もうすぐ、僕は、7年前の生活に戻ろうとしている。
わけあって、そういうことになりそうだ。
一見、何も変わらないものに、帰っていくようだが、
以前とは、明らかに違うものがある。
まず、登場人物が、僕を含め、全員7歳だけ齢をとっていること。
それから、僕の心の中には、
7年前にはまるで想像もできなかった、君がいるということ。
当時には、その存在さえ、予感できなかったのに、
今では、この僕の存在のほとんどすべてを占めている。
たぶん、もう昔の自分には戻れない。
それがはっきりとわかっているのに、そうしようとしているのは、
君の自由をこれ以上奪いたくない僕と、
僕にそうした方がいいと言う君の、
2人の、強がりのせいだ。
今後、一生、後悔し続けるのもわかっているし、
もし、今、自分が元の生活に戻ることを選択しなかったとしても、
君のことを幸せにできないってことも、わかってる。
自分の地位も、名誉も、財産も、たとえすべて捨てたとしても、
どうにもならないことがあるって、わかる人間が、果たしてどれだけいるだろうか。
君とは、何度だって、このことを話したよね。
でも、僕は一回だけ、不覚にも君の前で、嗚咽をあげて、
涙をこぼしたことがあった。そんなことも、今では懐かしい。
僕は空を見上げる。
「まだ、君とはつながってるよね。」そう、自分に強く言い聞かせる。
雨上がりの、どんよりとした空は何も答えてはくれない。
でも、僕は、君を好きになった自分に誇りを持っている。
並んで歩く時、まだ、僕の手を握ろうとしてくる小さな男の子が、
やがて、少年になり、青年となって、一人の女性を愛し始めた時、
僕は彼にこう言うだろう。やっぱり空を見つめながら。
「お父さんの一生で一番好きなひとの話をしてあげようか?どこから聞きたい?」