28年考え続け、製作に7年間もかかったというだけあって、非の打ち所もないくらい緻密に練られた脚本に衝撃を受けた。162分もあるのに全く無駄なシーンがないし、CGも最小限、BGMは殆ど使わずに自然の音(虫、鳥、波、風)を中心に編集されている近年のハリウッド映画らしからぬ作品。

 

印象に残ったフェレイラのセリフ

「この国は沼地だ。どんな苗も沼地に植えられれば、根が腐り始める。葉が黄ばみ枯れていく。我々はこの沼地にキリスト教という苗を植えてしまった。」

お天道様信仰にも表れているように日本人は導く宣教師もいなくなってしまい、どんどん違う方向へと教えが歪んでいったように思う。

劇中でも、じい様が神的になっていたり、労働も年貢もないパライソ(天国)への憧れで信仰している村人に主人公である宣教師ロドリゴが戸惑いを隠せないシーンもあった。

 

そして、さらに印象に残った井上様(イッセー尾形)のセリフの数々。

「ウェルカム。」

かつては自身も切支丹であったから、信者の気持ちが分かるのだろう。殉教者が増えるたびに信仰心や結集力は強まる一方だが、宣教師が転べば信仰も揺らぐと考え、殺さずに丁重に生かしながら精神的な苦痛を与え続ける。

悪役らしからぬ巧みに計算されたセリフには知性や許容心さえ感じられ、単に『残虐な奉行』というだけではないということが伝わってくる。

 

 

鉄砲と奴隷の貿易で各地の大名に布教を続けてきた当初のイエズス会には、以前から違和感を感じていたが、巨匠マーティン・スコセッシ監督が描いた本作品からは、原作者・遠藤周作氏に対するリスペクトの思いが伝わってくる。心の距離というべきか。

確か、『GODZIILA(2014年)』もそうだったなぁ。

 

 

 

 

でわ!