続きです
山崎「お前の温情についてだが、あれは御上直々の御達しだ。
ボケてきておられるとはいえ、流石だ!
お前の毒見が無ければ、自分もおろか城の者達も大変なことになったであろうとな・・・・。」
新之丞「例えば・・・・・、島田殿の口添えがあったなんてことは・・・・・・?」
山崎「ねえねぇ、あん人は、己の出世の事しか考えてねぇ!」
騙されていた!!
騙されていた!!
騙された挙句に、加代は手ごめにされ、弄ばれた。
自分の目が見えないのを良いことに。
自分達は島田の遊びに、良いように泳がされていただけだった。
突き抜けるような怒りを抑え、新之丞は徳平に言います。
新之丞「お前は今すぐ島田の屋敷に行って、島田に伝えろ!
明朝巳の刻、河原でお待ちしております・・・・・。
盲人だからと言って、ご油断召さるな・・・・・と!!」
新之丞の剣幕に押され、転がるように家を出た徳平。
島田「・・・・・・それは、果し合いと言う事か?」
徳平「盲人だからと言って、甘く見るなよ!」←言葉が悪くなっているのは、徳平の気持ちなんでしょうね
島田「この、下郎の分際で!」
徳平「ワシじゃねぇ! 旦那様だ!」
島田「承知したと伝えろ! 川原で待っているといい!」
島田は一刀流の手練れ。
新之丞が勝つのは、万に一つもありませんでした。
徳平「旦那様、一生のお願いだ! 果し合いなんかやめてくれ!」
新之丞「これは武士の一分に関わる事じゃ。 引くわけにはいかねぇ。」
新之丞は両親が死んでからずっと世話になっていた徳平に、礼を言います。
徳平は涙を流しながらむせび泣きます。
身分が違うとはいえ、息子みたいなもんだったんでしょうね。
次の日、徳平に介助をされながら、河原で自分を待つ新之丞の姿を、
哀れそうに島田が遠くから見ています。
島田「待たせたな。 三村、お前、ご新造と離縁したそうだな。
新之丞「人の妻を、手ごめ同然に穢しておいて、何を言うか!」
島田「お前はそれで、禄を食めれたではないか。」
いけしゃあしゃあと、嘘をつく島田。
新之丞「嘘だ!! あんたは嘘をついて、加代を騙した!
この、卑怯者!!」
卑怯者呼ばわりされたら(卑怯者だけど)島田とて引けません。
島田「盲人相手に果し合いなどと思ったが、卑怯者と言うのあれば、仕方あるまい!」
そう言って剣を抜き合う二人。
思った以上に鋭い新之丞の剣に、驚く島田。
島田「貴様、見えるのか??」
気配だけで達人と切り合える新之丞。
何度も切り結ぶが、懐に入らせない新之丞に、業を焼いた島田は・・・・・、
気配を消し、新之丞の背後にある建物の上に移動します。
たった一太刀でいい。
恨みを込めて島田を切りたい。
新之丞の心に、師匠の言葉が蘇ります。
孫八郎「唯一勝てる方法があるとすれば、お前が死を覚悟し、相手が生に執着している時だ。」
死の覚悟ならばとっくにできている。
だが、只では死なない。
勝負は一瞬。
背後の建物の上から、新之丞の脳天を割るために飛び降りてきた島田。
踵を返し、島田の剣をかわしながら相手の腕を切った新之丞。
息の詰まる真剣勝負は新之丞の勝利でした。
徳平「だ、旦那様、ケガは?」
無傷だった新之丞。
程なくして、新之丞の家に、また山崎が訪ねてきます。
山崎「いやぁ島田様がのぅ、こぅ、左腕をバッサリと切られて運ばれてきて、
城は大騒ぎだった。 だが、相手が誰だったか一言もいわんとなぁ・・・・・・・・、
あくる日、残った手で、腹切ってしまったんだ。 相手は誰なんだろぅのぅ?」
自分とのことは何も言わずに自害して果てた島田。
↑片割れが死んでしまった文鳥を逃がしている
新之丞は、お咎めを受けることが無くなったのです。
生き残ってしまった新之丞。
新之丞「俺は、島田を切らねばならんかったんだろうか?」
島田は死に、加代は出ていき、自分は生き残った。
言いようのない空しさだけが胸を占めています。
この残された茫漠たる時間を、一体どのように過ごせばよいのか・・・・・。
徳平「旦那様、飯の用意が出来ました~~~。」
新之丞が生きているので喜んでいます。
徳平のつくるご飯を食べながら、
新之丞「この芋がらの煮物、お前が作ったのか?」
徳平「へ?? いやぁ、この間言っていた飯炊き女です。」
新之丞「ここに連れてこい。」
飯炊き女は、新之丞の事を心配して、女中として仕えようとして戻ってきた加代でした。
新之丞「お湯くれ。」
茶碗を差し出す新之丞の手から、器を受け取り、新之丞に渡そうとしたとき、
咄嗟に加代の手が掴まれます。
新之丞「・・・・・よぅ、戻ってきてくれたのぅ、加代・・・・・。」
加代「私は、貴方の御傍にいても、良いんでがんすか?」
抱きとめる新之丞。
泣き崩れる加代。
ハッピーエンドで終わりました。
徳平って、仕掛け人臭いかも(笑)。
また一つ「武士」のありかたを学んだ気がします。
この映画の面白いところは、前二作とは、果し合いの毛色が違います。
前二作は「藩命」により、果し合いをしました。
一応大儀があったんですね。
しかし、今回は個人の「武士」としてのプライドにかけて・・・・。
だったので、終わった後にちゃんと空しさを感じているシーンが印象的でした。
個人的な恨みを果たしたところでどうにもならないんだって所を描いているのが素晴らしい!
そのあたりの違いや、凄くいい味を出している笹野高史さんや、
毎回、面白役担当の赤塚真人さんを見比べるのも良いと思います。
武士三部作、非常に素晴らしい映画ですので、是非是非観られることをお勧めします!