前回投稿が「ステマ規制がはじまります」ということでしたが、それから2年が経ちました。

 

この間で2件の処分事例がありますので、ご紹介いたします。

 

①来店者にGoogleマップの施設の口コミ投稿欄に、星4また5の高評価を投稿することで、提供する役務の対価を割り引いていたところ、これは第三者の投稿であっても、全体としては事業者の表示であり、このことが一般消費者にとっては判別困難な表示とされました。

 

②オンラインショップでの事例です。第三者に商品の無料提供や対価の支払いを条件に、インスタグラムでの好意的な投稿を依頼していました。事業者はその投稿の一部を抜粋して自社サイトで当該商品を「インスタグラムで注目度上昇中」などと表示していましたが、第三者に依頼した投稿であることを明らかにしていなかったので、この一連の事業者の表示が、一般消費者にとっては広告か否か判別が困難な表示とされました。

 

いずれの処分も事業者に対し、当該事例が景品表示法に違反する旨を一般消費者に周知させること、再発防止策を役員や従業員に周知徹底させること、今後は同様の表示をしないことという命令が出されています。

①今年の10月1日から、ステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず広告であることを隠す行為)についての法規制が開始した、その経緯について。

 

 一般消費者が商品やサービスの選択を行う際に、ネット上の商品レビューやSNSでのクチコミを重視する傾向にあるなか、企業広告よりも自分の知らない他人によるレビューや、人気ブロガーや万単位のフォロワーを有するSNS上のインフルエンサーの意見を重視する傾向にあります。そのため企業関係者がその立場を伏せて商品レビューで高評価を記載する。あるいは企業がインフルエンサーに対し、自社の商品やサービスに高評価を与える記事の投稿を依頼し、インフルエンサーが企業からの依頼であることを明示せずに投稿した場合、これらは一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあります。すでにEUや米国では法規制が進んでいることからも、消費者庁は令和4年末までに有識者による検討会を重ね、年明けには運用基準案を公開してパブリックコメントを募り、令和5年の3月28日に景品表示法第5条第3号の指定となる「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示」を告示し、その運用基準を公表しました。

 

 

②ステマ規制による景品表示法違反とならないためにも、具体的な対策とは?

 

 消費者庁が公表した上記の運用基準が参考になるのはもちろん、先述の消費者庁の検討会に有識者として出席している業界団体のWOM(Word of Mouth =クチコミ)マーケティング協会が、今年の6月下旬にこの運用基準に基づいた「クチコミマーケティングに関するガイドライン」の改定を発表しています。その中では「関係性の明示」と「偽装行為の禁止」を二本柱に、一般消費者にとって、表示内容全体から、事業者の表示であることが明瞭にとなっていることをポイントとしています。「関係性の明示」とは広告主体(企業名や略称、著名なブランド名称)の明示と関係内容(謝礼をもらっている、商品提供を受けている、PR案件としての投稿、商品モニターに協力中など)の明示です。また関係タグにあっては、「プロモーション」「PR」「宣伝」「広告」の4つを具体的な表記と限定し、他の多数のタグに埋もれてしまうような場合は明瞭な表示とはなりません。

 他の注意点としては、この新しい規制はSNSといったネット上の表示のみならず、雑誌媒体や編集記事、テレビ番組といったすべてのメディアでの表示が対象となることです。また特にネット上のステマ広告については、それが規制開始前の掲載であっても本年10月1日以降も閲覧できる状況にあれば、措置命令の対象となりうることがあげられます。

 

③アフェリエイトの広告の発注や、アフェリエーターとして受注する場合の注意点は?

 アフェリエーターに発注している場合は、発注先のサイトでの紹介方法や表現のいかんによって、景品表示法の行政処分を受けるのは発注者である広告主です。そのためアフェリエーターと広告主をつなぐASP(アフェリエイト・サービス・プロパイダー)や広告代理店を介して、出稿に際しての景表法違反とならないための注意事項の周知徹底(不適法事案となり措置命令が出た場合の賠償を定める規約など)がポイントになります。反対にアフェリエーターとして受注しているのであれば、広告主からの賠償請求を受けないよう、先の注意事項や規約の精査も重要です。

 一般消費者向けにウェブサイトによる通信販売を企画する中で、法規面での注意点のほかに、個人情報の取扱について、SNSを利用した広報活動での注意点をあげてみます。

 

「許認可が必要かどうか?」

 まず提供予定の商品・役務が、食品・酒類や医薬品・化粧品のように、商品を販売することに許認可が必要なものにあたるのかどうか、確かめましょう。他にも不用品や中古品を買取して、販売する場合は古物商の許可が必要です。このとき、中古ブランド品の買取販売に関しては、慎重に取り扱う必要があります。コピー商品(ニセモノ)を仕入れて、ブランド品として販売することはできませんし、ニセモノと知りながらコピー商品として販売することもできません。これはブランド品の並行輸入する場合でも同じです。民事上はもちろん、刑事上の責任を問われることになります。

 

「利用規定と個人情報の取扱」

 利用規定については、いわば契約書にあたるものですから、安直な策定は禁物です。通信販売にはクーリング・オフ規定がありませんので、リスクを踏まえた決済方法とともに、商品であれば返品、役務提供ならばキャンセルの規定は慎重に策定する必要があります。その他「事業者は一切責任を負わない」などはもちろん、「事業者が責任を認めた場合のみ賠償する」といった、一方的に消費者側が不利な規定は消費者契約法で無効とされます。また、事業者の氏名・名称、住所、電話番号や具体的な決済方法、送料など代金以外の費用を必ず明示するといったルールは、特定商取引法に定められています。

 

 次に、一般消費者の顧客情報をデータベース化して保持していれば、個人情報取扱事業者としての責務を負うことになります。そのため利用目的や範囲を定めるプライバシーポリシーの策定は、上記の利用規定とともに慎重な策定が求められます。この顧客情報については、個人情報保護法上で不適法とされる取得方法以外に、担当者が以前の勤務先だった競業他社から持ち出したものを利用すれば、不正競争防止法に反する場合もあります。したがって、自社の顧客情報については、ウェブ上でのセキュリティはもちろん、タッチできる人間を制限するなど、物理的なセキュリティにも配慮が必要です。

 

「広告表示やSNSを利用した広報活動について」

 サイト上の商品・役務の説明や価格表示は広告にあたりますので、期間限定セール価格と表示していても、値下げ前の価格での販売期間や実績がなければ、景品表示法に違反しますし、商品の性能や役務内容の誇大広告については、景品表示法とともに特定商取引法にも違反することもあります。加えて医薬品や旅行などは、薬機法、旅行業法といった関係法令による広告規制もあります。

 

 さらにSNSを利用した事業の広報活動にあっては、競業他社の信用を貶める虚偽の事実を発信すると、不正競争防止法に反することになります。また他社商品と比して自社商品が優れているなどの投稿は、比較広告として、①比較内容の客観的な実証、②実証データの正確かつ適正な引用、③公正な比較方法であることといった、3つの条件を満たしていなければ、消費者の適正な選択を妨げる景品表示法上の不当表示に該当します。他にも自社の商品や役務がテレビで紹介された場合でも、画像の著作権はメディア側にあるため、該当部分の録画を無断で投稿することは非常に危険な行為です。雑誌の場合ですと、掲載記事を投稿する際は出版元に確認をとるのが賢明な判断です。