3年前の話。
よんちゃんが亡くなってしばらく経ったころ。
私は、玄関先で遊ぶ娘たちの様子を眺めていました。
娘たちはとても楽しそうだった。
私は軽く微笑んでいたけど。
心は空っぽだった。
ぼーっと。
玄関先に座って、その光景を眺めていた。
だけ。
その時。
私の存在に気付いた近所の方が、
あら、赤ちゃん生まれたのね。
家の中にいるのかしら。
と、声をかけてきました。
私が、
実は赤ちゃん、亡くなってしまって。
と答えると、その方は、
そうだったのね。
それは大変だったね。
とかなんとか声をかけてくれて(この辺はさすがにうろ覚え)、その場を立ち去っていきました。
それから数分後。
また、その方が我が家を訪ねてきました。
その手には、家の中にあったものをとりあえず見繕ったのだろうと思われるお菓子の袋がありました。
年配のご夫婦二人暮らしだから。
茶菓子みたいな。
それと水羊羹。
だったと思う。
そしてその方は私に、
実はね。
うちの娘もひとり赤ちゃんを亡くしているのよ。
生後7か月だったんだけどね。
そう言って、娘たちにお菓子を渡し、私に対して、
うちの娘も元気になったから。
あなたも立ち直ってね。
そう言って、また、帰宅されたことを覚えています。
それから3年。
私は、また、妊娠して。
今度は無事、出産に至った。
そして今回の産後、その方とゆっくりお話をする機会がありました。
その中で、亡くなったお孫さんのお話を聞かせてくれました。
お孫さんは生後7か月で亡くなったこと。
娘さんの希望で解剖までしたが、原因は不明であったこと。
等を教えてくれました。
3年前のあの時は、私も、人の話に耳を傾ける余裕もなかった。
相手の方も、私にかける言葉が見つからなかったと思う。
だから、そんな話も、今になってやっと、できたんだと思う。
でも、この話を私にしたのは、やっぱり、よんちゃんの事を覚えていてくれたからこそだろうし、その方なりに、娘さんが私にとっての道しるべじゃないけど、きっと、少しずつ癒えていくから大丈夫だよと伝えたくて話してくれたのだろうと思うと、やっぱり、嬉しかった。
亡くなったお孫さんは第一子だったようで、その後、娘夫婦はふたりのお子さんを授かったそうです。
その方は、後に生まれたふたりのお孫さんの写真を持ってきてくれ、
ひとり目が亡くなってから、しばらくは妊娠しなくてね。
でも、あの子が生きていたら、この子達は生まれてないかもしれない。
何が良かったのか、分からないけれど。
亡くなった孫は、突然死だったから。
葬儀もしたけど、娘は酷く落ち込んでいて。
もう、気が狂ってしまうのではないかと思ったけど。
ちゃんと立ち直ったわね。
でもね、娘婿は亡くなった孫の名前を、次の子に名付けようとしていてね。
それはさすがに止めたのよ。
等と話してくれました。
私も実母に言われた。
あなたがよんちゃんを思うように。
私も、自分の子であるあなたの事を、大事に思っている。
と。
きっと、うちの母も本心はいろんなことを思っているのだろうな。
親だからこそ、逆に言えないこともあると思う。
だから、この方のお話を聞けて、なんだかとてもよかった。
それと、亡くなった子の名前をつけたくなる気持ち。
私はちょっと分かる。
あんなに一生懸命に考えた名前。
人前で呼んで、感じたかった。
実際、うちも、よんちゃんから一字貰おうか迷った。
でも、夫と話して「生まれてくる子に背負わせるのは違うね。」という結論に至り、選ばなかった。
世の中には、私たちが知らないだけで、本当はもっとたくさんの天使たちがいるのかも知れない。
お空に帰った子。
地上で生きている子。
どちらの存在も尊くて。
どちらの存在もあったからこその「今」なのだろう。
お空に帰った可愛い子たちに、私たちが直接、何かをすることはできないけれど。
今生きている、子ども達とは確かに何かしらの繋がりがあって。
7歳になった長女が話していた。
きっとさ、よんちゃんと赤ちゃん。
お空で話していたんだろね。
よんちゃんがさ、
僕の代わりにあの家行きなよ。
って。
手を引っ張って。えいって。
子ども達の話には、いつもハッとさせられる。
温かい気持ちにもなる。
でもやっぱり、お別れは寂しいね。
ブログに書いているうち、涙が出てくる。
今を生き続ける限り、悲しみは消えない。
よんちゃんも居たらな。
もっともっと、楽しかっただろうな。
でもそうなると、この子は居なかったかもしれなくて。
よんちゃんの存在は、この子にとっては不可欠で。
人生って、何なんだろうな。
奇跡とかいう言葉、嫌いだな。
淡々と「今」を見つめて。
その背景にある存在に思いを馳せて。
これからも思い続けるよ。
よんちゃん。
あなたが居たから、今がある。
赤ちゃんの存在もそうだし。
私自身も、「今の私」ではなかっただろう。
だから、今をちゃんと、大事に生きていかなくちゃね。
それがきっと、よんちゃんが生きた証になるのかな。
これからもずっと、お空で見守っていてね。