「はーい」
(誰だ?こんな夜中に。今日は外交官の仕事で疲れてるのに)
僕がドアを開けると、黒い細長い男がふたり僕の家の中に入ってきた。
「なんですか? あなた方」
不愉快に思いながらもなるべく丁寧に言った。
「いやあ、すいません。実は私達α星の、あなたたちからすると外宇宙の宇宙人なんですが、ようやくこちらの星にたどり着くことができましてね。よろしければできうる限りの情報交換と友好を結びたいのですよ」
「はあ」
(そういえばそこの角に精神病院があったっけな。患者と話したことはなかったがこんな感じなのか)
「勉強になるな」
「そうですねえ、なにごとも勉強ですよね」
おっととりあえず笑顔でも作っとくか。
ニッコリと得意の営業スマイルを浮かべる。
「おっとコチラの本は?」
(あ、やべっ。捨てるつもりだったエロ雑誌の束)
「はは、もう何度も読んだんで、よろしければ持っていってください」
「しかしお見受けしたところ、生態上かなり貴重な本。ではないですかな」
(どこまで芝居ごっこを続けるつもりなんだ?)
「まあ、貴重な人には貴重なんでしょうけど、情報交換の為にも、どうぞ差し上げますよ」
「これはご親切に。ではありがたく」
重々しくエロ雑誌を受け取る。
こんな調子で小一時間、僕らは雑談を続けた。
「いやあ、地球のお方がこんなにも朗らかで、優しく、親切で気前がよろしかったとは。嬉しい限りです」
「はは、そんなに喜んで頂けるとは、私も嬉しい限りです」
(はやく帰れよ。いなくなったらすぐにお前等の病院に電話しないといけないんだ)
「最後に、この「心」のデータを読み取る機械であなたの心を探らせてもらってもよろしいか?」
「はは、結構ですよ。なんです? 疑っておられるので?」
「いやいや、どんなきれいな心をしておられるのか、しっかり数値にして計測しておきたいだけですよ。はは。」
宇宙人と名乗る、精神病院から抜け出た男ふたりは、手早く怪しげなガラクタで、僕の腕からなにかを測るお芝居を終えると、礼を言って出て行った。
3週間後
テレビでは連日、突如現れた異星人の団体と地球連合軍との宇宙戦争が繰り広げられていた。
なんでも地球人、生きる価値無しと向こうさんは判断したらしい。
「ったく、どこのどいつだ。コンタクトに失敗しやがったのは。地球人の醜さはできるだけ隠して、情とか、愛とか、いい部分を上手く使って接触をはかるべきなんだよ。外交官の俺ならうまくやったのに。全く、恐るべきは馬鹿な人間の無知なることだな」
やれやれとため息をついて、俺は忙しくなった仕事に出かけるために、少し不機嫌でいつもの部屋を出た。
終わり