いつかの新聞記事にあった、イラストレーター「安西 水丸」さんのコラムがとてもおもしろかった。
芸術とか芸術的という言葉がどうも気恥ずかしく、自分を芸術家だと思っている人も苦手という内容。
ゴッホが自分の耳を切る話はまったく理解できず、気味悪い男だなぁと思ったそうで、
自分はイラストレーターであり、画家になろうなどと思ったことは一度もないとのことです。
「人前で絵を書いたりするのも勘弁で、ワークショップなどはぞっとする。
さらに音楽に合わせて人前で絵を描くなどは死刑に等しい」という荒れよう。笑
絵を描いていると、取材やインタビューなどでよく訊かれる、
「壁にぶつかったり、描けなくて悩んだことはありませんか」といった質問には、
「芸術家じゃありませんので、そんな恰好いいことはないですよ」と答えるそうです。
「描けなかったり悩んだりするくらいなら、とっくにこの仕事はやめている。
楽しいからやっているのだ。」という、ごもっともなお答え。
自分を芸術家だと思っている人たちのファッションも苦手だそうで、
なぜか建築科やデザイン関係者に愛好家が多いという「マオカラー」にも疑問たっぷり。
全国のデザイン会議などには、半分くらいがマオカラーを着て現れるそうで、
どこか自分は普通じゃないことを主張したいのだろうか、と辛辣。笑
ちなみに「マオカラーが悪いわけではなく、自分は普通じゃない、芸術家なんだ、
といった輩に魅入られてしまったのが不幸である」とマオカラーには同情されています。笑
奇抜な人間性が目立ち、異彩であることが偉才ともとらえられがちな世界で、
奇才でありながらも、取り繕わない等身大の素朴な感性で凡庸さを大切にする。
恰好つけない感じがまた恰好いい。
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建設中の「梅田北ヤード」のビル群。
それでも何かを創り出し、時代を切り拓いていくには「普通」じゃない発想力と感性も必要。
それらを達観する視野の広さとバランスが重要ですね。