ザザー、ガチャ
「ふう、悪い悪い、おまた・・・ゲッ!」
剣進はすぐに薫がオシッコを漏らしているのに気付いた。
「なんで・・・・なんであと少し早く出てこねーんだよ!」
薫は、半泣きになりながら剣進に怒った。
「そ、そんなこと言ったって仕方ないだろ、オイラだってなかなか治らなかったんだから」
「だからかき氷食い過ぎなんだよ」
「別にトイレの前で待ってないで、庭で立ちションすればよかったのに」
「人の家でそんなことできるわけねーだろ」
「意外と神経質なんだな」
「どうすんだよこれ」
薫はガニ股になってハーフパンツの端っこを外側に引っ張った。
「う~ん・・・よし、とりあえずオイラの服を貸してやるよ」
「剣の服って、まさかその短パンにタンクトップ、そして白ブリーフか?」
「何だよ!」
「まあいっか、外に出なければ誰にも見られないし」
「何だよそれ、せっかくオイラが悪かったと思って親切に言ってやってるのに」
剣進は少し不機嫌になった。
「ああ、わりぃ」
「まったく」
「ところで、ズボンとパンツはどうすんだ、まさかこのまま持って帰れって言うんじゃ」
「心配するな、オイラが洗濯してやるよ」
「剣が?」
「こう見えてもオイラ、母ちゃんに洗濯とか手伝わされてるから、洗濯機だって使えるん
だぞ」
「へぇ、剣がねぇ」
「母ちゃんが、将来結婚したら家事くらい出来ないとダメだって言うんだ、まあオイラが
トムと結婚したら役立つし」
剣進は顔を赤くして照れながら言った。
「こいつ・・」
「さ、早く脱げ」
「あのさ」
「何だ?」
「オレだけ下半身全裸になるのか?」
「当たり前だろ、オイラがなってどうするんだよ」
「そりゃそうだけど・・・・」
「いいから早くしろよ」
「・・・分かった」
薫は渋々剣進の前でパンツとズボンを脱いだ。
「プッ、相変わらず小さな」
剣進は、薫の一物を見て笑った。
「何言ってんだよ、お前の方が小さいだろうが!」
「何だと!」
「で、まさかズボンとパンツを直接洗濯機に入れるのか?」
「そんなわけないだろ、まずは手で洗ってからだ」
「ふ~ん」
「オイラがオシッコ漏らしたときも、確か母ちゃんがそうして・・・」
「は?」
「あ、いや、今の嘘」
剣進は大慌てで否定した。廊下の水溜りを、剣進がササッと掃除した。
ジャアアア
薫はシャワーで汚れた下半身を洗い流した。一方剣進は薫の汚れたパンツとズボン
を手洗いしてから洗濯機を使った。
薫は下半身にバスタオルを巻いて、剣進が服を用意してくれるのを待っていた。
「ほら」
薫の予想通りに、紺色の短い半ズボン・青いタンクトップ・白いブリーフの三点セット
が手渡された。
「はぁ」
薫は思わずため息をついてしまった。
「何だよそのため息は」
「だって、今時白ブリーフに短パンって・・・」
「文句あるならそのまま帰れよ」
剣進はまた不機嫌になってしまった。
「ああ、悪い」
薫は謝ると、幼稚園のとき以来の白いブリーフを履いた。
「何年ぶりかな、白いブリーフって」
「薫、結構似合うぞ」
「からかうなよ」
「ニシシ・・・・」
剣進は笑顔になった。そして短い半ズボンにタンクトップ、剣進と全く同じ格好になっ
た。正にその姿は兄弟そのものだった。
「う~ん、オイラと同じ格好してる奴を見るのって不思議だな」
「オレだってまさかこんな格好するなんて思わなかったよ」
『フフッ、ハハハハ』
二人はお互いに笑顔になって笑い出した。
「ただいまー」
玄関の方から剣進の母親の声が聞こえる。
「あら、薫君来てるの?」
剣進母は、靴を見て薫が遊びに来ているのに気付いた。
「おじゃましてます」
剣進と一緒に出迎えに来た薫を見て、剣進母は思わず言った。
「あら、どうしたの薫君、剣ちゃんと同じ服着て」
「あ、これは・・・その・・・き、気分転換です」
「そうなの、二人共おんなじ服着て、双子の兄弟みたいね」
『ええー』
「オイラ薫と双子なんて嫌だ、トムならいいけど」
「オレだって嫌だよ」
それを見た剣進母は可笑しくなってしまった。
「やっぱり仲良しね、二人は」
「もう、母ちゃんは」
「そうそう、ケーキ買ってきたから皆で食べましょう」
『ケーキ、やったー』
剣進と薫、二人の反応は全く同じで息がピッタリだった。
しかし、この直後に台所に出しっぱなしになっていたかき氷の機械やシロップで、
こっそりかき氷を食べたのがバレてしまったのだった。