1月最後の週末。嬉しい出来事と悲しい出来事があった。いずれも外国人の親しき友人に関わる話である。
中国方面出張が入り、その前後バタバタしてしまったんで、ブランクがかなりあいてしまいました。何だかんだで2月末になってしまいましたが、ご勘弁を。

続いて嬉しい話。

プロの写真家としてデビューした香港の旅仲間、高達志さんが来日した。自国では写真を観賞する文化がまだ育っていないということで、毎年日本に来て写真展を開き、日本のプロの写真家と交流したり、アドバイスをもらったりして切磋琢磨している。一回目は香港の野鳥、二回目はチベットがテーマだったが、今年は「バングラデシュの人々」をテーマに三度、写真展を開くことになった。今回ギャラリーと打合せのため、僕も通訳として同行した。
場所は目黒にあるギャラリーコスモス
。雑居マンションの一室にあり、外からのぞくと小さそうなのだが、意外と奥行きがあり、写真なら30枚ぐらい展示できそうなスペース。館長も気さくな方だった。

ギャラリー自体は館長が経営する写真プリント紙の販売会社が直営。実は館長のお父さんである新山清さんは、戦後の日本の風景や人々の生活を撮った著名な写真家。昭和50年代、台湾の撮影旅行から戻って来て間もなく、目黒駅前で突然現れた精神異常者に刺殺されるという非業の死を遂げた。息子である館長が彼の意思を受け継ぎ、作品を保管・展示するスペースを作ったことからこのギャラリーが始まったらしい。

話の流れで新山清さんの写真集、そして倉庫に保管されていた秘蔵作品も見せて頂いたが、絵の構図や被写体のごく自然な様子も趣があり、それらがまるで昨日撮った写真かのように完璧な状態で保管されていた。これは美術的のみならず、昭和史的にも大変貴重なものであり、僕も高さんもすっかり夢中になってしまった。

館長は昨年ドイツで新山清展を開催。いずれは香港等アジアでも開催したいということでアジアに関心が向いていた中、高さんが香港からわざわざやって来たということでお互い興味があったのだろう。高さんは今回展示を予定している写真を何枚か披露し、体験談を語っているうちにすっかり意気投合してしまった。出展費用も思いがけず破格の安値で対応してくれることになった。開催初日には旅行写真家等も招いてパーティーをやろう、バングラデシュ大使館もここから近いから案内状を出そう、このスペースには、こうした写真を置いた方がいいんじゃないか、打合せ中にもいろいろ構想が提案された。僕のI-Podにはバングラデシュ・ポップスが100曲ぐらい入ってるから、期間中BGMで流そうかな。もちろん主役は高さんであるが、皆で協力しながらイベントを作っていくのって面白いし、それに少しでも関わっていけるって嬉しいことだな。

写真家の道を歩み出してまだ日が浅い高さん。写真文化のレベルが高い日本でいろいろ体験し、学びたいと常にひたむきな姿勢である。作風は構図的には良いレールを通っており、所々に表現したいものを現している。ただ若干きれいきれいしている所もあり、もう少しレールから外れた独自のスタイルが育っていってもいいなと思う。それは写真だけに限らず、例えば構想段階で個展のタイトルがやや教科書的だったりすると、僕が少しひねったものを考えたりもする。もちろん僕だって素人ではあるが。挨拶文もたまにカメラの機能や技法について終始する内容だったりするので、見に来る人はそんな内容を知りたいのではなく、あなたがこれを撮って何を伝えたいかを説明してみては?とアドバイスもしている。各作品における表現のポイントを僕には大変熱心に語ってくれるが、その熱意を他の人、特に写真の道を歩む人にも語りかけてみてほしい(無論言葉の問題もあると思うが)。後はどんどん新しい作品を作ってみてほしいな。いろんなものを吸収して、いずれは香港で写真文化を引っ張っていく人になっていってもらいたいな、と願っている。
個展は今年7月頃開催予定。また案内を出しますので、ぜひ宜しくお願いします!