他人からみたらどうでもいいようなこと。
他人にはわからない私だけの悩み。
フッと視せんが自然と部屋の隅を見つめる。
そして 大きなため息を一つ。
そこにいるはずの奈菜がやっぱりいない。
はぁ……………。
こんな時はいつも黙って奈菜を抱き、心が静まるのを待つ。
これが今までの習慣、当たり前のことだった。
あの日奈菜が逝ってしまってからもうすぐ2ヶ月。
時間が悲しさを薄れさせてくれると期待していたが
そんな気配は一向になく、
どこでどんな犬を見てもため息ばかり。
それどころか、
ボーッとしていると幻まで見える始末。
あの毛触り、ぬくもり、重さ、匂い、眼、
どれ一つとっても褪せることなく、体が心が覚えている。
宙ぶらりんのままさ迷う気持ちを、
涙がこぼれ落ちそうになるのをこらえて、
さてどうやって落ち着かせるかとウロウロしていると
トコトコトコっと下の娘が現れた。
おっ!これか?これだ。
「ねえねえ、悪いんだけどさぁ、ママをぎゅーしてくれない?ついでに背中トントンしてよ。いつもぽぽちゃん(人形)にやるみたいにさ」
キョトンとした顔をして聞いていた娘。しかしすぐ「どや顔」になり
「いいよ。わたし、できるよ。そんなの かーんたーん!」
ぎゅー
トントン トントン トントン
お礼をいう私に驚くべき一言をいい放つ娘。
「ねえママ。奈菜がいたらよかったのにね。奈菜、どうしてママを置いていなくなっちゃったんだろうね」
途端に涙が溢れて止まらない。
子供の前では絶対に泣くものか。と決めているのに、
ピュアな子供の言葉が胸にしみてしみて仕方ない。
見透かされている。
恐るべし年長児。
そんな娘に少しだけ癒された夏の朝。
