証明写真は全て免許証に使われていると思われる写真で、全員無表情で写っているため、全員犯罪者にしか見えなかった。









私は3人の刑事さんに見守られる中、事件当時の犯人の顔を気絶しそうになるくらい懸命に思い出し、何人か似ている人物を伝えた。









顔と言っても、目と眉毛しか出ていなかったため、似ていると言っても本当に自信がなかった。








日村さん「教えてくれてありがとう。実は『コイツちょっと怪しいなぁ』ていう人が見つかったから、


今度その人の家に行って『ガサ入れ』って分かるかな?

刑事ドラマでよく聞くと思うんだけど、裁判所に行ってガサ入れしていいか許可をもらわなくちゃいけないんだけど、✕月✕日辺りで考えてるんだ。」








私「はい」







日村さん「でね、もしこの日にガサ入れが出来たら、七菜子ちゃんにもここ(警察署)に来てもらって面通しをしてもらいたいんだ。

あ、面通しって、取調室にいる犯人を部屋の外から見てもらって、犯人かどうか確かめてもらうことなんだけど…………出来る?」









私はその時、口には出さなかったが、







「もう2度とアイツの顔を見たくない」という気持ちと、





「見ても犯人かどうか分からないかもしれない」という不安と、






「あたしが面通ししないと捜査が進まない」というプレッシャーでいっぱいになっていた。









私は日村さんから目線を反らし、自分の足元を見て





「大丈夫です。できます。」




と言った。







その様子を見て、"どう見ても大丈夫じゃない"と思ったのか、日村さんは、うつ向いて座っている私に、しゃがんで目線を合わせてくれて、







「無理しないでいいんだよ。」







と、言って気を遣ってくれた。







私は、日村さんや吉本さんや、私の知らないところでも捜査してくれている刑事さん達のためにも、犯人逮捕に全力で協力しなければと思い、






「大丈夫です。やります。」





と返事した。







日村さんも吉本さんも「顔をよく覚えてなくても大丈夫だからね」っと言ってくれた。








その日はそのまま自宅まで送ってもらい、日村さんと吉本さんが、両親に容疑者の写真の件や、ガサ入れの件、面通しの件なども説明してくれた。






私はこの時、刑事さんたちに父親面をする父がものすごく嫌だった。