「人生つらくなったら観よ」とのことで親から送られてきたこの作品。

考査もあらかた終わり、現在二徹中の私だが、観るなら今っきゃないということで鑑賞。

 

まずクリスマステイストで始まり、東京ゴッドファーザーズや34丁目の奇跡など私が好きなクリスマスを主題とした作品かと思いわくわくしたが、終盤まで白いひげのおじいさんが出てくることもなく神と天使が出てくるだけにとどまっており、若干の拍子抜け感があったのだが、これがまた素晴らしく良かった。

 

二徹が作用してか、私の琴線がむき出しになっており、ラストでは嗚咽泣きしてしまった。

人生のすばらしさ、人とのかかわり、これらが映画で描かれることは多いのだが、人とのかかわりをここまで強調された映画も少ないだろう。

 

少年時代に弟を救った時に失った片耳の聴覚も、薬屋でのアルバイトも、メアリーとの出会いも、世界へとはばたく夢が潰えてしまったことも辛くて苦しいことでもあり、裏返しでそれらが影響したことの大きさも彼の人生を形作る大事なエッセンスであった。すべてはバタフライエフェクトとして彼の人生をより重層的にしていった。

 

彼は預金の8000ドルを失ったことで自暴自棄になり、彼を救うためにやってきた天使に、生まれなければよかった、とつぶやくのだが、彼の人生において自暴自棄になってしまうような出来事はいくつもあるのだ。聴覚にしても取り付け騒ぎにしてもなぜ死のうと思わなかったのか。思えば、その時、彼の隣にはずっとメアリーの存在があった。しかし、8000ドルを紛失したとき、自分で何とかしようとメアリーには伝えずにいた。つまり、それだけ彼にとってメアリーの存在は大きく、落ち着ける場所だった。

 

生まれなければよかった、そうつぶやくと天使は世界を彼が存在しなかった世界に書き換えた。これもよく使われる手法だが、ジョージ一人がいなくなったことで世界から一匹の蝶が消えたことで街と人々が変わってしまったのも、彼が街と人々にしたこと、人々の中での彼の重要性というのが強烈に描かれていた。ここまでくれば、私もジョージと一緒に元の世界での何気ないように描かれた豊潤な幸福な日々がフラッシュバックし、後悔と絶望があふれてくるのを身をもってひしひしと感じることができたのである。個人的にはガウアーさんがすごい好きだった。

 

ラストで天使が残した言葉、「Dear,George.Remember no man is a failure who has friends.

Thanks for the wings.」とともに、クリスマスの小さな奇跡によって人々とメアリーたち家族の人生もまた動き出したのである。

 

人生は一人に一つの特別な物語である。何気ない日々も素晴らしい宝物であり、いやなことも、裏返せば自分の大切な何かにきっとつながっているのである。

 

It's a wonderful life!