PASSPO☆が、どうやらサイコロの目を決めたようだ。

…なんて書き始めても、ここから歪んだ見方によるかっこいい評論文なんて綴れやしない。
村松友視『ダーティ・ヒロイズム宣言』の「戦争と芸術をシェイクしたタイガー・カクテル」書き出しからパクった(PASSPO☆風に言えば「パロディー」?しかし茶化すつもりも何もないから「オマージュ」としたい)のだが、もちろん当記事はタイガー・ジェット・シンともプロレスともなにも関係がない。

ちなみに僕はプロレスは全然見ないし、シンの全盛期には生まれてすらいなかったのだが、親父の本棚に転がっていたこの一冊のせいで、やたらと凄いプロレスラーなんだとすりこまれてしまっているし、妙に気取ってひねくれて物事を語りたくなる性分も多分に養われた気もする。

そんなことはどうでもいい。
PASSPO☆が、どうやらサイコロの目を決めたようだ。

・PASSPO☆ワンマンフライトツアー2015~More Attention~@柏PALOOZA、HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2

エース・奥仲麻琴の卒業から2ヶ月、8人体制での初ワンマン。
8人フォーメーションへの組み直し、ニューアルバムからの新曲、そんなものが積み重なって、始まる前の1週間は実にギリギリで詰め詰めの急仕上げ、その期間中のネット番組は注意散漫、疲労している様子も見て取れて。

アメリカンガールズロックを極めるんだ、と。
こういうお題目を出す時のPASSPO☆さんってのは、これまでの経験上、だいたいずっこけるパターンが多くて。
で、PASSPO☆青春白書、なんて言って。またあの甘ったるい寸劇が帰ってくるのかなあ、なんて思っていて。
正直、さほど期待していなくて。というか、劇的に変わるとは思っていなくて。

裏切られて。

まず柏。

黒柳徹子こと安斉奈緒美の妙な影ナレ。
暗転しないオープニングSE(もっとも、宇都宮ではちゃんと暗転していたけれど)と、飛行機というよりはロケットを想起させるカウントダウン。
そして、アメリカのファミレスのウェイトレス、かつクロアチアな柄の新衣装をまとって現れるクルー、強めの曲を立て続けに放って、始まりの御挨拶。

そこからまた奈緒美のアメリカドラマ気取りのナレーション。
つまり青春白書。
完全に設定が、かつてのチアダンス寸劇。
正直、PASSPO☆のとは異質のダンスを本気で踊るさこ杏、ここにしか興味がなかったので、まあ始まりは憂鬱だったけれど。

ねぎちゃんを主役にして、ちょっとしたドラマ仕立てではあったけれど、テンポよく曲を挟んでくるので、さほど退屈にもならず。
完全に声は別録で、身振り手振りだけやっていたのはつまりアメリカドラマよろしく吹き替え調ということだろうけれど、それがよかったのか、表情もやたら生き生きしていて、可愛く。
…ってプラスイメージで捉えたのは、ようやく慣れてきた2部からだったけれど。

れりごー、チアアレンジだったんだよね。
これが決意表明かなあ、って思った。
れりごー、すべての始まりの曲、大切な曲、それこそ古い人たちの中じゃあ、プリライよりもさらに切り札だったり、するんだよね。
その曲を、振りも変えて、サビにラインダンスも入れて、チアテイストをたっぷり加えて。

受け入れない人も中にはいるんじゃないかなあって思ったけれど。
それでも、私たちはあめりかんがーるずろっくをやっていくんだっ!という、気持ちがとてもよく感じられたんだよね。

MCで、杏ちゃんが「性に開放的な云々」とか言っていたっけね。備忘メモ。

その後、コズミックからバラードへ流して、ユニット。
しゃんしゃんは新兵器、ファンベール(扇子に長い薄布をつけたようなもの)を投入して、中村インディア振付で。
まあ、どうなんだろう、生かし切れていない気もしたし、もっと大胆に、全面的にベールがひらひらするように改造してもいいんじゃないかとは思ったけれど。
はっちゃけは語ることなし。

また強めの曲で飛ばして。
だいたい強いこの日の1部は、これもまた最初だからかなあ、決意の表れかなあなんて思ったのだけれど。

新曲、Honey Dish。
竹中センセが騒いでた、ラブダ・くちゃの流れに乗る曲、そしてキャンディー・ルームあたりの流れをさらに進化させた、こてこてのキラキラアメリカンガールズロック。
思えばね、GPPやプリライのころから、ずっと開場前にアヴリルかけて、ずっと憧れてきた路線なんだものね。

キラキラの曲と、チアぶち込んだ、かつ歌詞がすぐ体にしみこむように理解できる(これは竹中センセの特性だと思う)、そしてキラキラの振り付けで、正統PASSPO☆に戻ってきた、アイドルになって帰ってきたPASSPO☆、そういう感じ。
うっわかわいい、そういう感じ。

これがニューアルバムのリード曲になるのかな。対バンで出しても受けが良さそう。キラーチューン。
そして、力任せでも格好良さの追求でもない、PASSPO☆の王道というもの、PASSPO☆が進んで行きたい方向、自分たちはこうなるんだぞという青写真、それがこの1曲に凝縮されているように思える。
この曲が好きになれればPASSPO☆はその人に合うし、これがダメならたぶん合わない、そんな1曲。

2部は1部に比べてなにもかもこなれてきたかな、そういう感じ。
青春白書のネガティブ槙田さんは可愛かったです、はい。

宇都宮も…
あ、まず、餃子の2大名店、みんみんと正嗣に行きました。
個人的には正嗣のほうが好きだったかな。あまりに行列が長かったから持ち帰りにしたのだけれど、多少覚めても圧倒的に美味い皮と、タレ要らずの味のしっかりしたあん。
今回も、あと宇味家含めて3軒30個、ごちそうさまでした。

で。
セトリとしては似たりよったり、強めの曲が多かったんだよね。8人で出来る曲がまだ限られているというか、受けのいい曲を中心に先に練習して行ったせいだろうよね。

この日は総じてマイクの調子が悪く。
なっちゃんなんか声がほとんど聞こえないようだったのだけれど、本人ののどの調子も悪かったりしたのかしらん。右側の首のあたりに、エレキバンの親戚みたいな小さな円形の肌色テープ、数枚貼っていたのが気になった。

柏で2部こなしてからの宇都宮、柏に比べると下もフラットで視野もせまく、だから目の前ばかり見ていたのだけれど。
青春白書もだいぶ心地よくなってきて、素直にかわいいなあ思いながらのんびり見ていて、で、PSになって、なんかもう泣くんじゃないかなあ、って突然思ったのね。

なんでなんだろうね。いつだってこうやって泣く場所探してる、なんて気がしながら、1番は誰見てたんだっけ、2番は杏ちゃんがやっぱりこの曲でも滑らかに柔らかく踊っているのを見て、何かとても泣きたくなって。
で、落ちサビあけからは、逆にやたらかっちりフリコピして。
僕もパッセン5年目になって、ふと気を抜くと、曲ごとに思い出が襲いかかってくる瞬間が、あるんだろうね。PSは時々、噴水広場、思い出しちゃうんだよね。

んなこたあ、どうでもよくて。

そうそう、最初から2曲目のサクラ小町落ちサビ途中で曲が止まって、でもパッセンのコールと手拍子の中でクルーがやりきった、これもトピックスではあるのよね。
途中でやめようかどうか迷ったなんて、ねぎちゃん、言ってたけれど。
どうなんだろね、まずこのアクシデント自体は音響部隊は大反省で、別に当然いいことじゃないのだけれど、それで、にもかかわらずきっちりやりきったというのはとても良い光景で、思わず笑顔になったのだけれど。

PASSPO☆なら当たり前だってのもまた、思ったんだよね。
とかく音響トラブルの多いグループで、だから慣れってのもおおいにあるのだけれど、それにしても、このくらいじゃ全然やめないだろな、続けちゃうだろな、そのくらい強い子たちだとはもう、思っているんだよね。

宇都宮は特に個別具体的な感想になってしまって、なんかまとまらないのだけれど。

PASSPO☆が進みたい方向性を強く感じた2日間だったんだよね。
お題目のアメリカンガールズロック。自分たちが思う、可愛さとカッコよさ。
自分たちが考えた、自分たちに最も似合う、自分たちが最も得意な、自分たちが実現したい、そんな自分たち、そこを目指して行くんだという、強い意思表示。
そして、上述の通り、それはもともと最初から持っていた方向性への回帰、なおかつ、音楽的にも他の面でも、多様なものをくぐってきて、荒波に呑まれ、乱気流に呑みこまれ、その中で培ってきた豊潤さ、それをもっての堂々の帰還。
僕はそう思うんです。

別に僕はこのPASSPO☆の方向、趣味としてはストライクではない。
そんなもの、客のことなんていいんです。
本当に向きたい方向に向いて走ってくれれば、それでいい。そんなところで客の顔色うかがう必要なんかない。
この方向性が自分たちにマッチして、素晴らしいものになったとしても、それで客が呼べるとも限らない、別にそれでいい。
何もかもが歯車ガチっと噛み合って、やっていく中で充実していれば、それでいいんじゃないかと思うんだよね。
これからはそうなれるんじゃないかな、そんなものを、感じたんです。

握手した時、さこが、「ついに自分たちでアイデア出すようになっちゃった~」なんて、上機嫌だったんだよね。
字面で見るとかなり語弊があるのだけれど、今までアイデア出していなかったわけじゃなくて、主体的に組み立てていく、やりたいことを明確に固めて、その方向で実施していく、そういうことができているんだろうなと思う。
柏では新曲についても食い気味に聞かれたから、方向性はよくわかった、それだけ、伝えたっけ。
なんか握手中も、随分しっかりしちゃったなあ、そんなこと、思ってたんだよね。

そういえば、宇都宮で、「餃子食べたってことは、ビール呑んだの?いいなぁ!」なんてことも言われて。
「お酒は肝臓に悪いからダメだよ!おつまみも塩辛いもの多いし体に悪いからダメだよ!」なんて叱られていたころとは、隔世の感で。
大人になったんだなあ、としみじみで。

そう、最近、握手のとき、さこの顔ぼーっと見てるの、お気に入りなんですよねって、さこにとっちゃ随分迷惑な話だろうけれど。

そんなのはどうでもいいのだけれど。
ついにPASSPO☆さんが、どっちに向かうか、決めたということで。
この新生PASSPO☆、どこまで行けるかなあ。
まあ、今まで通り、飽きるまでは、ついて行こうと思う次第で。