「男とイブに行きたい所なんてないんだけどな・・」
取りあえず店を出て地図を覗いてみることにした
俺の住む町よりは小さい町なので、ある程度把握するには容易く
それだけに気付くのも早かった
「この町・・教会もあんのか」
途端に見た夢を全て思い出した
病院で寝たきりだった役半年間、青空を眺める夢を見た
外に出ると決めた日の夜、知らない教会の夢を見た
そこには、知らない女の子がいた
そして、
その女の子は誰かに向かって呼びかけていたのだ
「わけわかんねぇ・・」
「俺はお前が分かんないぞ」
社が会計を済ませて出てきた
「お前だけには言われたくない・・」
坂を上ってきた疲れとは異なる疲労が
コイツやあの女と話すと生まれてくる気がする
他にも得体の知れない疲労が俺の体を蝕んでゆく気がした
もしかしたらこの変な夢のせいかもしれない
きっと俺は、訳分からない物拒絶症(アレルギー)なのだろう
そして
「神崎」
「なんだ?」
「お得意の毒舌が甘いぞ」
もはや手遅れなのだ
「わけわかんねぇ・・」
「どうした、元気ないぞ?」
「お蔭様でな」
「俺のせいかよっ」
「冗談だ」
実際、今日はもう俺の体が限界らしい
「真面目に毒舌が甘いぞ」
「・・・」
「いやスマン、真面目に顔が青いぞ」
こいつの真面目とは一体・・などと考える気力も失せてきた
「本当か、そろそろ死ぬかもな」
「縁起でもないこと言うなよ・・。辛いならそろそろ帰るか?」
イブだからといって、外出初日でこれ以上動くのは辛い
そもそもコイツと居る時点で身が持たないのかもしれない
「ああ、そうさせて貰う」
「独りで帰れるか?」
「ああ、最悪タクシーか救急車でも拾うから安心しろ」
「・・できるだけタクシーにしてくれ」
「救急車も便利じゃないか」
なんせ俺の帰る先は病院だからだ
「俺と一緒だった奴が救急車に重態で運ばれました、なんてなったら軽く落ち込むぜ」
「俺を誘った時点で間違いだったな」
「そんなことないぜ、楽しかったぞ」
「ふん・・」
「ま、残念なことに俺は家が反対なんでな、気をつけて帰ってくれよ?」
むしろ嬉しい・・などとは本人の前では言わないでおこう
「ああ、ありがとな」
「あ!」
「なんだよ」
最後まで騒がしいヤツだ
別れまで普通にできないのだろうか
「神崎ケイタイもってるか?」
「あるよ」
「連絡先教えてくれ!」
「無理」
「なんでだよっ」
「イタズラ防止だ」
「俺はそんな扱いかよ!」
「ま、そんなところだ」
携帯なんて使ってたら余計疲れてしまう
ああいう画面を見つめるものは苦手なのだ
「あのなぁ~冷たすぎやしないか?それじゃ友達なんてできないぜ?」
確かに俺は元々が少ない上、入院をしていたので遊ぶ友達などほとんどいなかった
「生憎友達には困ってないんでね」
だがそれ以前に、今は病院に居る事が多いので特別必要ではなかった
「神崎く~ん」
「よせ、気色わるぃ」
「お~し~え~て~」
「殺すぞ・・」
「じゃあ殺される前に教えてちょーだい♪」
コイツは教えないと帰ってくれないタチとみて、俺は諦めた
「ああ、分かったからその口調やめろ」
「お!さすが神崎くん、やっさし~い」
「・・一つ条件だ。破ったら即着拒設定してやる」
「なになに?」
「簡単だ、余計なメール及び電話はするんじゃねぇ」
「余計ってなんだ。どっからダメなんだ?」
「お前の小さな頭で俺が着拒しないと思う内容を考えろ」
教えたら、社はさっさと帰っていった
「ありがとな!んじゃまたそのうち!」
「ああ」
「じゃな~!」
「じゃあな」
最後はなんであんなに元気だったのだろうか
俺には元気になれるほどのことがあったとは思えない
社とした事と言えば、ゲーセン行って間食に付き合わされただけだ
何故あいつが俺を誘ったのか
何故俺はついていってしまったのか
思うことは多いが、後悔しても疲れるだけなことくらい分かっていた
「さて・・、本当に救急車拾うことになる前に俺も帰らねぇと・・」
来たであろう道を戻り、俺は病院へと帰った
