しゅんぺいの『ゆるゆる古りーなー,王様と私バカよね~』しーずん2

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どこか懐かしくて、でもゆるゆる、駄菓子屋みたいなブログを目指して、なるたけ頑張ります。
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仕事で岡山にちょっくら用事があったので、久々に電車に乗った。


時間にも余裕があったので、鈍行で行くことにした。


通勤通学の時間帯は既に過ぎていたので、車内はさほど混んではいなかった。


天気もよく、ゆったりと座れたこともあり、のんびりと窓から風景が流れているのを見ていると何だかいい気分になる。


たまに乗る電車ってのもなかなか乙なもんだな~と一人、“世界の車窓から”気分を味わっていた。


頭の中で番組冒頭で流れるメロディーを思い浮かべ、窓から見える情景や駅で乗り降りする客の様子などをこれまた、頭の中だけで石丸謙二郎風にナレーションを入れてみる。(実際に声に出すとヤバいので)


頭の中でかなり盛り上がったところで、ホンモノの音楽が聞きたくなったのでカバンの中のiPodを取り出した。


イヤホンは昨日買ったばかりの新品で、音漏れの少ない耳の奥まで差し込むタイプである。


三千円もしたので、かなり音がいい。


BGM付きの日本の車窓からの風景を楽しんで、気が付けば、少々車内も混み出し、俺の隣に年の頃なら20代後半くらいの女性が座った。


紺色のスーツを着た、長めの黒髪の、いかにも賢そうなOL風で、なかなかの美形である。


あと2、3駅で倉敷かというところで、俺の前の席に座っているじいさんが急に振り返った。


じいさんは見た目、磯野波平風の、いかにも旅行者といった装いである。


波平さん、俺の方を向くなり「大原美術館に行くにはどこで降りたらいいですか?」と聞いてきた。


俺はイヤホンをしていたのと、あまりに唐突に聞かれのとで多少慌ててしまった。


そして、大原美術館は倉敷にあったか、それとも新倉敷だったかと一瞬迷った。


すると横に座っていた女性が急に「倉敷で降りたらいいですよ」と口を挟んできた。


“口を挟んできた”という表現は適切ではないかもしれない、多分彼女は親切で声をかけてくれたのだから。


だが波平さんは明らかに俺に聞いてきたし、女性は助言をした後に俺に会釈をした。


この会釈には、“道をたずねられて親切に答えてあげる役を横取りしてしまってゴメンなさい”の意味があるのに違いない。


俺は何だか自分が、ひどく役立たずなような心持ちになった。


実をいうと、駅を降りてから、大原美術館までの道順をiPhoneで調べて、波平さんにちょっと得意げに教えてあげようかと思っていたが、それもやめて、ただ「あまり詳しくなくてすみません」と2人に謝るばかりであった。


俺は何も無かったかのように振る舞いたくて、再びイヤホンを耳に突っ込んだ。


しばらくして電車は倉敷に着き、波平さんは席を立った。


波平さんは立ち上がるなり、振り返って俺の方をチラッと見た。


お礼の言葉か別れの挨拶かはわからなかったが、俺は何か言われそうな気がして思わずイヤホンを外した。


だが波平さんは俺の横の女性に「どうもありがとうごさいました」と言い、頭を下げ、俺の方は少しチラ見しただけだった。


その時女性も立ち上がり、2人して何か話しながら電車を降りていった。


多分道順でも教えてあげているのだろう。


なんとも言えぬ置いてけぼり感が俺を包み込んだ。


そう言えば、俺が学生時代、初めて上京したころ、満員電車に乗った。


俺は田舎に住んでいたので、満員電車というのも生まれて初めてだった。


その時俺の斜め前には、大人しそうな女子高生風の女の子が立っていた。


「こんな窮屈な思いをして、電車に乗らなければならない都会の女の子は大変なんだな~」と思いつつ女の子を見ると、なにやら様子がおかしい。


先ほどから、もじもじして、俺のことをチラチラ見ている。


もしや、俺を誘っているのか!?


これが大都会ならではの逆ナンパかと思いきや、髪を七三に分けたオタクっぽい男が女の子の腿やらお尻やらを撫で回しているではないか。


さらに男は、女の子の胸の方にも手を伸ばしつつあった。


悪質な痴漢である。


“そうか、この女の子は俺に助けを求めているのか”


“女の子は口では黙っているが、目で正義の味方にSOSのサインを送っている”


そう思うと俺の正義感に火がつき、このオタク男にメラメラと怒りの気持ちが沸き起こった。


この野郎!とばかりに俺は男の足を蹴りまくった。


車内は身動きが出来ないくらいに混んでいたので、俺は男の足を、小さい動きでしか蹴ることができない。


だが、俺はその頃流行っていたホーキンスのスチールキャップ付きのオデコ靴を履いていたので、蹴られた相手は相当痛いはずである。


男はたまらず女の子から離れていった。


女の子は下を向いたままである。


かわいそうに、痴漢に触られたことがよっぽどショックなんだろう。


女の子は次の駅で、何も言わずそのまま黙って降りていった。


と、その後を、さっきのオタク男が付いて、降りていくではないか。


“もしかしてストーカーか!”


すると女の子とストーカー男は、手をつないでホームを歩きだした。


“えっ?カップル!”


“2人は単にイチャイチャしてただけ!?”


“大都会では、この混んでいて、狭い電車でそんなことをするのか、誘うのか!”


なんとも言えぬ置いてけぼり感が俺を包み込んだ。






せまいの さそうから






(テーマミュージック♪)






おしまい




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