日中はカーテンをあけるように、看護師さんに言われていて、寝るとき以外はなるべくカーテンをあけるようにしていた。でも、カーテンが閉まったままの病人さんがいて。夫さんが、夕方になると、お見舞いに来た。子供はいないらしく、仲睦ましい様子。

 彼女は、人工肛門をつけたらしく、看護師さんに、その管理などを教えてもらっている様だった。弱気になることもあるようで、看護師さんに、きつく叱責されている声も聞こえて来た。若くして、そんな状態になったら、前向きになれるわけがない、などと思っていたが、彼女は、家に帰ってからの管理の仕方など、一生懸命覚えようとしていた。

 夫さんがお見舞いに来た時。彼女は一生懸命だったけど、やっぱり弱音を吐けるのも、辛さを思いっきりぶつけられるのも、夫しかいなかったんだと思う。カーテン越しに、ものすごいケンカになって。私は、息を殺してじっとしてた。夫は、激怒して、病室を出て行った。

 病室の私を含む病人みんなが祈るような思いだったと思う。どうか、もどってきて・・。1時間ほどたったころ、夫が病室に戻ってきた。私は涙がでた。病室の他の患者さんも、同じような思いだったと思う。

 病気になると、家族が助け合う、なんて簡単にいえない。みんないっぱいいっぱいになるから。看病だって大変だし、病気が治ったと言っても、もとの体に戻るわけでもない。ずっと続く長い長い辛い生活・・。