takenokogohan

祖母が亡くなってから
もうしばらくが経つ。
その時もまた
葬儀に参列することが出来なかった。
最後の見送りをしていないから
いまいち実感がない。
また母の実家に寄れば、
よく来たなあと言って
出迎えてくれるような錯覚がする。
最後に会ったのはいつだっただろう。
数年前に一時帰国した時には、
遠くの病院に入院していて
会う事は無かった。
先月、久しぶりに日本に帰った。
地元に滞在中は
母が朝食を用意してくれた。
その中で特別だったのが
たけのこご飯。
今回の一時帰国では
母の実家にも訪問した。
出迎えてくれたのは
叔父夫婦と祖父。
祖父は元気だった。
90を超えてなお、車を運転している。
最近ようやく
高齢者ステッカーを
車に貼付ける事にしたという。
カッコ悪いのを嫌がっていたらしいが
今は警察も厳しくなってきているから
という家族の説得に
しぶしぶ折れた形だそうだ。
「おれは、ばーさんの写真に時々話しかけているんだ」
自分はあと何年こっちにいれるのかなって。
私が「じーちゃん優しいね」と言うと
叔父夫婦は、いやいや~...と微妙に笑った。
祖父は趣味が多く外に出るのが好きだったから
体の悪い祖母は留守番で寂しい思いもしていたらしい。
ちなみに祖父は、
祖母が亡くなった後も
老人クラブの活動をエンジョイし
その元気っぷりを讃えられ、
市から表彰状を授与されていた。
地元の新聞にも小さく載ったらしい。
そんな話を聞いてから
私達は家路についた。
母が作ってくれた
たけのこご飯。
たけのこは、
生前、祖母が山から採って来て
一升瓶に詰めた物だと言う。
祖母が亡くなった後で
実家の方で一升瓶を発見し
母に手渡したそうだ。
私の好きな薄味。
ダシのきいたみそ汁。
体にしみ込むような味がした。
祖母が瓶詰めにしたのは、
アスパラくらいの太さの
笹たけのこ。
jazz lounge
昨日は叔母の誕生日のお祝い。
指定された場所はJazz Lounge。
携帯の地図を頼りに向かった場所は
お世辞にも綺麗とは言えない町。
道には
ファストフードのゴミがあちこちに落ちていて
寝巻きのままと思われるジャージを着た
柄の悪い人がたむろしている。
隣にはストリップクラブ・・
正直なんで
こんな場所に呼び出すのか
謎だった。
そのJazz Loungeは
大きな建物の影に隠れて
ひっそりと建っている。
ドアを開けて中に入ると
入場料が5ドル。
中には小さなステージ。
古いタイプの照明器具。
それがさらに
場末な雰囲気に
拍車を掛けている。
テーブルにつくと
ウェイトレスがメニューを持ってくる。
私はフライトポテトを頼む。
比較的安全な料理を注文したつもり。
だけど不味い。
なんで揚げたてのフライドポテトが不味いのか。
気分を取り直し
叔母に誕生日プレゼントを渡す。
喜んでくれてよかった。
演奏が始まる。
あれ、あの演奏者、見たことがある。
演奏者の内の一人が
いつも州都の大きなジャズバンドで
演奏しているピアニストだった。
彼は愛嬌があるムードメーカーで
演奏も上手い人だったから
よく記憶に残っている
演奏も良かった。
小さな店内に響き渡る音楽。
ステージの近くのテーブルだったから
振動が伝わってくる。
叔母が言った。
多分、このへんじゃここが
一番手ごろな値段で
いい音楽を聴ける場所だと思うよ、と。


