この間も書いたけど、今日は尾崎 豊さんの誕生日の前日。

もし生きていたら、明日で44才になる。


何故、誕生日の明日ではなく前日の今日に彼の事を書くのか・・・。

それは彼の20才の誕生日の前日の1985年11月28日、つまり彼の10代最後の日にこのアルバムがリリースされたから。



TACASHIの青い夜空の海の追憶-throughthebrokendoor
尾崎 豊「壊れた扉から」



OZAKIのオリジナルアルバムは全部で6枚あり、特に人気があるのが「十七歳の地図」と「回帰線」であるが、俺はこの3rdアルバム「壊れた扉から」が一番好き。


自分のソロのライブでOZAKIの曲もレパートリーに入れていたけど、このアルバムに入ってる曲で唯一ライブでやらなかった曲は「ドーナツショップ」だけ。

改めて思うと、比較的マニアックな曲をレパートリーに入れてたんやなぁ。

「彼」とか「米軍キャンプ」とか「誰かのクラクション」をやる人は、コアなファンでもあまりお目にかかれないかも(笑)。

それぐらい大好きなアルバムです。


俺がオベーションのギターを使ってるのは音や見た目が好きというのもあるけど、OZAKIの影響もあります。


10代の時にリリースされた初期の3枚が、いわゆる“十代の三部作アルバム”と言われているが、このアルバムは他の2枚と比べて支持が幾分低く、一般層にもよく知られている定番曲が無い(ある程度以上OZAKIが好きな人には「Forget-me-not」、「Driving All Night」、「Freeze Moon」は人気曲)。

他の2枚が10曲入りなのに対し、このアルバムは1曲少ない9曲入り。

「OZAKIらしくないアルバム」というファンもいる。


ヒットシングル「卒業」、2ndアルバム「回帰線」のブレイクで社会現象となり、校内暴力や家庭内暴力が横行していた1985年当時、彼の書いた歌詞が学校、家庭、社会に対する反発心を抱いた多くの若者(特に10代)の共感を呼んだ。

そして、“十代の代弁者”、“反逆のカリスマ”と謳われ、彼の死後もそのイメージが付きまとっているが、それは彼にとって不本意な物であった。

「卒業」を聞いて学校のガラスを割る中高生がいたり、校内放送で彼の曲を書ける事だけでなく彼の曲を聞く事を禁止する学校が出てきたり、挙句の果てには彼が当時本を出版するにあたって学校の先生が出版社に「何で学校のガラスを割る歌を歌うような奴の本を出すんだ」とクレームがあったりもした。


自分の目指す尾崎 豊像と、周りが抱いたり求めたりする尾崎 豊像のギャップに彼は悩み苦しみ、自分を見失い始めた。

このアルバムの制作にあたっても、10代から20代へ、少年から大人へとなろうとする時期でもあったから、これから自分はアーティストとして何を歌っていくべきか、何を伝えていくべきかを考えさせられていたし、自分の歌や想いがどれだけの人達にちゃんと伝わり理解されているかの不安や迷いもあった。

このアルバムと、次回作「街路樹」が9曲入りというフルアルバムとしては中途半端な曲数になったのは、そういった不安や悩みゆえに、曲が書けなくなったからとも言われている(「街路樹」の場合は別の理由もあったのだが)。

詞の内容にしても、「十七歳の地図」や「回帰線」の頃のようないわゆる“十代の代弁者”としてのイメージを図らずも抱かせるような詞よりも、内省的な歌詞の方が多くなっていった。

10代の共感を呼びそうな歌詞は「Freeze Moon」くらいかもしれない。


俺も高校生の頃(この時、彼がこの世を去って既に2年経っていた)、“十代の代弁者”としてのOZAKIを求め、その楽曲を聞き、背中を押された。

27才の時、何故だか急に「回帰線」(高校の時先輩にこのアルバムが良いと勧められたけど、結局聞かずじまいやった)を聞きたくなり、ブックオフで買った。

それから10年以上ぶりにOZAKIにはまりだし、彼のCDやDVD、本を買い漁るようになった。

それでも彼のオリジナルアルバムの中では、この「壊れた扉から」が一番好き。

自分の年齢やプライベートでの出来事もあって、このアルバムから次回作「街路樹」にかけての頃の内省的で陰のある詞世界の方に共感した。

おそらく彼のアルバムで一番聞きこんだはず。

特に「路上のルール」の詞は俺そのものとリンクしている。


このアルバムがリリースされた頃、OZAKIは“LAST TEENAGE APPEARANCE”ツアーの最中やった。

タイトル通り、彼の10代最後のツアーでもあり、20代最初のツアーでもあった。

このツアーの代々木オリンピックプールでの公演は、ライブアルバムにもなっている。


10代の時のライブを追ったドキュメントDVD「OZAKI TEENAGE FILM 625 DAYS」にも、このライブのダイジェスト映像とオフショットが収録されている。

リハーサルシーンでは、「愛の消えた街」から「路上のルール」へのつなぎで気になった所をサポートメンバーにこうして欲しいとレクチャーしたり、「ダンスホール」を歌ってる時にステージ袖にスタッフが付いてない事に苛立った表情で「舞台の横に誰かついてろよ!」と叱責したり、「ハイスクールRock'n Roll」でのステージ上のサポートメンバーとの絡みや動きも入念にチェックしていた。

それはまさに真剣そのもので、それがあの圧倒的な熱量のライブパフォーマンスを生み出している。

フロントマンはライブという空間における司令塔でもあるが、彼もその例外ではない。


この“LAST TEENAGE APPEARANCE”ツアーのファイナル公演、1986年1月1日の福岡国際センターでのライブで無期限活動休止を発表。

そして単身渡米した。

カリスマにされ、“自分の目指したい自分”と“周りの求める彼”のギャップに悩み自分を見失い、心が孤独になった悲しい旅立ちでもあった・・・。


こう書くことも彼にとって不本意な事かも知れないが、尾崎 豊というアーティストは、俺に物事の本質を見る事や伝える事が大切でもあり難しくもあるという事を教えてくれた気がする。


前述した“LAST TEENAGE APPEARANCE”ツアーの代々木オリンピックプールでのライブの動画のリンクを載せます。

数あるOZAKIのライブでも、俺はこのライブが一番好きで、全曲フルコーラス完全収録で是非DVD化して欲しいと思っている。


Driving All Night

http://www.youtube.com/watch?v=pu0zbP9TZdU&feature=related


街の風景

http://www.youtube.com/watch?v=W-M0kT1EO9k&feature=related


米軍キャンプ

http://www.youtube.com/watch?v=a67gV2kBH9w&feature=related


坂の下に見えたあの街に

http://www.youtube.com/watch?v=fHHLOWijdzw&feature=related


Scrap Alley

http://www.youtube.com/watch?v=56en5iA9gnY&feature=related


ハイスクールRock'n'Roll

http://www.youtube.com/watch?v=l6q9l2Bpd2Q&feature=related


Scrambling Rock'n'Roll

http://www.youtube.com/watch?v=9elH0_fH5Bk&feature=related


十七歳の地図

http://www.youtube.com/watch?v=fAcI3VJ3fq0&feature=related


路上のルール

http://www.youtube.com/watch?v=QcwNbb0eVho&feature=related


15の夜

http://www.youtube.com/watch?v=AiD78w0AqeQ


Freeze Moon

http://www.youtube.com/watch?v=4uvJmjZxTUU&feature=related


I LOVE YOU

http://www.youtube.com/watch?v=tWzU1sxANcc&feature=related





洗いざらいを捨てちまって 何もかもはじめから

やり直すつもりだったと 街では夢が

もう どれくらい流れただろう 今じゃ本当の自分

捜すたび 調和の中で ほら こんがらがってる


互い見すかした笑いの中で 言訳のつくものだけを

すり替える夜 瞬きの中に 何もかも消えちまう


街の明りの下では 誰もが目を閉じ 闇さまよってる

あくせく流す汗と 音楽だけは 止むことがなかった

今夜もともる街の明りに 俺は自分のため息に

微笑み おまえの笑顔を 捜している


傷をなめあう ハイエナの道の脇で 転がって

いったい俺は 何を主張し かかげるのか

もう自分では 愚かさにすら気付き 諭す事もなく

欲に意地はりあうことから 降りられない


疲れにむくんだ 顔で笑ってみせる おまえ抱きしめるには

互い失ってしまうものの方が 多いみたいだけれど


街の明りの下では 誰もが目を閉じ 闇さまよってる

あくせく流す汗と 音楽だけは 止むことがなかった

今夜もともる街の明りに 俺は自分のため息に

微笑み おまえの笑顔を 捜している


河のほとりに とり残された俺は 街の明りを

見つめてた 思い出が俺の心を 縛るんだ

月にくるまり 闇に吠え 償いが俺を

とらえて縛る そいつに向かって歌った


俺がはいつくばるのを待ってる 全ての勝敗のために

星はやさしく 風に吹かれて 俺は少しだけ笑った


街の明りの下では 誰もが目を閉じ 闇さまよってる

あくせく流す汗と 音楽だけは 止むことがなかった

今夜もともる街の明りに 俺は自分のため息に

微笑み おまえの笑顔を 捜している


おまえの笑顔を 捜している



尾崎 豊「路上のルール」