恒例の大河評論。
『平清盛』の2回目、まずは辛口評価ポイントから。

①ストレスフリーすぎ
 白河院に対面したおり、明晰にかつ簡潔な言葉で、
 悪政を責める清盛。わかりやす過ぎるぞ。
 そんなものは、場面の流れや無言の表現でわから
 しめるほうが大人のドラマというものじゃ。
 同様に、舞いのシーンもやり過ぎですね。
 一瞬切っ先を向けて目線が合うだけのような大人の
 演出もありだったかなと。
 『天地人』『龍馬伝』あたりからそうですが、どうも
 ターゲットを中高生にしてるんじゃないかとさえ思えます。
 ラジオドラマ「青春アドベンチャー」みたいに、目を
 つむってても話がわかっちゃう。

②色彩のコントラスト不足
 兵庫県知事と同意見ではありません。
 京の都の荒れ方、庶民の衣服や住居のリアリティは
 ばっちりです。
 なにせ、平安遷都後250年以上を経てますので、ボロい
 のはそのとおりだ。
 でも、だからこそ逆に宮廷の色はもっと鮮やかでよかった
 んじゃないかなぁと。
 貴族と庶民の恐ろしいばかりの生活差が出て。

 
続いて良い評価。

①考証がしっかりしている
 舞いの舞台を一見して、緻密に再現されてるなぁと舌を
 巻きました。
 平安・鎌倉期の美術好きにとっては、うれしい限りじゃ
 あと、武士の生活ぶり(レベル)がリアルでよろしい。

②歴史的ファクトを丁寧に拾っている
 9世紀初頭から摂関政治が始まり、以後藤原一族が
 日本の実質上の支配者だった…というのは中学校で
 習ったとおりですが、実際にはさらにさかのぼって天智帝を
 操った鎌足の頃から既にそうだったと言えるでしょう。
 そこからすれば400年以上、天皇(中国の
道教の最高神から
 来ている。周辺国の「王」よりは権威あるけれど、隋や唐の
 「皇帝」の秩序…あらゆる宗教の上に座する…には服します
 よという、外交的配慮を込めた呼称)は、その名が示す通り
 まさに宗教的なお飾り」としての立場に甘んじていたわけ
 ですが、白河帝の代で俄然盛り返し、まさに実支配力を伴う
 「王」のごとく復権を果たしつつあったのが、清盛の生まれた
 時代です。
 その白河院を伊東四朗さんが憎々しげに演じてはりましたが、
 若き日はまさに修羅の政争の連続であったろうと想わせる
 凄みがありました。
 そういうファクトを、間違いなく拾って上手に繋げているあたり、
 歴史ものとしては今後の展開を大いに期待させます。
ただいま(13日夜)、田原総一朗さんがNHKラジオ第一に
出演中。
故宮沢喜一元首相の思い出を語っておられました。

宮沢さん、日米開戦の一年前に交換留学生としてアメリカに
渡ったおり、アメリカ人の学生が、
... 「アメリカと日本が戦争になりそうだけど、どっちかっちゃ
アメリカのほうが間違ってんじゃないかなぁ?」
的なことをバンバン言ってるので腰抜かしそうだったと。

その頃の日本では、戦争反対とか日本が間違ってるとか
言おうものなら、それこそ捕まってえらいことになるので、
誰もそういうことを思ってても口にできなかった。

それに比べて、まさに戦争始まりそうなのに自分の国の
批判を普通にしてるアメリカって、おっかしな国だなぁと
思った次の瞬間、
「いや、こんな国と戦争しても勝てるはずがない」
と思い直して愕然としたそうな。

うーん、さすが元首相の若き日の慧眼。
(しかし、自民党の元首相ってハトからタカまで幅広いのぅ)

言論が自由な国は強いってことなのか、それとも強い国だから
こそ多様な言論を包容できるのか。
どっちにしても、言論の自由の度合いは国の力強さの指標に
なるんだなと思います。
さみー><
ようやく12月の気候ですね。

戦後間もない頃、小さな町の小高い丘の上に貧しい一軒家があり、
そこでひとりのおじいさんが子供向け英語教室を開いていました。
...
英語教室での決まりごとは三つだけ。
1.遅刻しない
2.さわがない
3.人に優しくする

でも、怒ると容赦なくコワイ先生だったので、みんなしっかり
決まりを守ってました。

ところがある日、ひとりの女の子がわずかに遅刻してきました。
手に一輪の桔梗のを持ち、うつむいて申し訳なさげに
こっそり席に着こうとした時、
「何をしてるんですか!立ちなさい!!」
と先生の大音響の怒声。

ちなみに、この教室では英語しか話してはいけないことに
なってたので、怒られるのも英語です。ひぇ~

先生は、縮みあがって声も出ない彼女の手に桔梗の花が
あるのに気づき、
「その花は何ですか?」
と尋ねました。

それで少しほっとした女の子が、
「…桔梗です」と答えました(もちろん英語で)。

すると先生曰く、
「君たちが道を歩いてて、何かに気を取られて道草を食って
しまうことを大人は叱りますが、私は叱りません。
そもそも道草というのは、馬が道々で美味しい草を見つけては
立ち止まり、歩みがゆっくりになるということからきていて、
決して悪いことではありません。
君たちが生きていく中で、美しいもの、魅力的なものをたくさん
見つけることでしょう。それらを愛でるのは、とても素晴らしい
ことです。
でも、遅れてきたことは、ちゃんと大きな声で皆にあやまりなさい
こそこそ座るのは、いけません」

それから先生は、しばらく桔梗の花の植物学的なこと、また
その名の由来などについて面白く話してきかせた後、皆には
少しの間だけ自習を命じて、彼女ひとりに授業の最初の部分を
教えました。

そして、
「君がせっかく摘んできた桔梗がしおれるといけないから」
と言い、牛乳瓶に水を入れて持って来て、女の子の桔梗を
さして机の上に置いてから、通常の授業を再開。

女の子は、その桔梗を牛乳瓶ごと抱きしめるようにして家に帰り、
押し花にしてずっと大事にし続けたそうです。

昨日書いた井上成美元海軍大将の、戦後のエピソードです。
こんな大人でいたいものだ。