つLing Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第三十四回「ネパール」

 訪問時期:2009年9月

 訪問地:ルクラ、パクディン、ナムチェバザール、パタン、カトマンズ

 

 

左上:ナマステ・バンド「Ekata」…日本人メンバーもいるネパールの人気バンド。名曲 "Resam Firiri"をレゲエ風に歌った曲が最高!

左下:ボビン「Rainbow Vibration」…日本でも活動していたアーティスト。英語のギター弾き語り系だが、世界のトレッカーが集まるヒマラヤのゲストハウスで流れていそうな曲で、ある意味ネパールっぽい?

右上:チョウタリ・バンド「Chautari」…伝統音楽と現代楽器を融合した在日グループで、上記ナマステ・バンドとメンバーが結構かぶっている。リーダーのパンチャ・ラマによるフルート(バンスリ)が中心で時々ボーカルも。本アルバムでは歌詞の無いコーラス的な歌声のみ。

右下:オムニバス「Jeans」…香港の重慶マンションのCD屋で偶然見つけたネパール最新ポップス集。

【収録アーティスト】ザ・バンド1974AD、ディーパク・タパ、ディラジ・ライ、モハン・ブサイ、ナリナ・チトラカール、オークリー、オム・ビクラム・ビスタ、サミル・マナンドハル、ストレンジャーズ、スシル・シェレスタ、G. P

 

 

左上:バビン・プラダン「Babin Pradhan 1994」

左中:ネパッティヤ「Ays Benum」…ネパールっぽいのんびりしたロック、いいね。

左下:サンジープ・プラダン「Norits」

中上:スカイ・バンド「Im Anoush Hayrenik」

中中:モンゴリアン・ハート「Ays Benum」…どの辺がモンゴリアンなのかよくわからないなぁ…。

中下:レーシング・ヒル・バンド「Welcome」…ネパールのラップバンド。ヒップホップって感じではなくて大分初期のラップか。

右上:オムニバス「Reeyaz Top 10 2008」…落ち着いて聴き易い曲が多く入ったヒット曲集。

【収録アーティスト】ディペシュ. K. バタライ、パワル・ライ、プーナム・パント、ロシャン・パラジュリー、サティージ・シェレスタ、ユバラジ・チャイラガイ、ダルシャン・ライ、ラジャニ・マハルジャン、サンジャナ

右中:オムニバス「Attraction 2」

【収録アーティスト】アンジュ・パント、ディペシュ. K. バタライ、キラン・プダサイ、モーサミ・グルン、ラムチャンドラ・カフレ

右下:オムニバス「Kiran」…映画? ドラマ?のサントラのようだけど詳しくは不明。ジャケットだけ見ると映画サントラ風のようでも実は普通のポップスのオムニバスアルバムだったりもする。

【収録アーティスト】アンジュ・パント、アルナ・ラマ、ディーパク・リンブー、インディラ・ジョシ、キラン・プダサイ、プスパ・ポウデル、ルパク・ドテル、タラ・デビ

 

(Ling Muコメント)

・ネパールもまたインドと違って「ポップス = 映画音楽」ではないようで(一部はあると思うが)、アーティストごとにアルバムが売られていた。訪れた2009年時点ではカセットテープだけ売られた店もあった。ヒマラヤトレッキング時、ふもとの町にあったカセット屋の兄ちゃんはネパールの音楽事情はそれほど詳しくなかったけど、登山に関する情報とかいろいろ教えてくれていい人だったな~。

 

・最近巷でネパール料理店が急増しているように、東京にもネパール人コミュニティが出来上がってきているため、彼等コミュニティ向けにネパールの人気歌手がたまに大挙して来日し、コンサートをやったりする。もちろん普通のメディアには通知されないので、ネパール人の知人やネパール料理屋の店員等に聞いたら情報を得られるかも知れない。又、少ないが日本を拠点に活動するアーティストもいる。

 

・全体的にのんびりした調子のポップスが多い。バングラデシュ同様特にこれ、いい!という曲は少ないが、曲中にバンスリ(フルート)の音が入ってたりするとヒマラヤの山々が見えてきそうないい気分になる。

 

次回はブータンを訪ねます。

つLing Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第三十三回「ベトナム 」

 訪問時期:2009年5月

 訪問地:ホーチミン、ホイアン、ハノイ、タイニン

 


左上:ミー・リン「Mua Thu Khong Tro Lai」…NHK BSでかつてあった番組「Asia Live」に出演した時は可愛らしいアイドルだったけど今やハノイを代表するベテラン歌手。歌唱力も断トツ。

左中:タム・カー・アオ・チャン「Chao!」…今は解散したアオザイ姿の三人娘グループ。本作品は4枚目のアルバムだが、ベトナム版と日本版があり、実は両方持っている。曲編成は近いが日本版では彼女等は日本語で歌っている。キャンディーズのカバーもあって、これが結構ハマる。

左下:AC&M「Xin chao」…ベトナムのゴスペラーズ?! ベトナム語のアカペラ曲が時に美しく、時に懐かしく(田舎っぽくて)。

右上:ミー・タム「Trai Tim Em Con Yeu」…何か70~80年代の日本のポップスや歌謡曲のような響きがあってなかなかよし。

右中:オムニバス「Rock Saigon」…歌っているのはベトナムの有名なポップス歌手達で、ロック調な曲を集めたオムニバスという感じ。

【収録アーティスト】ボネール・チン、F5、ホン・ゴック、カシム・ホアン・ブー、カン・ドゥー、マット・ゴック、ミー・フォン、ミー・タム、グエン・ダット、タイン・ラム、トゥアン・カン

右下:オムニバス「Rock the Nation」…こちらのアルバムの方がよりロックらしい。ベトナムにこんなにバンドがあったんだと、バンドブームだった時代に中国に住んだ自分には懐かしいオムニバス。

【収録アーティスト】ダ・バン、ホーリー・レッドクロス、グー・クン、プロフェシー、サゴメタル、スタッパント、ティタニウム、レイジー・ドールズ、サイレント



上:オムニバス「Lan Song Xanh Live Show 2000」…ハノイで開催されたポップスライブアルバム。東南アジアのポップスのライブは沢山の歌手達が出演する歌謡ショーな雰囲気なんだね。

【収録アーティスト】バー・コン・メオ、ホン・ゴック、ホン・ニュン、ラム・チューン、ミン・トゥアン、フォン・タイン、

左下:タム・カー・アオ・チャン「Tam Ca Ao Trang」…上記三人娘のファーストアルバム。この時代、中島みゆきの「ルージュ」がアジア各国でカバーされたが、ここで彼女達もカバーしている。

右下:バオ・イェン「Nguoi Dep Trong Mo」

 

(Ling Muコメント)

・ベトナムが開放政策を取る以前は本国のポップスは非常に乏しく、80年代のベトナムポップスの中心は実はアメリカにあった。つまりアメリカへ脱出したカン・リーを代表とする旧南系歌手達が亡命者コミュニティで歌う曲がほとんど。この亡命歌手の音楽シーンは本国とは別に今も健在だ。

 

・ドイモイが始まった90年代以降、ベトナム本国のポップスは急速に発展。日本や欧米、中華圏のポップスをカバーしたものからロックまであっという間に周辺国と変わらない多種多様な音楽が生まれていった。そこは中国と近いプロセスを歩んでいるため、同じ歌手が70~80年代歌謡っぽい曲からヒップホップまで同じ時代の音楽のように歌う光景が見られる。

 

・ベトナムではカーニャックと呼ばれる歌謡ショーがレストラン等で頻繁に行われるが、この国のトップクラスの歌手が普通に出演するというアジアポップス好きには驚愕のエンターテイメントがある。地元のライブハウスに気軽に行ったら、武道館を埋めるようなアーティスト、紅白に毎回出場するような歌手がごっそり出演しているような超お得感である。僕も現地で一回見に行ったが、クアン・ユンとホン・ニュンという男女共に大スターが出演しており、その素敵な生歌にしびれまくっていた。

 

次回はネパールを訪ねます。

つLing Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第三十二回「バングラデシュ 」

 訪問時期:2008年9月

 訪問地:ダッカ、チッタゴン、バンドルボン

 

 

左上:ジェームズ&ノゴル・バウル「Kaal Jamuna」…バングラデシュNo.1のバンド。

左中:シャウォン「Maye Tume Kedona」

左下:ハリド「Saat Asman」

右上:ハビブ「Aboseshe」

右中:バーラム「Balam II」…この中では一番聴きやすいポップス。一曲英語の曲があるのだが、それが一番いい。

右下:ベイビー・ナズニン「Oh! Kalia」

 

左上:プリンス・マフムード「Ghumaow」

左中:オムニバス「Pencil e Aka Chobi」…映画音楽というわけではなさそうだがオムニバスアルバム。落ち着いた聞きやすい曲が多い。

【収録アーティスト】アッキー&ラジュー、ファズル・ラビ、M.M.R.ラジブ、ミトラ、ニロブ、オニック、ローラ、ルベル、シプー、ピップ

左下:オムニバス「3rd Person Singular Number」

【収録アーティスト】ファード、ハビブ、ラ・リモン、ナンシー、プリンス・マフムード、シュミ、ミトラ

右上:プロメテウス「Unbound」

右下:サルマ「Baulamir Osukh」…美人さんなので思わず購入。曲的にはコッテコテのインド的な伝統色の濃い歌謡曲。

 

(Ling Muコメント)

・バングラデシュのバザールでCDはいくつか見つかった。多くがちゃんと箱状に作ってある紙製のジャケットというのが特徴だった。カセットもあって2、3本買ったが、人気歌手ルナ・ライラのカセットは購入後にホテルで試し聴きするやその場で捨てた程ダメダメの音質だった。

 

・ともあれ結構購入できたことに満足してしまったが、バングラデシュのミュージックシーンについてはほとんどわかっていない。この国の国語はベンガル語で、隣国インドのコルカタ(カルカッタ)を中心とした西ベンガル州と同じ言葉。ということはコルカタで作られたインド映画で使われる挿入歌もベンガル語ということになるが、そこはインドのプレイバックシンガーが(例え母語でなくても)歌うのが普通なのだろうか。バングラデシュの歌手がそこで登場はしないのか疑問が残る。この国の人気バンドであるジェームズ&ノゴル・バウルのボーカルのジェームズがプレイバックシンガーに挑戦したというニュースを聞いたことあるから、インド映画登場はそれほど一般的ではないのかも。そもそもこの国はインドと違ってポップス=映画挿入歌ではないのだろう。だから売られているアルバムは映画単位ではなく歌手個々人ベースである。

 

・あくまで自分の感想だが曲的には全体的に可もなく不可もなくといった感じで、この曲最高!って曲があまり無かった。余談だが、以前知人の写真家がバングラデシュをテーマにした写真展を東京で開催したので手伝ったことがある。そこでこれらコレクションを入れたi-tunesを会場BGMとして流したのだが、流してしばらくしないうちに写真家の彼によってボリュームをゼロにされてしまった。現地の雰囲気は多少出せたと思うのだが、あまりパッとしなかったのかなと思った。

 

次回はベトナムを訪ねます。

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★第三十一回「スリランカ」

 訪問時期:2008年4月

 訪問地:コロンボ、シーギリヤ、キャンディ、マハラガマ、アンバランゴダ、ヒッカドゥワ

 

 

左上:チャンダニ・ヘティアラッチ「Vilasitha」

左下:センティグレイツ「Heritage」…ヒップホップに混じる南アジア風サウンドが一層かっこいい!

右上:アントン・ジョーンズ「Oberoi Bomba」…国内で起こったニュースを歌にするストーリーバイラというスタイルを好む大御所歌手。タイトルがほとんど「〇〇殺人事件」という所がシュール。

右下:ジプシーズ「Golden Hits-2」…人気バイラグループのノンストップアルバム。その名の通り曲と曲の間の切れ目が無くメドレーのように進む。カセットなのにジャケットが大きい。

 

 

左上:ジプシーズ「Song of Peace」…平和を歌ったミニアルバム。ジャケットがトランプか何かのような紙箱というのも面白い。

左下:イラージ「Chapter 02」

右上:バティア&サントゥシュ「Ayubowan」…南アジアらしさも兼ね備えてるが、普通に聴いて爽やかなシティポップ。" Home in the sky"という曲はあまりにいい感じだったので結婚披露宴の際BGMにまでした。

右下:ニルバナーヤ「6th Lane」…当時現地ではヒップホップが流行。英語も多く入っているこのグループ、歌詞はやや重そう?

 

(Ling Muコメント)

・その昔ポルトガルに支配された歴史があるためか、この国で従来主流だった歌謡曲はバイラと呼ばれるラテン風の明るいダンス歌謡。サンフラワーやジプシーズといった人気バイラグループのアルバムは全曲メドレーのように途切れずに進む。まるで韓国のポンチャックのアルバムみたい。バイラのカセットはケースが大きかったり、紙箱だったりで個性的。時事問題等を歌詞に盛り込んで伝えるストーリーバイラなんていう種類もある。

 

・この国を訪ねた時はバイラは少し廃れ気味で、テレビや街中で流れていたのはほぼヒップホップだった。シンハラ語と英語が混ざっていても違和感無くてかっこいい。そう言えばスリランカにはタミール族という民族もいるが、タミール語の作品はあまり見られなかった。隣国インドならタミール映画の挿入曲等、タミール語ポップスは多数存在するから、彼等はそれを聴いているのだろうか。それともシンハラ語のポップスを普通に聴いているのか。

 

次回はバングラデシュを訪ねます。

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★第三十回「クウェート」

 訪問時期:2007年8月

 訪問地:クウェート

 

 

左上:ナワル「Nawal 2006」…平均的なアラブポップスを歌う女性歌手。よくいる名前なのかナワル・クウェーティ(クウェートのナワル)とも呼ばれる。

左下:マイアミ・クウェーティ・バンド「Al-Nazaer」…レゲエ調の南国感あるサウンド。

右上:ギターラ「Guitara 2006」…テクノにラップ、それにアラブらしさも添えた曲がカッコいいロックバンド。

中下:アル・ジョハラ「Agrka al Johara al Kuwaitiya」…実は少年時代に下北沢のアジア音楽専門カセット店で購入。初アラブポップスはクウェートの作品だった。少しレゲエっぽいポップな曲。

左下:ギターラ「Guitara 2004」…曲によって男性と女性のボーカルが交代しながらノリのいいポップスを奏でる。

 

(Ling Muコメント)

・湾岸地域のメイン歌謡曲である「ハリージ」ももちろんポピュラーだが、他の湾岸諸国と比べると意外と聴きやすいポップな音楽が多い。ギターラというバンドの作品などは日本の自宅で普通に流していてもなかなかいい感じ。

 

・42〜43度の酷暑を歩いてクウェート・タワーまで行くのが精一杯だったので結局スーク(市場)で買い物する機会は無く、空港のCD屋で購入した。

 

・高校生の頃、下北沢にアジアや中東のポップス専門のカセットショップがあってよく通ったのだが、そこでアラブ石油王スタイルのジャケットのカセットを見つけた感動は今も忘れられない。上記クウェートのアル・ジョハラというグループのカセットだが、今も聴ける。

 

中東湾岸諸国が続きましたが、次回はスリランカを訪ねます。

Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第二十九回「オマーン」

 訪問時期:2007年8月

 訪問地:マスカット、ミントリブ、ワディ・バニ・ハリド

 

 

 左:アメル・マスード「Stad」…オマーンも基本はやはり湾岸チャカポコ文化圏と再確認できるハリージ。

中:ムルタカ・アル・アヒバ「Multaqa al Ahiba 2」…メインボーカルと大勢のコーラスが掛け合うように歌う音頭調の歌謡曲が独特。

右:ムルタカ・アル・アヒバ「Multaqa al Ahiba 2007」…こちらは女性コーラスも入る。何がオマーンのスタンダードかはわからないが、なぜかこれぞオマーン!って気分になる。

 

(Ling Muコメント)

・湾岸地域のメイン歌謡曲である「ハリージ」はこの国でも割とポピュラーなようだ。オマーン人は他の湾岸歌手のように輪っかを布に乗せたカフィーヤではなく、ターバンのようなものを巻くスタイルなので、ジャケットの歌手の姿を見たらほぼオマーンの作品だとわかる(まれにイエメンの歌手だったりもするが)。

 

・問題はジャケットの歌手からだけではポップスなのか伝統音楽なのかが判別できないこと。カセット屋で試し聴きさせてもらうと、たまに浪曲のような民謡だったりもする。ジャケットの歌手の顔がお爺さんだと民謡の確率が高いので白髭はなるべく避けた。

 

・ボーカルとコーラス隊が掛け合う祭り囃子のような曲調のムルタカ・アル・アヒバというグループの音楽は他のアラブ歌謡ではあまり聴かない独特な作品。何となくオマーンらしい音楽な気がする。観光中、車の中でこのカセットを流したら、「オマーンのポップスは悲しい歌詞の曲が多いから他のにしよう」と別のアラブの曲に取り替えられた。お祭りっぽい調子なのに悲しいのか…。

 

・オマーンで訪ねたカセット屋を切り盛りしていたのは若くて綺麗なオマーン人の女性だった。店内の写真を撮らせてもらった際に彼女も写ってくれた。なかなか撮れない湾岸アラブの女性の貴重な一枚となった。

 

次回はクウェートを訪ねます。

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★第二十八回「UAE (アラブ首長国連邦)」

 訪問時期:2007年8月

 訪問地:ドバイ、シャルジャ

 

 

左上:ルウェイダ「Wareni」…湾岸色薄いアラブポップス。湾岸アーティストにそれを求めるのは邪道だと分かっているが。

右上:カール・ウルフ「Karl Wolf」…ベイルート生まれ、ドバイ出身、カナダ在住のR&Bアーティスト。TOTOの名曲"アフリカ"のリメイクがヒット。99%欧米的なスタイル。

左下:アハラム「Tabee'ee」…バーレーンからUAEに帰化した女性歌手。チャカポコとレゲエを合わせたゴキゲンな曲。

中下:エイダ・アル・マンハリ「Eidah al Menhali 2006」…現地のアイドル雑誌のグラビアをこの白装束で飾っていたイケメン系。曲的にはポップスとチャカポコの間ぐらい。

右下:ハマド・アル・マネーア「Sahebi」…ザ・チャカポコな湾岸歌謡曲

 

(Ling Muコメント)

・この国のメイン歌謡曲は典型的な湾岸歌謡「ハリージ」。別名チャカポコ系と呼ばれる打楽器をチャカポコ、チャカポコとかき鳴らし、シンセサイザーとバイオリン、ウードで同じような節回しを延々繰り返す音楽。


 ・街中はほとんどインド人を始めとした外国人労働者であるためかカセットやCDを売る店はほとんど見つからず。インド人の多い通りで店を見つけてもそこで売られていたのはインドの作品。なのでUAEポップスの作品はほぼ空港内のCD屋で調達したのだった。


・空港のCD屋、チャカポコ系なら結構置いている。なので極力チャカポコでないドバイシンガーを事前に調べて、それをピンポイントで買ってみたがそんなに多くないな。基本お金持ちだからポップスなんて他のアラブの国の作品を聴けばいいし、どうしても自国の作品作るならこれまで通りのハリージを歌っていれば一定支持層はいるし、国内にいてこれから新しい音楽を広めようという動きはあまり無いのかも。仮にそう考えた人がいてもカール・ウルフみたいに国外に出てしまうのだろう。

 

次回はオマーンを訪ねます。

Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第二十七回「カタール」

 訪問時期:2006年5月

 訪問地:ドーハ

 



 左上:アリ・アブドル・サッタル「Yatyamh」…この国ナンバーワンのチャカポコ系シンガー。民族衣装姿のアルバムは独特の泥臭さを感じたので洋服姿のアルバムを買ったが、やっぱり泥臭かった。

右上:サード・アル・ファハド「Ya Qalbi Ebtesim」…珍しく湾岸色の薄いアラブポップス。カタール人とは思わなかった。

下:オムニバス「Qatar Damzam Ayatya」…主にハリージ中心だが、カタール人人気アーティストの曲を集めた作品。

【収録アーティスト】アリ・アブドル・サッタル、アハメド・アブデル・ラヒーム、ザイフ・アッバシ、イサー・アル・クベイシ

 

(Ling Muコメント)

・この国のメイン歌謡曲は典型的な湾岸歌謡「ハリージ」。別名チャカポコ系と呼ばれる打楽器をチャカポコ、チャカポコとかき鳴らし、シンセサイザーとバイオリン、ウードで同じような節回しを延々繰り返す音楽。確かに旅先の街角で流れている分には現地の雰囲気があってよいのだが、言葉がわからない者にはじっくり聴く音楽ではない(あくまで好みだが)。

 

・愛知万博で知り合ったカタール人にドーハ市内を案内してもらったのだが、途中カセット屋にも寄ってもらった。カタールの歌手のカセットが欲しいと言っても店員はインド人でわかっていない様子。そこへ案内してくれたカタールの知人、即座にカタールのアーティストの名前を何人か挙げてくれたので、何とか上記の三本をゲットできた。しかもお代まで払って頂き、カタール人のホスピタリティに感謝感激。

 

・実は2012年に六本木ヒルズで大規模なカタールのイベントがあった。そこの広場ではカタールの民族舞踊と共に楽団の生演奏が行われていたのだが、演奏の中にはポップス調の曲もあって、あれを歌ってる歌手はひょっとしてカタールの人気歌手なのだろうか?! だとすればカタール人アーティスト初めての日本ライブ?! なんて思いながら見ていた。実際の所どうだったのだろう…。

 

次回はUAEを訪ねます。

Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第二十六回「シリア」

 訪問時期:2006年5月

 訪問地:ダマスカス、パルミラ、アレッポ

 

 

左上:ジョルジュ・ワスーフ「Kalam el Nass」…アラブポップス界でもかなり有名なポジションにいるシリア人歌手。シリア国内でもトップクラス。みんなで歌って騒ぐ系のコテコテアラブポップスかな。

左下:アサラ「Ady」…同じくアラブポップス界で有名なシリア人女性歌手。

中上:ロパ「Atansyat」

右上:サード・アル・フサイニー「Mosafer」…実は現地ではなく、Ling Mu少年時代にかつて下北沢にあったアジア音楽専門カセット店で購入。当然初めて聴いたシリアポップスでもあるが、このアルバムは外国人でもとっつき易いメロディーでなかなか。

右下:オムニバス「Best Pop Syria」…ダブケと呼ばれる祝いのダンスの時にかけられる音頭調の曲中心。外国人女性の水着ジャケは音楽と関係無し。これをガンガンかけ続ける長距離運転手の好みか。

【収録アーティスト】アベッド・アズリエ、ジョルジュ・ワスーフ、マジド・エル・イシク、クルナ・サワ他

 

 

上:サモ・ゼイン「Finally Tonight with You」…若者に聞くとシリアでナンバー1だと言われるアーティスト。珍しく洗練されたバラード調の曲が多い。

下:ルワイダ「Min Nathra」

 

(Ling Muコメント)

・従来レパント地方と呼ばれ、隣国レバノンと常に一体の歴史を歩んできたシリアだが、欧米風な雰囲気が融合して洗練されたレバノンポップスに比べると、シリアポップス(シリア出身歌手によるアラブポップス)はもっと伝統色があってこってりした曲が多い気がする。エジプトポップスの方がむしろ近い感じ?

 

・カセット/CD屋でシリアのナンバーワンの作品を求めると、店員が中年以上ならジョルジュ・ワスーフ、若者ならサモ・ゼインがよく紹介された。シリア人アーティストの作品と言っているのに、レバノン人歌手の作品を勧められることも多かったのは、単に何でも売ればいいという商魂か、レバノンを別の国と思っていない人が多いためか(実際レバノンは旧宗主国フランスによって不当に分割された地域と考えるシリア人も少なくない)。

 

・伝統的なラインダンス「ダブケ」を踊る際にかけられる歌謡曲が演歌的な位置付けで根付いており、結婚式等祝い事で歌手が呼ばれてガンガン歌い踊る。その代表的な歌手オマール・スレイマンがワールド音楽のジャンルで世界的にブレイクしたことがある。内戦から逃れて国外脱出したが、残念ながら脱出先のトルコで逮捕されたとのニュースを聞いた。彼ももちろんだが、他のシリア人歌手達は大丈夫なのだろうか。無事を祈りたい。

 

次回はカタールを訪ねます。

Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第二十五回「バーレーン」

 訪問時期:2006年4月

 訪問地:マナーマ、ムハラク

 


左上:ハリド・アル・シェイク「Esmi wa Meladi」…バーレーンのスークにあったカセット屋で、この国で一番人気のアーティストと言ったらこの人のカセットが出て来た。湾岸チャカポコ系ではなく、結構ポップな感じ。

左下:ヒンド「Hind 2003」…女性歌手としてはこの国の第一人者。ハスキーな声で叫ぶように湾岸ポップを歌う。

右上:アハメド・アル・ハルミ「Shokran」…こちらも落ち着いてポップな感じの曲。

右下:ハリド・ファード「Khalid Fourad 2006」…ノリのいい若手歌手。バーレーン、意外と思ってた湾岸ポップ主流ではなさそう。

 


左上:サルタニーズ「Bastaky」…湾岸的とも言えるが、メロディーはどこかイラン寄り。ペルシャ湾に浮かぶ島国ならではの傾向?

左下:ガラミアート・ブラザース「Gharamiat Brothers」…エレキの弾き語りは正に湾岸ブルースのデュオか。

右上:オシリス「Osiris」…プログレッシブ・ロックのバンド。全曲英語で歌われているので、アラブポップスではないジャンルの音楽。歌の無い前奏や間奏の部分が長く、巧みなギターと打ち込みの演奏をじっくり聴かせる感じのロック。

 

(Ling Muコメント)

・レバノンの紹介でも触れたように、アラブ諸国ではアラブポップスという一つのジャンルが共有されていて、国別にポップスが分かれているわけではない。従い、ここで紹介されるのはバーレーン出身のアラブポップスの作品が中心になる。

 

・一般的にバーレーンを含む湾岸諸国と呼ばれる国々では、ハリージという歌謡曲が広く定着している。打楽器メインで同じような節回しをずっと繰り返す特徴から「チャカポコ系」と呼ばれることも多いジャンルであり、マナーマ市内でも所々でよく流れていたが、カセット屋でバーレーンのアーティストの作品を買って聴いてみると、意外とその型にはまらないポップな感じの曲が多いことに気付く。

 

・作品によってはメロディーがアラブと言うよりイランに近い感じ。アラビア語で歌われるペルシャポップスと言うとしっくりくる気がする。やはりアラビア半島とイランの間に位置する島国であり、イランと同じシーア派住民が大多数を占める地理的・文化的環境が生み出したバーレーンの独自性なのか。

 

次回はシリアを訪ねます。