大阪府の郊外にある◯◯◯◯駅。
少し古いが、駅の周囲は自然も少し見られ、味わい深い小さな町といったところか。
入場券を買い、中に入り、改札口からあまり距離の無いホームへ向かう。
平日の午後2時~3時のホーム、狙い通り人は少ない。
これをやるにはもってこいの時間だ。
少し歩いては立ち止まり、目を閉じてボーっと(私独特の集中)しながら周囲に耳を傾ける。なかなか上手くいかない。
だがしばらく繰り返すと、何やら微かに聞こえてきた。
"ガサガサッブツッ・・・ガサガサッ"
かなり集中しないと聞こえない、古いテレビのノイズの様な音。
近いか?とりあえず声のする方へ向かい、真近くであろう所まで行く。
黄色の線の手前なので、線路からは少し離れてはいるが、何度も
「大丈夫ですか?」
と声を掛けてみる。
誰も居ないホームで線路に向かってオッサンが1人、何かを繰り返し呟いている姿は、他人から見れば明らかに不審者のソレだろう。だから人の少なく、電車が来ない時間を選ばなければならないのだ。
何度か繰り返していると、
?「・・・・・(寝起きの様なムニャムニャ(?)した声)」
私「大丈夫ですか?」「大丈夫ですか!?」
駅ではかなり久し振りの成功だ!電車や人がが来ればやり直しだし、それが続けば人が増える時間になってくるので、駅での成功例は本当に低い。だから無意識に少し興奮気味になる。
Aさん(本名不明、以降A)
A「え?え?え?は、はい?」
若い女性、10代~30代といったところか?
私「すいません、起こしてしまいました!」
A「寝てたんですか?」
私「そう、ですね。」
A「ここ、どこですか?」
私「ここの事ですか?そうですね、言いにくいですが、あなたはお亡くなりになってます。薄々御存じかと思いますが。ここは◯◯◯◯駅のホームです。」
限られた時間は短い。
私は手短に状況を把握してもらいたい焦りで、残酷な現実を突き付けてしまった。
A「・・・はい。あぁやっぱり。じゃあ、あの、幽霊さんですか?」
私「私は生きた人間です。」
A「私が幽霊なんですね。」
私「そうですね。」
A「あの、何でしょう?」
私「混乱してますよね、ごめんなさい。実は単純にお話が聞きたくて伺いました。お答え出来るだけで構いませんので、質問に答えていただいたら嬉しいです。」
A「はぁ。」
私「何があったのかは分かりませんが、今はもうあなたを縛るものは何もないので、気持ちを楽にしてください。」
A「・・・はい。」
私「では単刀直入にお聞きしますが、あなたは何故自らこう、なんというか選んだのですか?」
A「答えたくないです・・・。」
私「ですよね。実は私、小声で喋ってるの、分かります?周りから見たら1人でブツブツ言ってるオッサンなんで結構不審者系なんです(笑)」
会話下手な私が振り絞った言葉だ(汗)。
A「そうなんですか・・・。」
私「(眠そうだな)今回はありがとうございました。楽しかったです。」
A「はい・・・お父さんとお母さんに謝らんと・・・。」
彼女は親不孝を自覚してしているのだろう。
私「もう許してると思うから安心してエエよ。」
小さく消えていく声に、気休めにしかならない、いい加減な言葉が私の口から勝手に出てくる。
その言葉が彼女に届いたのかどうかも分からないが。
~終了~
ある程度長い年月存在している駅には高確率で居るのは間違いない。
向こうからは私が見聞き出来る様だが、私からは声しか聞こえない。これはいつも通りだ。
しかし睡魔?による制限時間(?)もあるみたいだし、僅かな時間で色々聞き出すのは本当に難しい。
しがらみは無いだろうけど、自ら終わりを選んだ理由は他人に話したくないという心理を持つ事も当然といえば当然だから、真相はほとんど聞けない事が大半だ。
あと彼女との会話中、他の姿の見えない何人かが呟いている声が聞こえた。
その人達が私に気付いているのかは不明。
こちらから近付いて意識すれば認識されるのか?
でもこの人達同士はお互いに認識は出来ていないみたいだ。
やはりここも過去には何人かが自らを終わらせた過去があるのだ。
私は駅から外に出て、振り返り駅舎をしばらく眺めた。