弁護士は、訴訟や調停のみが仕事ではありません。

交渉ごとを引き受けることは、実は多くあるのです。

交渉に正解はありませんが、基礎はあります。原則は,「交渉は,まとめたい方が弱い」。

よくよく考えると、弁護士が行うフローのうち、

 

法律相談→受任→報酬請求,紛争の相手方との和解協議,いずれも交渉です。

 

交渉態度と結果との因果関係は,厳密には不明というほかありません。失敗を恐れず,責任を抱えこまないようにしようとはいいつつ、大原則・基礎を踏まえて,相手方の態度を分析するとともに,自分の交渉態度を見直す必要に迫られます。

これは、身をもって実感しているところなのです。

 

長くなりましたが、

その場限りの交渉と、そうではない交渉が想定されます。

 ・ 一般の法的紛争での交渉

 ・ 離脱をも見込んだ組織内交渉

これらと、

その場限りでない交渉、

  ・ 今後も取引が続くビジネス関係での交渉

  ・ 今後も付き合いが続く親族関係での交渉

  ・ 一般の組織内交渉

とは、毛並みが大きく違いますね。 

 

大原則

  まとめたい側が弱く,まとめなくてよい側が強い。

}派生原則

 1 破談の場合の代替手段(「バトナ」)をよりよくする

 2 まとめたい様子をできる限り見せない

 3 相手に,より強く「まとめたい」と思わせる

 

破談の場合の代替手段=「バトナ」をよりよく

   ① 代替手段を確保するための時間的余裕をもって交渉に臨む

    ※ たとえば 転居時期直前の物件探し,引越し業者の手配等においては,業者の言いなりになる。

   ② 破談した場合への悪影響が出ないように交渉する

    ※ たとえば 交渉がまとまらないうちに書面で非を認めるような記載をすると,後の裁判で過大にとられてしまう

 

まとめたい様子をできる限り見せない とは

   こちらがまとめたがっている確かな情報が相手に伝われば,相手の立場が格段に強くなる。

   確かでない情報であっても,相手が強気に出て交渉が長引く原因となる。

 

 ※ 良いバトナがなく,本当はまとめたいという場合は,相手のまとめたさと比較考量しつつ,どこまで虚勢を張るか本人に決定させるのが安全。

 

}相手に,より強く「まとめたい」と思わせるには

   ① 相手の真のニーズに沿い,こちらに痛手のないアピール・提案をする(アメ)

   ② 破談になった場合のデメリットをより強く意識するように持って行く(ムチ)

    ※ やり過ぎると,本当はこちらがまとめたいのではないかと勘づかれる。

   ③ 相手を時間・コストをかけさせ,精神的に疲弊させる?

 

!一定の方向性があるテクニック!

 ・ 譲歩の最大限(落としどころ)を明確にして臨む

  → 代理人としては無制限の裁量をもらわないべきかと考えています

 

 ・ 譲歩の幅は最初を最大にする

 

★ ケースバイケースのテクニック

 ・最初の提案の主体

  (当方)+アンカリング効果 -まとめたい態度  vs (相手)+棚ぼた狙い

 

★ 期限設定の当否

  (設定)±相手方の態度決定 -当方の態度決定

    vs (不設定) +まとめたい態度を見せない

 

くりかえしますが、

強気(まとめなくてよい) vs 弱気(まとめたがる)

   → ここまで説明すれば、強気側が勝つのが基本ですよね。

    ※ 勝ち過ぎに気を付ける → 相手の顔を立てる

      ・話に理解を示す 

      ・若干の譲歩

      = 第三者の提案を相互に受け入れる形をとる

★ ありえるパターンとして、

弱気 vs 弱気

 → この場合は中長期的な互恵関係

 

}強気 vs 強気

   → チキンレース ≒ lose-lose?

 

発展的な交渉術ですが、ハーバード流とされるものについても。

具体的事案では,「基礎」との関係を考慮しながら用いる必要があるとされます。

 

   ① 客観的基準に基づいて行う

   ② 利害と人格を切り離す

   ③ 相手の提案の理由を詳しく聞く

   ④ 分けるパイ自体を増やす提案をする

  ※ 強気(まとめなくてよい)の態度の人には即効性はなく,根気や,第三者によるあっせんが必要と指摘されています。

 

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弁護士 齋 藤 健 博(虎ノ門法律経済事務所

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