28. リスニング スキル その1 ( 2005年11月13日 )
チームワーク研修を中心に最近の研修では
5つの傾聴スキル( SYP傾聴 )を紹介することが増えました。
私たちは都合のいいように聞き、都合のいいように解釈しています。
その結果、相手の質問や要求に適切に答えていないことがあります。
人によっては、こちらが訊いてもいないことを、ダラダラとしゃべり続けます。
その代表例が正当化です。
私たちは何かを伝えるためだけでなく
何かを隠したり、ごまかしたりするときにも言葉を使います。
朝日新聞 指先からソーダ 山崎ナオコーラ ( 作家 )
すてきな不動産屋さん
20代後半になって、やっと実家を出る決心をした。
いろいろな不動産屋さんに行って、たくさんの部屋の内見をした。
しかし臆病な私は、なかなか部屋を決めることができない。
「ここの道は夜になると怖いのではないか」
「オートロックのマンションの方が良いのではないか」
そんな不安ばかりが頭に浮かび、だいたい良さそうなところを見ても、
マイナス要素を必ず発見してしまう。
そして、1年間も部屋探しを続けた。
私は最初に必ず「セキュリティーを一番重視してます」と言っていた。
でも紹介してもらえるのは、ちょっと違う部屋になってしまう。
私の「セキュリティー」というものに対する観念が曖昧なせいかもしれない。
不動産屋さんは「ここはキレイですよ」「女の子に人気です」
「バストイレ別で‥‥」というようなことしか言わないのだ。
旅行好きの私は、東南アジアの汚い安宿でも平気で泊まれる。
東京でも、そういう部屋で構わないと思っていた。
ただ、東京では夜道が怖い。
だから、重厚な門や、鍵が二つかかるドアの中で、安心したかった。
いろいろな不動産屋さんがいるが、たいていの方が、喋りが上手だ。
ペラペラと説明してくれる。しかしそうすると、私はうまく喋れなくなってしまう。
しかも私は20代後半で、体格はしっかりしているし、顔は可愛いわけではない。
「女のひとり暮らしは怖い」と私が言うと滑稽では?と思っていた。
「怖い」とは、相談しにくい。
しかし見た目で判断しないでもらいたい。
極度の怖がりなのだ。やっぱり、相談したい。
最後の不動産屋さんは、ペ・ヨンジュン風のメガネをかけた、
私より2、3歳上に見える男の人だった。
私の「ひとり暮らしは怖い」話を、じっくりと聞いてくれた。
話し上手より、聞き上手な人こそが、本当の営業上手なんだ、と私は思った。
「一般的なことではなくて、自分にとっての『怖くないポイント』があるはずですよね」
といろいろと考えてくれた。
大家さんが隣というのは?ホテル風はどうですか?など。
そして私は今、隣の隣が交番の、安心できる部屋に住んでいる。
チームワーク研修を中心に最近の研修では
5つの傾聴スキル( SYP傾聴 )を紹介することが増えました。
私たちは都合のいいように聞き、都合のいいように解釈しています。
その結果、相手の質問や要求に適切に答えていないことがあります。
人によっては、こちらが訊いてもいないことを、ダラダラとしゃべり続けます。
その代表例が正当化です。
私たちは何かを伝えるためだけでなく
何かを隠したり、ごまかしたりするときにも言葉を使います。
朝日新聞 指先からソーダ 山崎ナオコーラ ( 作家 )
すてきな不動産屋さん
20代後半になって、やっと実家を出る決心をした。
いろいろな不動産屋さんに行って、たくさんの部屋の内見をした。
しかし臆病な私は、なかなか部屋を決めることができない。
「ここの道は夜になると怖いのではないか」
「オートロックのマンションの方が良いのではないか」
そんな不安ばかりが頭に浮かび、だいたい良さそうなところを見ても、
マイナス要素を必ず発見してしまう。
そして、1年間も部屋探しを続けた。
私は最初に必ず「セキュリティーを一番重視してます」と言っていた。
でも紹介してもらえるのは、ちょっと違う部屋になってしまう。
私の「セキュリティー」というものに対する観念が曖昧なせいかもしれない。
不動産屋さんは「ここはキレイですよ」「女の子に人気です」
「バストイレ別で‥‥」というようなことしか言わないのだ。
旅行好きの私は、東南アジアの汚い安宿でも平気で泊まれる。
東京でも、そういう部屋で構わないと思っていた。
ただ、東京では夜道が怖い。
だから、重厚な門や、鍵が二つかかるドアの中で、安心したかった。
いろいろな不動産屋さんがいるが、たいていの方が、喋りが上手だ。
ペラペラと説明してくれる。しかしそうすると、私はうまく喋れなくなってしまう。
しかも私は20代後半で、体格はしっかりしているし、顔は可愛いわけではない。
「女のひとり暮らしは怖い」と私が言うと滑稽では?と思っていた。
「怖い」とは、相談しにくい。
しかし見た目で判断しないでもらいたい。
極度の怖がりなのだ。やっぱり、相談したい。
最後の不動産屋さんは、ペ・ヨンジュン風のメガネをかけた、
私より2、3歳上に見える男の人だった。
私の「ひとり暮らしは怖い」話を、じっくりと聞いてくれた。
話し上手より、聞き上手な人こそが、本当の営業上手なんだ、と私は思った。
「一般的なことではなくて、自分にとっての『怖くないポイント』があるはずですよね」
といろいろと考えてくれた。
大家さんが隣というのは?ホテル風はどうですか?など。
そして私は今、隣の隣が交番の、安心できる部屋に住んでいる。