原材料をよその地から仕入れ、独創的な加工や調理を経て、いつしかその土地を代表するような特産品や郷土料理が生まれることがある。博多の辛子明太子や沖縄の泡盛が代表的な事例だろう。
新鮮な海産物を入手しにくい立地条件の京都では、古くから干し魚が海の幸の主流であった。
北前船から運ばれてくる『身欠きにしん』もそのひとつで、ナスと一緒に炊いて『おばんざい』のひと皿として、古くから家庭の食卓に並んでいたという。そこから生まれたのが『にしんそば』
考案したのは、四条大橋の袂、南座の隣に店を構える松葉の2代目ご主人で、1882(明治15)年の事らしい。
今ではすっかり定着していて、京都駅内の蕎麦屋でも並ぶほどポピュラーだ。

ご当地の麺類に目がない僕も、京都に足を運ぶたびに一度は食するようにしている。
行くたびに違うお店を探す楽しみも生まれた。

この日も特にアテはなかったが、錦市場をぶらぶらと散策していて、ちょうど良さげな雰囲気の店を見つけたので注文した。

にしんそば 
具は、甘露に炊かれたにしんと刻んだネギ、いたってシンプル。
にしんは箸で割るとほろほろとほぐれ、麺で絡むようにしてすする。
良く「九州の醤油は甘い」と云われるが、にしんのせいなのか、つゆもかなり甘めなので、九州人の舌に合う気がするのだ。

この上品なにしんそばも、有名店だと結構なお値段。
かく谷さんで950円、やぐ羅さんで1,150円。
松葉さんだと1,300円。
ミヤコどすな~(笑)
確かに美味しいのだが、この辺りの感覚が九州人からすると、ちょっと反りが合わない気がしていて、それでいろんなお店を試しているのであった。別に歌舞伎役者が食べるにしんそばでなくていい、自分にとってイイ感じのお店がないのだろうか?

この日、見つけたのは、そんなイイ感じのお店。
京都の何処にでもありそうな雰囲気の小さな佇まいである。

 まるき食堂 
一杯800円だった。まぁ、妥当というか納得できるお値段だと思うし、充分旨かった。
勿論、チェーン店のようなとこに行けば500円位で食べることも可能だが、はっきり言って美味しくない。
身欠きにしんの状態から丹念に手づくりで炊いている味と、工場で合成保存料使用して大量につくられた加工品では全くの別物である。
なので、この1,000円以下という微妙な値ごろ感で、手づくりのにしんそばに出会った時は『当たり』なのである。

まるき食堂さん、大当たりです(笑)





でわ!