
尾崎 豊「回帰線」
今日で尾崎 豊さんが26才の若さでこの世を去ってから20年目になる。
俺が尾崎さんを知ったのは亡くなってから半年くらい経った頃やったと思うが(当時の俺は中学2年)、亡くなってからもよくテレビのワイドショーとかで「I LOVE YOU」や「15の夜」をライブで歌っている姿を見る事が何度となくあったし、中3の受験シーズンに「OH MY LITTLE GIRL」がドラマのタイアップでシングルカットされてた。
俺が高校に入学したのがちょうど3回忌の頃で、その頃に自分でも尾崎さんのCDを買いたいと思い買ったのが、テレビで少しだけ流れていて良いなと思った「DRIVING ALL NIGHT」のシングルを買った。
そして先輩にお勧めのアルバムが何かを聞いたら、「十七歳の地図」、「回帰線」、「誕生」が特に良いと教えてくれ、デビューアルバムであり代表曲も多く入っている「十七歳の地図」を買いに行った。
それでほんの少しの間、自分の中で限られた曲だけであるもの尾崎ブームになった。
ちょうど俺らくらい年代の人らが後追い第1世代になると思うが、それから数か月で「十七歳の地図」に入ってる全曲とその他の有名な曲(「卒業」、「シェリー」、「太陽の破片」など)を何曲かを知ってる程度のまま、自分の中の尾崎ブームは終わり、カラオケとかでもたまに歌うくらいやった。
それから12年後のGWのある日、いつの間にか俺は彼より長く生きているという事実を自覚しないでいた時(当時27才)、コンビニで尾崎 豊物語という漫画が置いてあるのが目に入り「そう言えば俺も高校1年の今くらいの時期にほんのちょっとの間だけハマったっけなぁ・・・」と思いながら手に取り立ち読みした(後日ちゃんと買いました)。
彼の事を書いた漫画はその時に立ち読みしたのとは別の物を既に高校生の時に買ってたけど、それとは彼の事を書いた漫画を読んでいて何だかまた改めて聞きたくなったし、まだ聞いた事の無い曲やアルバムも聞いてみたくなった。
高校1年の時の俺はまだ音楽をやってなかったけど、この時の俺は音楽をやっていて自分で曲を作るようにもなっていたから、何かいい刺激になるのではと漠然と思っていた。
その2日後に、高校生の時に先輩に勧めてもらったアルバムの一つで、結局それから10年経っても買わずじまいだった彼のブレイクしたきっかけとなる2ndアルバム「回帰線」をブックオフで買った。
アルバムの1曲目を飾る「Scrambling Rock'n'Roll」を聞いた瞬間ぶっ飛んだ。
タイトルに相応しいロック然としたサウンドやビート感、テンポ感はもちろん、彼の楽曲の最大のセールスポイントでもある歌詞にロックの衝撃と衝動をモロに感じた。
彼のアルバムでもとりわけ「十七歳の地図」とこの「回帰線」は彼にとっては不本意ではあった“十代の代弁者”や“反逆のカリスマ”というパブリックイメージを図らずも確立した作品ではあったが、20代後半、それもいつの間にか彼よりも長く生きていた俺が聞いても純粋に感動した。
この事でも、彼の楽曲が単に十代の共感云々の狭い次元で片づけられる物で無い事が証明された。
何かいい刺激になる所ではなかった。
それから彼に関するCDやDVD、本を見つけては買って行ったり(オリジナルアルバム全6枚はもちろん制覇)、また知り合いが譲ってくれ、ますます尾崎 豊に傾倒していった。
オリジナル曲があるのに、あえて彼の曲ばかりをライブで歌ったりもした(それもマニアックな曲ばかりを)。
いつからかは忘れたけど、彼の事は尊敬はしつつも、部屋でその楽曲を夢中になって聞くという事が無くなっていった。
そしてついこの間、久しぶりに「回帰線」を聞いてみた。
5年前にヘヴィロテで聞いてた時は自分なりに言葉で説明できる素晴らしさを感じていたが、今度は何だか分からないけど言葉では説明できない感動や衝撃を感じた。
何度も聞いたアルバムで知ってる曲ばかりなのに、まるで聞いた事の無いアルバムを初めて聞いたかのようでもあった。
良い意味で正体不明の感覚としか言えない・・・。
その衝撃や感動の事は説明できないが(どんな一流の音楽ライターでも俺にとってのこの感覚は絶対言葉で表現し切れないと思う)、あえてこの「回帰線」というアルバムその物を俺なりに言葉で説明するなら、事実や感想などをこう説明する。
・尾崎 豊の2ndアルバムであり、アルバムチャート初登場1位を飾った
・彼のオリジナルアルバムの中で、最も彼の純粋な勢いやポジティブさが出ている
・孤独感や切実さを綴った歌詞もあるけど、後々の作品群から感じられるような迷走感や悲壮感、混沌ぶりが感じられない
・このアルバムと先行シングルの「卒業」の成功が彼をスターダムにのし上げ、その一方で前述した不本意なパブリックイメージと自分の目指す自分のギャップに悩み自分を見失う、両刃の剣にもなった
今ぱっと言葉に出来る範囲でこれくらいの物。
でも大事なのは言葉にできようができまいが、聞き手が何をどう感じ、どれだけ感動したり衝撃を受けたりするか・・・。
今更になってそれに気が付いたけど、今になってこうして気付いただけでもよりその感動や衝撃を大きく感じられる・・・