私は子供の頃から格闘技が好きで小学校の卒業文集には「将来の夢 オリンピック柔道で金メダル」
と書いていました。
当時はプロレスも大ブームで猪木の全盛期です。異種格闘技戦など、TVにかじりつきで観ていました。
もちろん、子供ですから漫画も大好きで、特にスポ根もの、梶原一騎作品のとりこでした。
その頃は、マンガ本は高いし、いつも近所の貸し本屋さんで借りてきて古い漫画も読み漁っていました。
梶原作品と言うと、巨人の星・タイガーマスク・空手バカ一代など、テレビ化されても大人気でした。
なかでも何度も読み返し、感動するのは不朽の名作「あしたのジョー」です。
子供の頃から格闘技好きな私が、実際に会場で観戦した格闘技は極真空手大会とボクシングです。
ボクシングはリングサイドでも何度も観戦して、世界戦もたくさん見ました。
生では見たことの無いアメリカ・ラスベガスでの名試合もビデオで何度も繰り返し見るほど好きです。
先日は長谷川選手が鮮やかな1RKO勝ちと、同日に高校の時から全国区の粟生選手も世界を獲りました。
厳しいボクシングの世界では負ければ全てを失うことが日常茶飯事です。
野球も好きですが、今日負けても明日勝てば良い世界ではないんですから、より厳しさを感じます。
短い現役生活に別れを告げた後にその倍以上の長い人生が待っています。
勝ち続けることは不可能に近く、どんな強い世界王者もいずれは引退します。
他のスポーツもそうですが、頂点に立ったことのある名プレイヤーは晩年を汚さぬように花道を用意して
もらい、引退していきます。
ボクサーはたいてい有名な世界王者は世界戦で負けて引退するケースが多いです。
有名であればあるほど、その後はテレビでの解説や後進の指導などの次のステップに進んでいきます。
もう何年も前に、完全な負けを何度か喫し、世界ベルトを奪われて、その後も現役続行を希望するも、リングに立てる年齢制限を超えてしまい、実力も落ちて、選択肢は引退しかないのに、日本を飛び出して、海外に、生き場所を探して現役を続けようとするボクサーがいます。
もちろん辰吉丈一郎です。
今から書くことは私の勝手な想像ですので、他人が読めば批判の嵐になるかもしれませんが、個人の日記として書いてみます。
大阪生まれの私は辰吉選手がプロで連戦連勝して脚光を浴びていたデビュー当時からの大ファンです。
初めて世界王者になった試合も鮮烈に覚えています。
亀田兄弟よりも実力もあった分、人気は凄かったです。
当時私の知り合いも「辰吉の試合観にいくんや」 といってチケットを私に見せびらかすほどです。
間違いなく、大阪のヒーローでした。
その後、網膜剥離での引退危機も乗り越えて、王者に返り咲いた時は本当に感動しました。
あれからもう何年になるのでしょう。
「もうやめたらええねん」 「いつまでやってるんや」「引き際悪いなあ」「もう一度世界なんて無理や」
私も過去に辰吉選手が引退しないことに対して、不満を感じて悪口を言ったり、思ったりしていました。
「しゃべりも面白いし、タレントで食っていけるやん」
勝手なことを私は思い、彼が現役を続けることに批判的でした。
でも少し前から考えが変わってきました。
30代後半になっても、毎日体を鍛えて、試合には既定の体重で戦い、負けてもくじけないで、また次に向かっていく姿には感動を覚えるようになりました。
きっと無様だと思ってる人も多いでしょう。
何万円も払ってリングサイドで彼を応援した人も、すでに応援すらしていないかもしれません。
私も時々正直思います。
「彼はパンチドランカーだから、正常な判断が出来なくなっている・・」
答えは私にはわかりません。
でも私が感動するのは、彼には失礼ですが試合ではありません。
あしたのジョーなんです 彼は。
漫画の中でジョーは、顔面を打てなくなってしまい、ボクシング界からも、所属ジムからも見放されて、試合も組んでもらえなくなり、表舞台から姿を消しました。
それでもドサ回りのボクサーとしてボクシングを続けます。
そして復活しました。
現実はそんなに甘くないと思います。
もし私が辰吉だったら、とっくにあきらめて、引退して芸能界で食っていくことを考えたと思います。
でも彼は違いました。
今までに誰もやったことの無いむちゃくちゃな事をやっています。
かっこよく引退した元世界王者の畑山隆則さんは、「昔ファンだったけど、もうとっくに終わってるのに何やってんだろ」
みたいな事を嘲るように話していました。
バカにしている人は多いのではないでしょうか?
先日はタイで負けました。
世界戦以外では初めての敗北です。
もう強くないのかもしれません。
本当に、もう引退するかもしれません。
あしたのジョーは最後に「真っ白に燃え尽きた」という名ぜりふで終わりました。
辰吉丈一郎が引退した時に、またマスコミは偉業だとか言って手のひらを返して称えるのかもしれませんし、
過去の人として、とっくに背を向けていた大勢のファンが感動ありがとうと言って騒ぎになるかもしれません。
フィリピンの英雄 マニー・パッキャオのような本当に強いボクサーでは無いと思いますが私は両者とも応援しています。
先のことはわかりませんが、失明などの恐怖にも打ち勝ち、誰も歩いたことの無い道を歩いている姿は、一般人にバカにされるような軽い人生では決して無いと思います。
今は息子も大きくなって、彼は息子にボクシングを指導しているそうです。
いつか引退して、ゆっくりして欲しいと思いますが、私は勝手に彼のことを、あしたのジョーだと思って、その、まだ燃え尽きない精神力に感動して、応援を続けたいと思います。