さみー><
ようやく12月の気候ですね。

戦後間もない頃、小さな町の小高い丘の上に貧しい一軒家があり、
そこでひとりのおじいさんが子供向け英語教室を開いていました。
...
英語教室での決まりごとは三つだけ。
1.遅刻しない
2.さわがない
3.人に優しくする

でも、怒ると容赦なくコワイ先生だったので、みんなしっかり
決まりを守ってました。

ところがある日、ひとりの女の子がわずかに遅刻してきました。
手に一輪の桔梗のを持ち、うつむいて申し訳なさげに
こっそり席に着こうとした時、
「何をしてるんですか!立ちなさい!!」
と先生の大音響の怒声。

ちなみに、この教室では英語しか話してはいけないことに
なってたので、怒られるのも英語です。ひぇ~

先生は、縮みあがって声も出ない彼女の手に桔梗の花が
あるのに気づき、
「その花は何ですか?」
と尋ねました。

それで少しほっとした女の子が、
「…桔梗です」と答えました(もちろん英語で)。

すると先生曰く、
「君たちが道を歩いてて、何かに気を取られて道草を食って
しまうことを大人は叱りますが、私は叱りません。
そもそも道草というのは、馬が道々で美味しい草を見つけては
立ち止まり、歩みがゆっくりになるということからきていて、
決して悪いことではありません。
君たちが生きていく中で、美しいもの、魅力的なものをたくさん
見つけることでしょう。それらを愛でるのは、とても素晴らしい
ことです。
でも、遅れてきたことは、ちゃんと大きな声で皆にあやまりなさい
こそこそ座るのは、いけません」

それから先生は、しばらく桔梗の花の植物学的なこと、また
その名の由来などについて面白く話してきかせた後、皆には
少しの間だけ自習を命じて、彼女ひとりに授業の最初の部分を
教えました。

そして、
「君がせっかく摘んできた桔梗がしおれるといけないから」
と言い、牛乳瓶に水を入れて持って来て、女の子の桔梗を
さして机の上に置いてから、通常の授業を再開。

女の子は、その桔梗を牛乳瓶ごと抱きしめるようにして家に帰り、
押し花にしてずっと大事にし続けたそうです。

昨日書いた井上成美元海軍大将の、戦後のエピソードです。
こんな大人でいたいものだ。