あの衝撃の発表の前夜となった12日の土曜、松山市民会館に氷室京介さんのライブを見に行きました。

とりあえずレポは、敢えてそのライブを見た時の自分の視点で書かせて頂きます。



まだ楽器もバンドも始めるよりも前だった中学生の頃から氷室さんに憧れつづけ、当然のようにその時からいつかライブにも行きたいと思っていて、その念願が叶ったのがそれから10年後の“HIGHER THAN HEAVEN”ツアーの市民会館。

氷室さんにとっても10年ぶりの松山でのライブで、ギターのDAITAさんとキーボードの斉藤有太さんは初のサポート参加でドラムの永井利光さんは久々の復帰。

それ以降のツアーでも四国が入ってる時は松山か、松山が入っていない時は高松に必ず見に行っていた。

ドラムに真矢さんが参加した“SOUL STANDING BY”、今ではレギュラー定着したドラムのチャーリー・パクソンが初参加した“IN THE MOOD”の時は松山が入っていなかったから高松まで見に行き、キーボードの今井 隼さんが初参加した“ROCK'N ROLL SUCIDE”は久々の松山で見た。

そしてツアーとしてはギターのYT(YUKIHIDE TAKIYAMA)さん初参加で、単独ライブを含めたら復帰のギターの本田 毅さん、復帰ではあるけどここ何年かのライブでは参加率の高い方だったキーボードの大島俊一さんが参加で、自分にとっては4年ぶりで5回目となるヒムロックライブは松山で見る事ができた。

前述したとおり高松に見に行った事もあったけど、やはり自分の憧れの人のライブを自分の住んでる街で見られるというのは格別。






ツアートラック





たかしはヒムロックのリストバンドを装備した。

そうそう。僕が見たのは2階席やったんです(笑)。



開演を告げるブザーが鳴ると、待ちきれないファン達は氷室さんやサポートメンバーの名前をコールし、どこからともなく手拍子の鼓動が起こり、その鼓動はしだいに速くなっていった。

客電が落ちるとステージから客席に向けられたライトがコバルトーブルー、ライトブルー、レッドへと変わっていき、ステージ後方のセットの光がランダムに走るように横切り、メンバーと氷室さんが登場し、「BANG THE BEAT」で文字通り初っ端から弾けるようにスタート。

同じく現時点での最新のオリジナルアルバム「“B”ORDERLESS」からの選曲の「Doppelganger」と「PARACHUTE」は、後者のAメロのギターパートの振り分けがこれまで本田さんが弾いていたパートを今回はYTさんが弾いていた。

YTさん初参加のライブ(2013年のカウントダウンライブ)ではDAITAさんとのツインで、ほとんどの曲でこれまでDAITAさんが弾いていたパートをYTさんが、これまで本田さんが弾いていたパートをDAITAさんが弾くという風にDAITAさん視点で見るとギターパートの振り分けが大きく変わっていた。

本田さんが本来のポジションに復帰して、これまでのDAITAさんのパートをYTさんが弾くという風になると単純に考えていたけど、ツインギタリストの片翼が変わるだけで本来のポジションでもパートの振り分け方も変わる事もあるんだと思わされた。


終盤やアンコールの起爆剤として欠かせない「WILD AT NIGHT」が早くもここで登板。

その煽りを受けての「Girls Be Glamourous」はアウトロのYTさんと本田さんがステージの中央で互いに向き合ってツインリードのハモりを弾き、そのフレーズが弾き終わり2人が左右に離れると、その隙間を切り裂くように氷室さんのサポート歴20年越えの西山史晃さんがステージ後方から飛び出し、あの人にしては珍し客席にくピックを投げて存在感をアピール。

その西山さんはこれまで長らくステージ後方の上手側よりが定位置だったけど、今回はステージ後方の中央、つまりステージ前方中央の氷室さんの真後が定位置。

サポート歴も長いから、それが後方からバンド全体を司っているかのように見えた。

後ろでベーシストとしてバンドのボトムを支える事はもちろん、時折定位置から前へと飛び出すステージングを見せる事でも存在感をアピール。

これは最も多く氷室さんのステージでベースを弾き続け、バンドのボトムを支え続けた西山さんだからこそ出来た事、こなせたポジションだと思うし、ロックバンドのベーシストの鏡を見る事が出来たと思った。


今回は昨年リリースされたソロデビュー25周年ベストアルバム「GREATEST ANTHOROGY」のリリースを受けてのツアーで、それに入ってる曲はもちろん、そうでない曲からも懐かしい曲やレアな曲もセットリストにふんだんに組み込まれていた。

中盤は特にそういった曲が演奏され、2ndアルバム「NEO FASCIO」からタイトでどこかデジタルチックなビート感と休符を活かしたリズムセクションで引っ張っていく「COOL」、開放感と爽快感のある演奏とメロディにメッセージ色のある歌詞を乗せた「CALLING」が演奏された。

MCを挟んでのバラードタイムはさらにレア度が増した曲が登場し、ソロになって初めてのツアーで演奏されたライブ音源がシングルのカップリングとして収録された吉田拓郎さんのカバー「たどりついたらいつも雨ふり」、もう20年も前の曲なのにそれから10年以上経ってからライブで初めて演奏されそれ以降もあまりライブで演奏されていない「TRUE BELIVER」でクールダウンさせながらもオーディエンスを静かに熱狂させていた。

特に後者は僕にとって隠れた名曲でいつか自分もこんな曲が作れたらなと思ってた曲でもあり、もしこの日のライブで何か1曲だけリクエストしたら必ず演奏されるなら間違いなくこの曲をリクエストしていた。

この曲が演奏されている時の空気感には精神的にも視覚的にも聴覚的にも引き込まれていったし、その感覚がこの上もなく心地良かった。


バラードタイムも後半は比較的新し目だったり定番人気所が演奏された。

「IF YOU WANT」は「TRUE BELIEVER」に続いての演奏だったのが絶妙で、「TRUE BELIEVER」で主人公が少年だったのが、「IF YOU WANT」ではその少年が大人になってからの心情という風に解釈して聞いてみるとより感情移入して聞けた。

辺りを見ると、興奮冷めやらぬ故に自分も含め立ったまま聞いているオーディエンスもいれば、クールダウンして席に座り歌をより感じながら聞き入ってるオーディエンスもいて、そういったオーディエンスそれぞれの聞き方を問わずタイトル通り君が望むなら(IF YOU WANT)と氷室さんは自分で作ったメロディに自分で綴った言葉を乗せた自分の歌を届けていた。

シングル曲のバラードの中では比較的知名度も高く氷室さん本人も大好きと言っていた「魂を抱いてくれ」を歌う前のMCでは、当時3人目の子供を身ごもっていた奥さんが3日間スタジオに歌入れの立ち合ったエピソードも話してくれた。

この曲のライブバージョンでの見どころはアウトロのギターソロだが、これまでDAITAさんやスティーヴはクライマックスの所で速弾きやスイープなどの超絶テクニックの本領を発揮していたのに対し、YTさんはあれだけのテクニックを持っていながら敢えてそういうプレイをしなかったのが印象に残った。


バラードタイムも終わりロック感溢れたり氷室さんらしいビートの効いていたりする曲で展開する後半の始まりは、1stアルバム「FLOWERS for ALGERNON」の中でも特に思い入れの強いという「STRANGER」。

氷室さんもMCで言ってたけど、完成度という意味では4枚目の「Memories of Blue」だけど、個人的な思い入れは「FLOWERS for ALGERNON」が1番との事。

またこの曲のスタジオレコーディング版では聞けないライブバージョンならではの見どころは、アウトロの本田さんのギターソロ。

バンドのメインギタリストのYTさんやその前任ギタリストのDAITAさんは比較的ギターソロは原曲に忠実な音やフレーズで弾く事が多いけど(さらに前任のスティーヴ・スティーヴンスは自分の感覚や閃きで弾く方やったけど)、サイドギタリスト/セカンドギタリストの本田さんは自分の音やフレーズでソロを弾く方で、この曲のアウトロのソロも氷室さんサポートギタリストとしての本田さんの名フレーズと言える。


1stアルバムからの曲に続いてはリリース間近のニューシングルで本人出演の車のCMのタイアップにもなっている「ONE LIFE」。

定番所、レア所問わず懐かしい曲を中心に展開される今回のツアーの選曲の中で、CM中での氷室さんのセリフにも通じる現在進行形がここで披露された。

よりハードに攻める「IN THE NUDE」、「WARRIORS」ではYTさんの歴代ヒムロックバンドのギタリストの中でも最も豪快で骨太なギタリストっぷりが音にもステージにも出ていた。

感覚と閃きのスティーヴ、ストイックでスマートなDAITAさん、そして本場LA仕込みの骨太さと豪快さのYTさんと言う風に、アメリカ移住後のヒムロックバンドの花形とも言える下手ギタリストのポジションは受け継がれてきた。

どの人もテクニカルなハードロックギタリストだが、その中でもYTさんはある種最もロックンロールしてる感じがしてそれが「WARRIORS」での音とプレイとステージングにも特に出ていた。

ステージ面でも創作面でも今の氷室さんのやろうとしてる事を具現化する上での、最重要キーマンにもなっている。


氷室さんの王道とも言える8ビートとは違う魅力を感じさせる「WEEKEND SHUFFLE」はいまだにどのベストアルバムにも入っていないけど、ライブでは不可欠なナンバー。

ヘヴィなリズムセクションを基調としながら、サビでのたゆたうようでもあり広がりのあるメロディ感は見事。

この日も氷室さんはペットボトルを客席に投げていたけど、初期からの人気曲でライブでも盛り上がる「LOVE&GAME」ではよりテンションが上がっていたのか、ペットボトルが2階席に届く寸前くらいまで飛んでいた。

「DRIVE」の間奏では氷室さんによるサポートメンバーの紹介とソロ回しがあり、その最後に紹介されたチャーリーのソロ回しは基調となるリズムセクションを意図的に逸脱したドラミングで会場の熱気を上げ、歌に戻ってもその熱気ぶりがドラムに出ているのが聞いていても明らかだった。

本編ラストのスケール感と疾走感のあるビートで圧巻する「WILD ROMANCE」でも引き続きチャーリーのドラムはキレまくっていた。

曲のテンポ感やリズムの基盤はしっかりキープした上で、Aメロから原曲にはないフレーズを盛り込んでいた。

今のYTさんもそうであるように、レコーディングにもライブにも参加しているチャーリーもまた、氷室さんのステージ面でも創作面でも欠かせない存在となっている。


アンコール1曲目は「NORTH OF EDEN」。

“動”のエネルギーを感じさせるロック調の曲ではあるけど、他のそういった曲のようにオーディエンスは拳を上げたりしていなかった。

しかしそれは盛り上がっていなかったからではなく、盛り上がるのを忘れるくらいに楽曲そのものに魅了され引き込まれていたからだろう。

勢いで盛り上がるだけが“動”のロックではない事を証明していた楽曲でありワンシーンでもあった。

ベストアルバムに新曲として収録された「The Sun Also Rises」は正真正銘の“静”のバラード。

氷室さんはビートの効いたロックだけでなく、バラードでも魅せる事のできるメロディメーカーであり、この日のライブはバラードコーナーだけでなく、アンコールで演奏されたこの曲でも存分に魅了してくれた。

本田さんのカッティングから始まった「KISS ME」は、僕が氷室さんのファンになった時にリアルタイムだった楽曲。

ライブで聞くのは10年前に高松でアンコールで聞いて以来だったけど、要約松山でも聞けた。


ダブルアンコールは初期の王道を行くビートロック3連発。

「JEALOUSYを眠らせて」はイントロとアウトロでリフっぽいギターのテーマメロディはあるけどそれ以外は各パートソロらしい物は無い物の、各パートがやってる事が派手さは無いけど何気にかっこ良くて、アンサンブルとしてまとまっているのが見事(個人的にはベースとキーボードが特に)。

メロディとアンサンブルの良さが形になっているかっこ良いロックの良いお手本と言っても過言ではない。

「SUMMER GAME」は盛り上がる曲だが、熱気以上に清涼感を感じさせるシンセ音の演出力が心地良い。

それがあるだけで夏の曲としての雰囲気の演出に大きく貢献している(原曲のアレンジとプロデュースは佐久間正英さん)。

大ラスはソロアーティストとしてキャリアのスタートとなった「ANGEL」。

ここ何年かのライブでは演奏されたかった事もあったけど、やはりこれは欠かせない。

歌詞もある時期から敢えて変えて歌われていた箇所も、初心に戻る意味合いなのか原曲通りに歌われたり、逆にキャリアの上での経験や成長で変えたバージョンでも歌われたりでミックスされていた。

変えた箇所を盛り込んで15周年ベストアルバム「Case of HIMURO」に収録されたのは「ANGEL 2003」とタイトリングされたが、この日歌われたのはそうタイトリングはされなかったけど「ANGEL 2014」と言っても良かったかもしれない。



このライブから一夜明けた周南でのライブのアンコールで、氷室さんがあの衝撃の発表をしたという。

僕はそのライブが終わって数時間後ぐらいにツイッターで知った。

自分のフォローリストには音楽友達はもちろん、自分の好きなミュージシャンにも氷室さんが好きな人達が多いから何かの間違いかと思った。

その前日にライブを見に行ったばかりで、しかもバンド全体のパフォーマンスもオーラも完成度もクオリティも過去最強だとさえ思ったのに。


本人と傍から見る人とでは感じ方が違うと言う事は多々あるけど、それでも氷室さん本人はそう思いそう決断した。

本当に驚かずにはいられない。

でもその一方で、ここ数年の氷室さんの楽曲はある種究極に辿り着いたようにさえ感じられたし、氷室さん本人もアメリカに移住してからの自分の事を、演者としてよりもクリエイターとしての意識の方が大きくなったといった発言は過去にもしていたから、そういった意味では納得してる自分もいる。


氷室さんのファンになってから初めてライブを見に行くまで10年かかったけど、それまではたとえライブに見に行けなくても、氷室さんがライブをするという事にファンとして楽しみもあったし、そのレポを雑誌などで見てどんな曲が演奏されたのかする事も楽しみだった。

BOOWY時代も好きやけど、ソロになってからの氷室さんの方が僕は好きではあったものの、ソロのライブ映像を見る機会はその頃は少なかったけど、BOOWYのライブ映像は見てたし、持っていたBOOWYのポスターや下敷きにもライブでの氷室さんが写っていた。

BOOWY時代もソロになってからも、ライブで歌うロックボーカリスト氷室京介の姿が自分の中では印象が強かったから、いくら今後制作活動は続けるとはいえ、ライブ活動はしない氷室さんというのはなかなか想像できないし、自分が氷室さんのライブを見に行く事がもう無くなるというのも想像できない。


今日のブログの最後をどうやってまとめていいか分からないけど、ただ言えるのは、自分の中で氷室京介という存在はやはりとても大きい物だという事です。