【短編】ぽむの樹
一つの世界がある。
四つの大陸と、一つの列島からなるその世界の真ん中に、小さな小さな、島がある。
島の真ん中には大きな大きな樹が根を伸ばしていて、年がら年中、色とりどりの美しい花を咲かせている。

あか、あお、きいろ、みずいろ、ふじいろ……
花の模様もひとつひとつが全部違って、水玉、しましま、うずまき模様。
みんな違って、その全部が美しい。
大きな樹に咲いた花たちは、思い思いに伸びをして、歌を歌い、おしゃべりをして、笑い合う。
そうして十日ほど楽しんだ後、花たちは静かに眠る。
眠った花は、やがてゆっくりとしぼんで実を付けた。
その実はやがて熟して膨らんで、大きな音を鳴らして弾ける。
熟した実には、命が宿った。
木の実が弾けて命を宿すとき、「ぽむ!」という大きな音がする。
だから、命を宿した木の実たちは、「ぽむ」と呼ばれ、色とりどりの花を咲かせた大きな大きなお母さんの樹は「ぽむの樹」と呼ばれるようになった。

木の実から生まれたぽむたちは、花だった頃と同じ色をしている。
大きくて、まあるいぽむもいれば、小さくて、まだ自分の形をどうしようか悩みながら生まれてくるぽむもいる。
ぽむたちは、うまれてから三日ほどお母さんの樹の下で歌って暮らす。
やがてお母さんの「ぽむの樹」が、うまれた子ども達に風を送ると、こどもたちはその風にのって、島の外に出ていくのだ。
赤いぽむは大きな火山の火口を目指す。
青いぽむは、広い海の、そのまた、向こう側を目指す。
どこにいこうかまだまだ悩みながら、お母さんの送った風に乗るぽむもいる。
そうして、ぽむたちはいつか……大切な「ぼくだけのひと」に出会う。
そんなちいさな、木の実のお話。
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ぽむの樹は、「児童書」「絵本」的な、優しい雰囲気の作品が書きたくて、お正月から考えていたお話ですが、なかなか進まず……
今回のお話は序章ですが、今後、いくつか小さいお話を集めた短編集に出来れば良いかなと思っています。
今回の制作に当たり、
ヴィンセント様が贈ってくださいましたイラストを使用させていただきました。
誠にありがとうございました。