アジアを楽しむ醍醐味として「屋台」がある。「屋台」とはその土地ならではの軽食・小料理を出す庶民向けの露店のこと。これら屋台は特にアジア地域では一つの食文化として定着しており、僕も各国で舌鼓を打ってきた。中国ではクレープのような煎餅(ジエンビン)にウイグル風シシカバブ、フィリピンでは鳥と野菜のバーベキュー、マレーシアでは串焼き「サテー」、タイではバナナを油で揚げたもの、カルムイク共和国では香菜とケチャップの混じったホットドッグ・・・。衛生が悪いからやめた方がいい、と地元の人に止められることもあるが、それでもあの出来立ての香り、ジュージューと音を立てながら何かを作っている様子を見れば否応にも足が勝手に動いていく。屋台はアジアを楽しむキーワードの一つと言っても過言ではない。

しかしよく考えてみると日本の屋台というのもアジアに負けず劣らず一つの庶民文化を形成している。昔ながらの「リヤカー」タイプの店舗や縁日に見られる折りたたみ式店舗に代わり、ワゴン車を改造した「ネオ屋台」が流行している。内容もラーメンやおでんのような仕事帰りのオッサン向けから、メロンパンやピザ、アジアンフード等個性的な料理を出す屋台も出現し始めた。一種類のメニューしか無かった屋台が複数のメニューを持つようになった。21世紀の屋台文化を求め、今回は地元吉祥寺の屋台にスポットを当ててみることにした。

<昔からの屋台>
★おでん屋・・・ 吉祥寺で最も古くから存在する。現在は ①東急の横の通り  ②伊勢丹の前 ③吉祥寺駅南口から丸井に出る細道の三箇所に存在し、いずれも夜の営業。寒い日は店舗がビニールシートに包まれる。客が全然いない時もあるが、昔ながらの常連と明け方までフラついている若者から支持を獲得。
★焼き芋屋・・・♪い~しや~きいも~、とスピーカーで流しながら通り過ぎていく軽トラ。あれも屋台と言うのだろうか。時々中道通りに車を止めて営業している。冬場の夜によく見かけたが、最近あまり見ない。

<パンの屋台!?>
屋台とはその場で軽食を調理して出す出店。しかしパンを出す屋台とはこれいかに!? パンは料理か?ま、しかしこれも最近出現した新興勢力。
★吉ぱん・・・吉祥寺の市民の間で最も人気のあるパン屋台。 ワゴンの後部車両に並べた各種菓子パンを二人の若い女性が販売する。中道通り沿いの西公園や武蔵野市役所前に出没。営業中は主婦を始めとした女性達が殺到。「昼の屋台」の代表格だ。どれも個性的で味も確かにうまいのだが、大きさの割に少し高いかも。
★クアトロおじさんの焼きたてメロンパン・・・文字通り焼きたてなのでホクホクの状態で頬張れるのが人気。丸井の横の通り (井の頭公園へ続く通り)に構えるネオ屋台。値段もあの大きさで150円は良心的。「おおきに~」と言ってパンを手渡す店員の兄ちゃん達。関西から来た店舗か?
★あげパン「給食当番」・・・中道通りの西公園に夕方頃営業していた。 フランチャイズ系のようで吉祥寺にいたのは 135号車だった。種類豊富で一個100円というのは会社帰りで小腹空いた者にはたまらない。最近見ないのだが、どうしたのだろう?ホームページ もあるのだが、一向にアップされていない。


<「たこ焼き」戦争の終結>
隠れた屋台の激戦区、吉祥寺中道通り。ここに二軒のたこ焼き屋台があった。駅側から通りに入って手前、占い屋さんの前に一軒。更に奥に進むと竹を組み立てたような店舗が一軒。
★竹組み店舗のたこ焼き屋
店員・・・学生風の男女2~3名。イケメンのたこ焼き屋さんと雑誌に紹介。
値段・・・最低4個からの販売で安かった。
味  ・・・安いのでつい多く買うが、少し飽きる味か。
オプション・・・夏場だけカキ氷を出していた。
客入り・・・ほとんどの場合客が店先に。行列を作っていることもしばしば。
対応・・・多く作っていた時などは一個サービスしてくれることも。
★占い屋前のたこ焼き屋        
店員・・・男性の時も女性の時もあり、毎回違う感じ。 
値段・・・「竹組み店舗」よりも当初は約100円高かった。途中から値下げしたが。。
味 ・・・どちらかと言えばこちらの方がうまい。  
オプション・・・途中から甘酒やチャイを出していた。
客入り・・・客が買っている光景はあまり見られず。 
対応・・・あまり熱心ではなく店舗に誰もいなかったり、読書している時も。

比較すればわかるように結果は火を見るより明らかだった。占い屋前の方も途中から値下げをしたり、たこ焼き以外のものを出し始めたり、店舗にかわいらしいヌイグルミをぶら下げたりして頑張る気配が見えてきたのもつかの間、今年の1月頃、突然店舗が消えていた。その場所に残されていたのは、店舗に飾られていたあのヌイグルミだけだった。味の面では勝っていたのでもう少し頑張ってほしかったのだが、可愛そうな結末であった。一方、竹組み店舗の方もその翌月店を閉めた。こちらは評判が良かったこともあり、屋台から料理店へと脱皮するようだ。いずれにせよ明暗を分けた二つのたこ焼き屋台。現在は二軒とも中道通りから消えていった・・・。

<変わりダネの屋台>
★ばくだん焼き ・・・丸井前の通りで上記メロンパンの屋台と並んで営業する、最も前から吉祥寺に根を張っていたネオ屋台。野球ボールぐらいのたこ焼きというイメージで、トロッとした中身には沢山の具が入っている。昼間から夕方にかけて行列が絶えない。
★Pizza la Strada ・・・ピザを出すネオ屋台。夜になると東急横に現れる。7,8種類のメニューを持ち、注文すると車内の兄ちゃんが生地を挽き始め、約五分後に焼ける。他の地域も回っているようで、最近見なくなった。

このように探してみれば吉祥寺だけで10店以上の屋台があった。季節的理由か、撤退してしまったのか、最近見かけなくなった屋台もあるこのごろだが、ぜひもっと多様な屋台が吉祥寺で活躍するようになってほしい。思うのだが吉祥寺駅北口のロータリーにある公園。普段はスケボーするヤンキーとホームレス、変な勧誘宗教団体がたむろしているだけの異様な公園。いっそのことあの公園を解体し、吉祥寺中の屋台を集め、シンガポールのホーカーズ・センターさながらの屋台村にしてしまってはどうか。吉祥寺の一大観光名所になるかも!ま、そういうことで今日は吉祥寺の屋台に関するお話でした!