山水書房 -2ページ目

守ってくれない懐刀 5本目

「落ち着きましたか?」

朱美は部泣き腫らした顔で体育座りをしている。しかも部屋の隅でぐずりながら。気まずい事、この上ない。

「・・・。」

「誰しも調子が悪いときはあります。例え神様でも!!」

「そんな事ない・・・。私はダメな神なんだ・・・。」

「普通は人の前に顕現できないですよ!自信を持って下さい!!」

「励ましたって何も出ないぞ、愚か者め。」

チラッと顔を向けたかと思ったら、すぐに顔を膝に埋める。いくら励ましてもネガティブ発言で塞ぎ込む。

な  ん  だ  こ  の  女  神  。

勝手に現れて住むと言い出しかと思えば、部屋が少ない、気に入らないとの理由で元の姿に戻ろうとする。あまつさえ、神通力が足らず元の姿に戻れずいじける。

こ  ど  も  か  !  !

気分屋と言うか、我が儘というか・・・。朱美の扱い方を分からないまま、言葉を掛け続ける。

「朱美さーーん。」

「・・・・。」

「神朱美さーん。」

「・・・・・・・。」

「やーい、やーい。ダメ神!」

ガッ!

視界が急にに塞がれ、額に激痛が走る。

「黙れ、下等生物・・・・。」

「すみません!すみません!痛い、痛い!」

女性とは思えない怪力にバタバタ足をばたつかせる。アイアンクローを外そうにも、掴んだ手はびくともしない。腐っても神ですか。

「無理!無理!無理!ミシミシ言ってる!!骨が砕ける~~~~!?」

「ふん・・・・。」

懲らしめ飽きたのか、手をようやく離してくれた。捕まれていた額の痛みは早々には引いてくれず、頭痛に似た痛みが残る。

朱美は再び元の体勢に戻り、膝に顔を埋める。

ピエロを演じて、この局面を打開できるかと思ったが作戦失敗に終わった。

体育座りのまま動かない朱美、重い空気が双肩にのしかかる。あれこれと思案していた時、ある疑問を抱いた。

「あの・・・。」

「・・・・・。」

「こんな時に聞くのもあれなんですが・・・。」

「・・・なんだ。」

不機嫌極まりない声と潤んだ瞳で睨みつけられる。気圧されそうになるが、喉に突っかかる言葉を吐き出した。

「なんで私の前に現れたのですか!?」

やばっ、ちょっと怒鳴りつけるように言ってしまった。朱美は少しビクッと体を一瞬震わせたが、顔を上げてくれた。

「お前に会うために顕現した覚えはない。」

吐き捨てるように言われ、心に傷を負う。何もそんな言い方をしなくても・・・。

「ただ。」

えっ。

「ただ、私は何かを探すために顕現した事は朧げながら覚えている。」

朱美は歯切れ悪くも顕現した訳を話してくれた。同時に遠い目をして、窓の外を眺めていた。