車蝦歌舞伎役者に食はれけり  一寿


国際的に知られている日本料理といえば、

誰もが天麩羅・鮨・すき焼きをあげると思います。

その中で天麩羅と鮨は海老なしでは

考えられません。


スーパーには何種類もの海老が並び、

昔はレストランでしか食べれなかった海老フライが

今は家庭の食卓に上がります。


日本人ほど海老にこだわる国民は

他に類を見ないようです。


近海の天然物が駄目なら海外に目を向け、

それが駄目なら養殖へと

日本人の海老好きは止まることを知りません。


海老類は世界に三千種程いますが、

日本で圧倒的に人気のあるのは

車海老と伊勢海老です。


両者とも人気は互角で互いに譲りません。

体系も対照的で、車海老はやや細身で遊泳型にたいし、

伊勢海老は円筒形で歩行型です。


車海老は日本から西南太平洋・インド洋東岸まで

幅広く分布して日本の特産ではありませんが、

日本では特に好まれます。


英名もkuruma.prawn,

または日本のタイガーエビといわれています。


クルマエビ科は外国では縞模様から

タイガーと呼ばれるようです。


日本では体を丸めますと、

節と縞が車輪に見えるところからの

語源のようです。


和漢三才図会(寺島良安 正徳2年 1712年)に、

『車エビ 大きさ四五寸。皮厚く節高く、

褐白色の模文あり、これを煮れば紅に変ずる。


形がかたまりて車輪の如し。

夏より出て秋冬盛ん。味は最甘美、上品なり』

とあり、やはり車輪説をとっています。

車輪に見えるのはの日本だけのようです。

平安時代の牛車の車輪のイメージからでしょうか。


車海老以外の海老は美味しくないと

思っている方が多いと思いますが、

クルマエビ科の海老は食用になるだけでも、

百十種類ほど生息しているそうです。


ひところ冷凍物の海老といえば

大正海老が市場を多くしめていましたが同じ仲間です。


色鮮やかで人気の高かったブラックタイガーも同じ仲間で、

こちらの方は揚げた後しばらくしますと

身がかたくなりますので今は人気がないようです。


江戸前のかき揚げといえば芝海老ですが、

芝海老も同じ仲間です。