投資家リプリーの気まぐれブログ

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株式投資に関して気になった事、調べた事などを気まぐれにアップしていきます。

インフルエンサーの「なのなのさん」が上場企業のアドバンスクリエイトについて

「きな臭い感じ」と「X」で呟かれていました。

 

 

なのなのさんご指摘の「キナ臭い点」は次の2点です。

 (a) 売上計上方法に関して監査法人から指摘を受け、

  第三者による調査チームを設置して検証中。

 (b) 売掛金が急増中。

  理由は「債権流動化を一時止めた」との事だが、

  詳細がわからない。

 

 

興味が湧いて、状況を見てみました。

以下、私見ですが、興味がある方はどうぞ;

 

 

(1) アドバンスクリエイトって、どんな会社?

 

 「保険市場」という保険比較サイトを運営し、

 下図の6つの事業を行っている会社です。

 この中で保険代理店事業が売上の約6割を占める最重要事業であるものの、

 大赤字を出して全社の足を引っ張っている状況です。

 

 

(2) 長期業績推移;

 

 過去の売上と経常利益の推移、及び今期(2024/9期)見通しは

 下図の通りです。

 

 売上は緑の棒グラフ(数値は左の軸)で、2022/9期までは

 順調に成長していたものの、2023/9期に減少し、

 今期見通しも更に下がるとの事です。

 

 経常利益はオレンジの折れ線グラフ(数値は右の軸)で、

 黄色の横ラインより上が黒字、下が赤字です。

 2022/9期までは利益も順調に伸びていたが、

 2023/9期に赤字転落。

 2024/9期は僅かにプラスになる見通しです。

 (但し、第3四半期累計ではまだマイナスです)

 

 売上減少や損益赤字化の主要因は後述します。

 

 

(3) 保険代理店手数料の売上計上方法と売掛金;

 

 保険代理店事業では、同社は保険のお客さんを保険会社に紹介し、

 保険会社から代理店手数料を受け取って売上を計上しているようです。

 

 この手数料は一括で支払われるのではなく、保険会社がお客さんから

 保険料を受け取る都度にその一部を手数料として同社に支払っているようです。

 

 例えば、30年間の生命保険を成約した場合、お客さんから

 保険会社へは30年間にわたって毎月保険料が支払われます。

 この場合、保険会社から同社への手数料も30年間にわたって

 毎月支払われる事になります。

 

 この場合、同社の売上計上方式は;

 「今後30年間にわたって受け取るであろう手数料を

 現在価値(Present Value略してPV)に置き換え、

 その合計額を計上する」

 → つまり、実際にお金を受け取るのは30年後で

  あろうとも、売上は成約した時に計上する

 

 というものです。

 手数料を現在価値に置き換える際には、金利の他、

 過去2年間に成約した保険契約の内の解約されたものの比率

 などを元に算出された割引率を使用しています。

 

 具体例;

 10年間の保険契約を成約し、毎年100円の手数料を受け取る場合;

 仮に割引率を5%とすると、毎年受け取る手数料の現在価値は

 次の表の青色と黄色の部分で、その合計は803円になります。

 

 この場合、成約した年に803円の売上を計上する事になります。

 

 一方、その年に実際に入金するのは、青色の100円のみで、

 残りの703円は売掛金として残ります。

 

 同社では、この703円を恐らくどこかの金融機関の

 債権流動化の仕組みに載せて売っぱらって現金化

 していた(2023/9期まで)と思われます。

 この為、将来にわたって入金予定の(つまりまだ入金していない)

 多額の手数料が残っているはずなのに、売掛金を小さく

 抑える事ができていた訳です。

 

 

(4) 2023/9期の売上減少と損益悪化の主要因;

 

 「過去に成約した保険契約で想定以上の解約が出た」

 これが主要因です。

 同社によれば、この背景は;

 ①急激に進んだ円安を受けた外貨建て保険の解約

  → 円安により外貨建て保険の保険料が高くなったため?

 ②株高による貯蓄性保険の解約

  → 保険を解約して株を買う、という動き?

 

 のようです。

 

 解約が増えるとどうなるか?

 上述の例の場合、5年後に解約された場合、

 その時点で残っている手数料の現在価値分 350円が

 解約の時点で売上のマイナスとして減額修正され、

 そのまま損失としても計上されます。

 

 また、解約が増えると解約率が上がり、

 現在価値を算出する割引率も上がり、

 過去と同じ契約を取っても計上できる売上額が

 減少する事になります。

 上述の例の場合、同じ10年間で毎年100円の手数料を

 受け取る契約であっても、契約時の売上は

 割引率5%の時の803円に対し

 割引率が7%になったら売上は737円に減少します。

 

 つまり、2023/9期の売上減少と損益悪化の主要因は;

 ①保険契約の解約により、既に売上計上済みだった

  将来の手数料分の売上を減額修正した事。

 ②解約増により割引率が上がり、同じ契約の

  売上高が落ちた事。

 

 の2点のようで、これが2024期も続いているようです。

 

 

(5) キナ臭い点の実情は?

 

 なのなのさんご指摘の「キナ臭い点」は;

 (a) 売上計上方法に関して監査法人から指摘を受け、

  第三者による調査チームを設置して検証中。

 (b) 売掛金が急増中。

  理由は「債権流動化を一時止めた」との事だが、

  詳細がわからない。

 

 

 (a)については、監査法人の指摘は;

 ・上述の通り保険契約の解約が出て、過去に計上した売上を

  後になって減額修正された。これは異常。

 ・そもそもの割引率の見積りがおかしく、見直すべきでは?

 

 というものと推察されます。

 調査チームが「見直すべき」と結論付けた場合で

 それを過去の成約分まで遡及して適用する場合、

 今後、巨額の売上修正と損失計上が行われる

 可能性があります。

 → 同社経営陣は今の計上方式が適切であると主張しているようですが。

 

 (b)については;

 上述の通り、従来から売掛金はどこぞの金融機関の

 債権流動化スキームに乗って現金化されていたと

 推察されますが、解約によって同社が損失を計上した

 という事から、このスキームは弁済義務を伴うものと

 推察されます。

 (弁済義務; 債権回収ができない場合は、債権の元の保有者が

 その分を負担するという事)

 

 これを受けて推察されるのは;

 ・銀行側としては、このような弁済が後で必要とならないように

  そもそもの割引率を調整して欲しい。

 ・アドバンスクリエイトとしては、弁済義務の無いスキームに変えて欲しい

  (その分、銀行の手数料は上がる)

 

 という双方の思いをぶつけ合って交渉し、その間は

 債権流動化を実施できなかったものと推察されます。

 

 同社の資料によれば2024/9期Q3からは再開された模様なので

 銀行と話がついたものと推察されます。

 

 どのような話になったのか知りたいところです。

 

 

以上の通りで、

①売上計上方法について監査法人とどう話がついたのか?

②債権流動化について銀行とどう話がついたのか?

 

これら事項について何らか説明がないと、株主の方々も

安心できず、「キナ臭い」との印象を拭えないかと思います。

 

 

以上です。

 

尚、この記事は売り推奨でも買い推奨でもありません。

投資は自己責任でお願いします。

また、この記事の内容には筆者の勘違いや計算ミスなどがあるかもですが、

あらかじめご了承下さい。

 

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