今日は著名な判例をご紹介しましょう。

婚姻破綻後の不倫配偶者の離婚請求(最判昭和46年5月21日民集25巻3号408頁)、簡単にいえば、浮気してしまった側からの離婚請求です。

 

夫が婚姻破綻後妻以外の女性と同棲している場合と夫の離婚請求の事案を想起してみてください。

 昨日の記事でいえば、③になりますね。

③参照:一方的な別居の事案です。

       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人らの負担とする。
       理   由
 上告代理人榎赫の上告理由一について。
 所論の点に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ,右事実認定に至る過程に所論の違法を認めることはできない。原判決に所論の違法はなく,論旨は,畢竟,原審の専権に属する証拠の取捨,事実の認定を非難するものであって,採用できない。
 同二について。
 原審が適法に確定した事実によれば,被上告人は,上告人甲との間の婚姻関係が完全に破綻した後において,訴外乙と同棲し,夫婦同様の生活を送り,その間に一児をもうけたというのである。右事実関係のもとにおいては,その同棲は,被上告人と右上告人との間の婚姻関係を破綻させる原因となったものではないから,これをもって本訴離婚請求を排斥すべき理由とすることはできない。右同棲が第一審継続中に生じたものであるとしても,別異に解すべき理由はない。右と同旨の原審の判断は正当として首肯することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は,畢竟,原審の認定にそわない事実を前提とするか,独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであって,採用できない。
 よつて,民訴法四〇一条,九五条,八九条,九三条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
    最高裁裁判長裁判官色川幸太郎 裁判官村上朝一,同岡原昌男,同小川信雄

 

②婚姻破綻後の不倫(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)

婚姻破綻後の不倫とその第三者の損害賠償義務
       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。
       理   由
 上告代理人森健市の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係は次のとおりであり,この事実認定は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。
 1 上告人と甲とは昭和四二年五月一日に婚姻の届出をした夫婦であり,同四三年五月八日に長女が,同四六年四月四日に長男が出生した。
 2 上告人と甲との夫婦関係は,性格の相違や金銭に対する考え方の相違等が原因になって次第に悪くなっていったが,甲が昭和五五年に身内の経営する婦人服製造会社に転職したところ,残業による深夜の帰宅が増え,上告人は不満を募らせるようになった。
 3 甲は,上告人の右の不満をも考慮して,独立して事業を始めることを考えたが,上告人が独立することに反対したため,昭和五七年一一月に株式会社P(以下「P」という)に転職して取締役に就任した。
 4 甲は,昭和五八年以降,自宅の土地建物をPの債務の担保に提供してその資金繰りに協力するなどし,同五九年四月には,Pの経営を引き継ぐこととなり,その代表取締役に就任した。しかし,上告人は,甲が代表取締役になると個人として債務を負う危険があることを理由にこれに強く反対し,自宅の土地建物の登記済証を隠すなどしたため,甲と喧嘩になった。上告人は,甲が右登記済証を探し出して抵当権を設定したことを知ると,これを非難して,まず財産分与をせよと要求するようになった。こうしたことから,甲は上告人を避けるようになったが,上告人が甲の帰宅時に包丁をちらつかせることもあり,夫婦関係は非常に悪化した。
 5 甲は,昭和六一年七月ころ,上告人と別居する目的で家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが,上告人は,甲には交際中の女性がいるものと考え,また離婚の意思もなかったため,調停期日に出頭せず,甲は,右申立てを取り下げた。その後も,上告人がPに関係する女性に電話をして甲との間柄を問いただしたりしたため,甲は,上告人を疎ましく感じていた。
 6 甲は,昭和六二年二月一一日に大腸癌の治療のため入院し,転院して同年三月四日に手術を受け,同月二八日に退院したが,この間の同月一二日にP名義で本件マンションを購入した。そして,入院中に上告人と別居する意思を固めていた甲は,同年五月六日,自宅を出て本件マンションに転居し,上告人と別居するに至った。
 7 被上告人は,昭和六一年一二月ころからスナックでアルバイトをしていたが,同六二年四月ころに客として来店した甲と知り合った。被上告人は,甲から,妻とは離婚することになっていると聞き,また,甲が上告人と別居して本件マンションで一人で生活するようになったため,甲の言を信じて,次第に親しい交際をするようになり,同年夏ころまでに肉体関係を持つようになり,同年一〇月ころ本件マンションで同棲するに至った。そして,被上告人は平成元年二月三日に甲との間の子を出産し,甲は同月八日にその子を認知した。
 二 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において,甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは,特段の事情のない限り,丙は,甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。何故なら,丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは,それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって,甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には,原則として,甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。
 三 そうすると,前記一の事実関係の下において,被上告人が甲と肉体関係を持った当時,甲と上告人との婚姻関係が既に破綻しており,被上告人が上告人の権利を違法に侵害したとはいえないとした原審の認定判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。所論引用の判例(最高裁昭和五一年(オ)第三二八号同五四年三月三〇日判決・民集三三巻二号三〇三頁)は,婚姻関係破綻前のものであって事案を異にし,本件に適切でない。論旨は採用できない。
 よって,民訴法四〇一条,九五条,八九条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
     最高裁裁判長裁判官  可部恒雄 裁判官園部逸夫,同大野正男,同千種秀夫,同尾崎行信

 

現在では、

 家を出た直接の原因が、不貞「有責」であると考えられることがあります。

有責者が離婚訴訟を起こしても裁判所では認めない判例が支流ではありますが、一方的に別居した場合は、正当な理由がないと夫婦の同居義務の違反となり、悪意の遺棄となりえるところです。

 

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弁 護 士 齋 藤 健 博

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