毎年開催されてるアジアポップスの祭典、ABUソングフェスティバルを楽しみにしてる。東アジアから中東地域まで、幅広いアジアの今の曲を楽しめるなかなか無いイベントだ。これはアジア太平洋放送連合加盟国で毎年持ち回り開催されているのだが、第8回に当たる2019年は東京で開催され、運良くNHKホールへ観に行くチャンスに恵まれた。とりわけこの回では韓国、中国、インド、トルコ、カザフスタンから参加したアーティストがスーパースター級だったので、生で聴けた感動と興奮は半端無かった。

 さて、2020年は元々ベトナムのハノイで開催の予定だったが、コロナ禍のためオンラインによるリモート開催という形となった。通常このフェスティバルは年末にNHK地上波、年始にNHK-BSでも放送される。2020年は12月28日深夜にやっていたので見たのだが、どうしたことかコンセプトがゴチャゴチャだった。
 番組の半分以上はフェスそのものではなく現代アジアのエンタメ情報と昨年の東京大会の振り返り。肝心なフェス出場アーティストの歌のシーンでは、あろうことか前後少しカットされてる国があったり、曲の冒頭にナレーションがかぶせられたりの残念過ぎる編集。それに対し、今大会とは直接関係無いエンタメ情報の枠で紹介される日本人や韓流アーティストはフルコーラスで流す。そのエンタメ情報だってフェス参加国それぞれやってくれるのならよいが、内容は日中韓に限られ、とりわけNiziU
や鬼滅のテーマ曲といった流行りの線にばかりスポットを当てる等、アジア音楽好きでない層向けの演出が目立った。この辺は別番組でやればいいと思うし、ABUフェスと抱き合わせにする必要は感じられなかった。そんな具合でABUフェスと言いながら重点がどこに置かれてるのか全くわからない1時間半だった。

 

 ま、今回はリモート開催ということもあり、会場の演出、開催国の紹介等が行えない中、各国からの音楽映像をただ流すだけの形になるため、いろいろ工夫したかったのだということだけは理解できる。だが、普段接する機会の少ない国も沢山含んだ広範囲なアジア各国の今の音楽を楽しめるのがABUフェスの素晴らしさであり、ABUフェスにしか成し得ない業だと思っている。こうした部分を端折って、一般人ウケに徹する姿勢はABUフェス、そしてアジア各国の音楽への愛が少ない人が編集したんだなと思わざるを得ない。

 又、編集ではなく大会についても言うと、映像が各国放送局に完全お任せ状態だったので、現代の歌の祭典にもかかわらず伝統音楽で参加する国、その中には歌すら無い国もあった。伝統音楽も嫌いではないが、やはりABUの場では今の音楽を聴きたかった。エンタメ情報の中国の紹介では、様々なオーディション番組があって韓流と張り合えるレベルのアイドルもデビューしているらしいが、本大会代表の曲は国営放送が大好きそうなバリトン声楽風というギャップを見せつけられたり、そもそも日本代表はバーチャルアイドルだったり、各放送局みんなリモートだからと自由にやりだしたな、って感じもした。もっともバーチャルアイドルが悪いわけではないが、今後日本以外の国でもバーチャルアイドルを代表として出演させるようになったら、もうソングフェスティバルとは違うものになる気がする。

 

 苦言が多くなってしまったが、今回リモート開催だったからいろいろ特殊だったのだと思うことにしよう。そして来年はちゃんとどこかしらの国でしっかり開催し、沢山の国々の素晴らしい曲をじっくり聴けたらいいな、と期待したい。