お腹の中にいる赤ちゃんはたいてい眠っている。24時間のうちノンレム睡眠とレム睡眠が6時間ずつ、残りの12時間はノンレムともレムとも言えない中間の眠りだ。胎児が目を覚ます(覚醒)のような状態を経験するのは、妊娠期間の3分の2を過ぎてからである。
しかし、それでも起きている時間は1日2~3時間程度しかない。
お腹の赤ちゃんに音楽を聞かせたり、話しかけたりするが、赤ちゃんはぐっすり眠っているため残念ながらほとんど聞こえていないようだ。
妊娠後期になると、トータルの睡眠時間は減ってくるが、それに逆行するようにレム睡眠だけは爆発的に長くなる。妊娠の最後の2週間になると、胎児のレム睡眠は1日に9時間近くにもなる。そして最終週になるとレム睡眠は生涯最長となる1日12時間にもなる。
脳の発達は、妊娠の3分の1をすぎてから急ピッチで進んでいく。(レム睡眠が爆発的に増える時期と一致する)
胎児の脳はレム睡眠という電気刺激を養分にし成長していく。レム睡眠時に発生する活発な電気信号により、脳内の神経の通り道が次々と繋がれていく。(シナプス形成)
このレム睡眠時の脳の形成は、全ての哺乳類に共通している。
生まれる直前から生まれた直後までの時期は、脳の発達がもっとも活発になる。
この時期の赤ちゃんからレム睡眠をうばうとどうなるのか。
前回のブログの自閉症スペクトラムがそのうちの一つの可能性がある。
そしてもう一つが今日のテーマであるアルコールだ。
アルコールは現在分かっているかぎり、もっとも手強いレム睡眠の敵だ。
母親が摂取したアルコールは、胎盤を簡単に通過して胎児にまで届く。
母親が妊娠中にアルコール依存症だった、または大量にアルコールを摂取したというケースをみてみる。
(方法は出産直後から新生児の頭部に電極をつなぎ、脳波を観察する。)
妊娠中に大量のアルコールを摂取した母親から生まれた子供は、妊娠中に飲酒しなかった母親から生まれた同世代の子供に比べてレム睡眠の時間がかなり短くなっていた。そして、レム睡眠中に発生する電気の質にも違いがあった。
レム睡眠中は脳波が不規則に激しく動くのだが、この電機の活動量が200%も少なくなっていた。
最近の疫学研究により、妊娠中に母親が飲酒をすると、生まれてくる子供は、のちに精神神経障害を発症する確率が高まるのではないかと考えられるようになった。(自閉症も含まれる)
(ワインを二杯程度摂取しただけでもレム睡眠の時間はかなり短くなることが分かっている)
さらに、アルコールを摂取した母親の胎児は、レム睡眠中の呼吸が極端に少なくなった。
通常は1時間に381回のペースだがそれが、なんと1時間に4回にまで減った。(書き間違いではなく、4回)
アルコールは授乳中も控えた方が良い。
母親がアルコールを飲むと、母乳にもアルコール成分が含まれるようになる。
母乳のアルコール濃度は、母親の血中アルコール濃度と同じくらいで、最近になり乳児に与える影響が分かってきた。
新生児はたいていおっぱいを飲んで寝ると、すぐにレム睡眠に入る。母親がアルコールを摂取している場合、乳児の眠りが断片的になることが分かった。目を覚ましている時間が長くなり、レム睡眠が20~30%減少する。そして、体内からアルコールがなくなると、赤ちゃんは失われたレム睡眠を取り戻そうとすることもあるが、まだ脳がしっかりと発達していないため、それも難しい。
現在のところ、胎児や新生児の時期にレム睡眠を奪われると、成長してからどのような影響が出るのかは完全には分かっていない。
分かっているのは、新生児の時にレム睡眠を妨害された動物は、大人になってから社会性に異常がみられるということだけだ。