僕がボビー・コールドウェルの曲と出逢っ

たのは『Stay With Me』からだった。


世代的には映画『竹取物語』でピーター・

セテラが歌う『Stay With Me』で知るとい

うのが普通の流れだったのかも知れないが、


僕はタバコ『パーラメント』のCM曲に採

用されていたボビーが歌うセルフカバーの

方だった。


このCMは『アメリカン・ブルー、パーラ
メント』というキャッチコピーに準じて、
ブルーを基調にしたニューヨークの美しい
夜景とゴージャスな演出、そしてそこに登
場する容姿端麗な西洋人の男女が登場する
という、この時代の日本人が想い描く、
『オシャレな大人』のイメージを全面に打
ち出したもので、ナレーションは長塚京三
さんが担当し、その洗練されていながらも
柔らかく暖かい声が映像のアーバンな雰囲
気にとても合っていた。

こうした構成の中で流れていたのが
ボビー・コールドウェルの曲の数々で、

『Come to Me』『Heart of Mine』『Back 
to You』など、どれも彼を代表する曲ばか
りだったが、





中でも、この『Stay With Me』のテイクは

特に当時高校生だった僕の心に強く響いた。

CMは夜によく流れていたイメージから、
『Stay With Me』を聴くと夜を連想する。

と、同時に個人的には曲を聴きながら窓辺
で心地よい夜風に吹かれ、当時想いを寄せ
ていた子のことを考えては物思いに耽って
いたという、ほろ苦いイメージもある。

歳を重ねた今となっては、もうこのような
ことを思うこともなくなったが、

今聴いても、
気持ちだけはあの頃に戻れるというか、

新鮮な気持ちになれるというか・・・


いずれにしても、
ここから彼の曲にハマっていったのだった。

この頃は彼の人気も非常に高かったからか、
『Heart of Mine』『Solid Graund』
『Where is Love』と矢継ぎ早にアルバムを
リリースしていた時期で、当然これらのア
ルバムを買い、一方では過去のものも遡っ
て買い揃えていった。
彼の歌詞は女々しいと言うか、未練がまし
いと言うか、男の弱い、情けない場面を取
り上げているものが多い。

しかし、そんな主人公の悲哀を、同性に共
感を得るように、母性を擽るように、美し
く昇華させていると聴き手に感じさせるの
は、彼の巧みな曲調と、優しく心のこもっ
た甘い声によるものと僕は思っている。



彼の歌声をリアルに聴くことはもう儘なら
ないこととなってしまった。

『その時はいずれ来る』『仕方のないこと
』ということくらい解っていたつもりだし、

『これも時の流れだ』と思わねばならない
ことも知ってはいた・・・。

だけど、実際にもうこの世から去ったのだ
と思うと、やっぱり寂・・・


いや、もうそれ以上は言うまい・・・。


彼と出逢って以降、僕の人生の傍にいつも
有ったボビーとその曲たちは、

それでも色褪せはしない。


この記事を書いたのは、
今日、早朝ドライブの途中にたまたまふら
りと立ち寄ったカフェにボビーのアルバム
が飾ってあったのを見つけたから。
少しここの店主と話しをしたが、ボビーを
始め様々な音楽に造詣が深いようだから、
また通ってみようと思う。

これもボビーが引き合わせてくれた縁か?
などと思ってしまうが・・・

それはちょっと強引過ぎるか(笑)