ALSが進行するにあたって僕は様々なものを失ってきました。脳血管疾患や事故の様に最初に一気に失うのではなく、徐々に、しかし確実に体の機能が失われていくALSという病気は残酷なものです。僕は失うたびに何かを諦めてきました。しかし、呼吸器をつけて生きることを選んだ以上は、ただ『生きる』保障をされた状態でなく、自分らしく『生き甲斐』を持って暮らすことは諦めたくはなかったです。施設での生活も「生きる」ためには問題はなかったですが、基本的に集団生活なので様々な制約があります。スタッフの人数の関係で散歩程度の外出もできませんでした。病気による制約は受け入れますが、それ以外はなるべく自由に「生活」を楽しみたいと思って施設を出ました。今は重度訪問介護制度を利用して24時間介護を受けて、在宅で生活をしてます。
重度訪問介護の制度に上限はなく、ここじんの必要に応じてサービスを受けられます。例えば1日12時間の介護でいい障害者には1日12時間の、24時間の介護が必要なら24時間のサービスが受けられます。他の障害福祉サービスと同様に国50%・県25%・市町村25%の財政負担です。障害者総合支援法2条では「日常生活ができるような必要なサービスを提供する責務」が市町村に課されていますが、自治体の制度に対する理解不足や財源不足、ヘルパー等の人材不足などが原因で地域差が大きく、地域によってサービスを受けられない人が数多く存在します。僕は月に804時間の重度訪問介護が認可されました。ヘルパー一人が24時間30日つきそうと720時間になるので、84時間は二人目のヘルパーが使える計算になります。先ほど述べたように認可の状況は市町村により異なり、一宮市はかなり厳しいようです。本来なら全国共通の基準で判定するべきですが、市町村の財政事情や前例の有無に大きな影響を受けるのが現状です。重度訪問介護は24時間の連続介護を8時間勤務のヘルパーが3交代制でサービス提供する前提で厚労省で制度設計されました。ヘルパーが例えば8時間連続で障害者のそばで見守り待機を行い、見守り中に、時々、排泄や体位の微調整や水分補給や温度調整(服の脱ぎき)など、様々な介護を行うスタイルです。自宅での入浴介護や食事介護などや、家事援助や、吸引等も行います。この制度のおかげで人工呼吸器をつけた僕でも一人暮らしができています。ヘルパーがつきっきりで介助をしてくれるので毎日昼に食べ物を食べる訓練をしています。
重度訪問介護は家の中でも外でも同じように介護が必要な障害者向けの制度のため、外出も自由に使える制度です。
施設と違って自由に外出できます。在宅生活を始めてから介護士に同行してもらってコンビニで買い物をしたり、喫茶店にも行きました。先日は温泉で宿泊したり近くの中学で開催された夏祭りに参加しました。いずれも重度訪問介護制度を利用した在宅生活だから実現したことです。
市町村による重度訪問介護の充分な認可時間数やサービス提供事業者があるという環境が整えば僕の様な重度の障害者でも健常者に近い生活をすることができます。
重度訪問介護は医療関係者にもあまり認知されておらず、いまだに『介護は家族・親族が行うもの』という価値観が根付いている地域もあります。重度介護訪問とは障害のあるかたがご家族に負担をかけず、豊かに生活を送るためのサービスだと広く認識してもらうこと、そしてご家族が堂々とこのサービスを申請できるような社会になってほしいと思います。