現在、東京文化会館で、「東京・春・音楽祭」が開催されている。

オペラ公演は、『仮面舞踏会』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に引き続き、今回の『トスカ』が３回目。

いや〜、「東京・春・音楽祭」のオペラって、こんなにレベルが高いんだ　

演奏会形式だから、って今まで敬遠してたけど、ああ、なんて勿体無いことをしたんだろう😭

４月１３日（木）の『トスカ』

ブリン・ターフェル（スカルピア役）がぶっちぎりに素晴らしかった。

まさに、虎の咆哮

登場した時に、まずその巨体ぶりにびっくり。上も横もあるから、隣に立っている日本人歌手（スポレッタとか）に比べると、1.５（縦）✖️1.5（横）✖️1.5（幅）で３倍以上大きい感じ。

そして、ターフェルは顔も大きい。背が高くて小顔で、ていうんじゃなくて、顔も巨大。そして、口も大きい

もう、持っている楽器が普通の歌手と全然違う。巨大な肉体から息を出し、巨大な口から声を出す。

だから、声量がすごい。

でも、一方、すごく柔かい感じ。

強くて柔らかい。

例えて言えば、”虎”みたい。

虎の強さ、重量感。背骨のしなやかさ、そして、お腹の肉の柔らかさ。

以前、METのストリーミング配信で、ヴォータン役（『ワルキューレ』）のターフェルを観て素晴らしいと思ったけど、実際に聴いてみて、私の期待を全く裏切らない圧倒的な迫力だった。

１幕の最後。オーケストラと合唱を背に、「トスカを我がものにするぞ！！」と歌う（吠える）場面なんて、会場を薙ぎ倒さんばかりの迫力と存在感。世界にはこんな歌手もいるんだ！

トスカ役のクラッシミラ・ストヤノヴァも素晴らしかった。強い声のソプラノで、ターフェルと十分渡り合っていた。

「歌に生き、愛に生き」のアリアも聴かせてくれた。あまりに感情がこもっていたので、涙が出てきたほど。

双眼鏡で拝見すると、決して若いとは言えないご年齢。だから、映像で配信されることはないだろうけど、全く楽譜を見ずに自由自在に歌っているところから、トスカが血肉になっているのが分かる。

カヴァラドッシ役は、イタリア人のイヴァン・マグリ。

元々予定されていた、ピエロ・プレッティが健康上の理由で降板し、その代役で登場した。

ターフェルとストヤノヴァが全く台本を見ないで演じたのに対し、マグリは台本を見ながら演じた。

ターフェルとストヤノヴァは、スカルピアとトスカを自家薬籠中のものにしている感じ。当たり役なんだろうな。一方、マグリは代役ということもあるだろうけど、まだまだカヴァラドッシを自分のものにしていない感じ。

でもいいのだ。マグリさん、お疲れ様でした

今回の公演は、ブリン・ターフェルが聴けただけで、十分元が取れて、お釣りが出るほど満足できる公演でした。

残念だったのは、観客が少なかったこと。客席は半分くらいしか埋まっていなかった。なんと勿体無い。

コンサート形式は、演出がない分、観客に対するハードルが高い。でも、その分、実力のある歌手しか出演できないから、歌を堪能したい、という方にはうってつけの形式だと思う。

さあ！、来年の「東京・春・音楽祭」では、どんな歌手が来て、どんなオペラを歌ってくれるのか？　今からワクワクドキドキして待ってま～す

指揮：フレデリック・シャスラン

トスカ：クラッシミラ・ストヤノヴァ

カヴァラドッシ：イヴァン・マグリ

スカルピア：ブリン・ターフェル

アンジェロッティ：甲斐栄次郎

堂守：志村文彦

トスカ【2023.4.13】／東京・春・音楽祭／ブリン・ターフェル／虎の咆哮