなった

  ために穴埋めとして増資を行うもの。

  この場合、増資は将来の売上増には特に繋がらないケースが多いでしょう。

 

 纏めると:        将来の売上増効果    その年の経費

 (a) 企業買収          期待大        買収先分増加

 (b) 先行投資-資産       期待大       あまり増えない

 (c) 先行投資-経費    期待できるが確度は?    大きく増加

 (d) 過去の損失穴埋め     効果無し        関係無し

 

 

(2) なぜ増資なのか?

 上記(a)(b)(c)の場合、資金調達だけが目的なら、銀行からお金を借りれば済む話です。

 なぜ増資なのか?

 

 「銀行借入なら利息がかかるが増資ならタダ」

 こんな事を言う経営者がいたとしたら、その人は失格です。

 株式には金利以上の配当を払わねばなりません。

 でなければ、投資家として、投資する意味がありません(短期の利幅狙いを除き)。

 

 「今は先行投資の段階だから配当は出せないが、将来儲かりだしたら出す」

 これはOKですが、この場合は将来は当然金利以上の配当を目指さねばならない。

 

 また、金利は経費で落ちるが(その分、法人税を減らせる)、配当は税金を払った後の

 利益から払います。つまり、経営者にとって、増資は借入より割高なんです。

 

 更に、増資の場合は既存株主の持分比率が下がる(この会社が同じ金額の利益を

 あげた場合、既存株主がそこから得られる配当が少なくなる)という問題もあります。

 (希薄化と言います)

 

 つまり、株主の事をきちんと考える経営者なら、増資より借入を選ぶでしょう。

 借入でなく増資を選ぶのは、何か特別な理由があるはずです。

 

 具体的には;

 ・信用状況悪く、まともな条件では銀行からお金を借りられない。

 ・銀行から借入も可能だが、借入して流動比率や自己資本比率などの指標を悪化させ

  既存の借入の借り換えの時の条件が悪化する事を防ぐ。

  つまり「財務の健全化」の為に敢えて増資を選ぶケース。

  

 

(3) どの様に増資するのか?

 主に4つの方法があります:

 ・公募;不特定多数の投資家から申し込みを受け付ける。

 ・株主割当;既存の株主に新株を引き取る権利を割り当てる。

 ・第三者割当;既存の株主以外の特定の第三者に引き受けてもらう。

 ・新株予約権発行; 特定のファンドに株を一定の価格で引き受ける権利を与える。

  ⇒ ファンドは株価が上がったら株を引き受け、すぐ売り抜けて利幅を稼ぐ。

  ⇒ この亜流が悪名高い「MSワラント」で、これはファンドの引き取り価格が

   株価に連動して常に株価より一定比率低く設定される。

 

 人気ある銘柄は「公募」にするケースが多いでしょう。

 「株主割当」は既存株主にとって希薄化のデメリットはありませんが、逆に引き受けても

 持分比率は増えないので引き受けるメリットもあまりないのが難点です。

 「第三者割当」の場合は割当先と何か戦略的な協業を含むケースもあります。

 「新株予約権」特に「MSワラント」の場合は、大量の株式が売りに出る可能性あり、

 株価の押し下げ効果が大きくなります。これを選ぶ企業は、これしか選べないから、

 (それ程までに財務状況が悪く人気がない)というケースが多い様に思います。

 

 

(4) 増資は良いか?悪いか?

 これは上記の要因を考え、以下を総合的に判断する必要があります。

 ①増資の理由; 収益増に繋がるかどうか? 

 ②なぜ借入でないか; 財務の状況はどうか?

 ③増資の方法;

  「公募」の場合、収益増のメリットが希薄化のデメリットを上回るか?

  「第三者割当」の場合、引き受け先は誰か?長期保有を見込めるか?

         ビジネスでのシナジーが期待できるか?

  「新株予約権」の場合、「悪い増資」の可能性が高いと思います。

 

 

上場企業の増資のニュースを目にしたら、上記を参考にそれが良い増資か悪い増資か

考えてみてはいかがでしょうか?

但し、上記は筆者の個人的見解に過ぎず、正しいとは限りません。

異なる意見をお持ちの方もおられるでしょう。

投資は自己責任でお願いします。

 

 

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