こんにちは、佐藤真二です。
よく、逆流性食道炎で悩まれている方から
「我慢しつづけるとどうなるんですか?」という
ご質問をいただきます。
私自身も、最初の頃は市販の胃腸薬で
ごまかしていた事がありますので、お気持ちは十分に分かります。
できることなら、病院に行く事なく
手軽に治したいという気持ちがありますからね。
しかし、その逆流性食道炎ですが放置をし続けると
より重い病気を併発する可能性もあるのです。
今日は、その事についてお話しいたしますね。
●放っておくと食道がんになる危険も
食道に傷のできる逆流性食道炎では、いろいろな
合併症をおこしてくることがあります。
具体的な合併症には、出血、穿孔(せんこう)、
狭窄(きょうさく)、バレット食道とそのがん化があります。
●出血・穿孔
穿孔(せんこう)とは「穴があく」ことです。
出血や穿孔は、食道に傷のできる逆流性食道炎において、
傷が深くなって血管に達したり、さらに傷が深くなって
食道の壁が破れるなどしておこります。
出血や穿孔は高齢者によく見られますが、高齢者は傷が
小さい時にはあまり症状を感じず、傷が大きくなって
初めて症状を感じることが多いからです。
そのため傷が大きくなりがちなので、高齢者は特に注意が必要です。
出血がおきた時は、内視鏡を使った止血処置をする必要があります。
穿孔がおきた時は、絶食水と点滴による栄養補給で治ることもありますが、
手術をしなければならないこともあり、場合によっては命にかかわる危険な状態といえます。
●狭窄
狭窄(きょうさく)とは「せまくなる」ことです。食道がせまくなり、
食べ物が通りにくくなります。逆流性食道炎で深く大きな傷ができ、
治り、また大きな傷ができる。これを繰り返していると、狭窄がおこります。
傷ができて、それが治ると傷あとが残るのですが、傷あとが縮んで、
狭窄をおこすのです。この、傷あとが縮むことを瘢痕収縮(はんこんしゅうしゅく)
と呼んでいます。食道に深い傷ができ、治り、傷あとが縮む。
すると食道は少しせまくなります。これを繰り返すと、食道は
どんどん狭くなってしまうのです。すると食べ物が通りにくくなり、
食べ物を飲み込む時に胸がつかえるようになってしまいます。
●バレット食道
さらに逆流性食道炎を繰り返していると、今度はバレット食道
という変化が食道内におこります。正常な食道の粘膜は扁平上皮
(へんぺいじょうひ)という皮膚と同じ形の組織からなっています。
これは、胃液の消化にとても弱く、胃液ですぐに傷ついてしまいます。
一方、胃や腸の粘膜は円柱上皮という組織からなり、胃液の消化に強く
、胃液に抵抗性を示します。逆流性食道炎では、食道の胃に近いところに、
扁平上皮が円柱上皮に置きかえられた部分があらわれることがあり、
この状態をバレット食道と呼びます。
バレット食道の原因はまだはっきりわかっていませんが、逆流性食道炎を
くり返していると、食道の扁平上皮が、傷が治るときに円柱上皮に変化して、
胃の消化に抵抗性を示すように、なるのではないかと考えられています。
バレット食道そのものには問題はないのですが、がん化する可能性が
高いことがわかっています。逆流性食道炎の多いヨーロッパやアメリカでは、
バレット食道を持つ人も多く、全ての食道がんの半分以上が、バレット食道
からおこる食道腺がんだといわれています。
日本ではバレット食道はそれほど多くありませんが、
最近増えてきていることは確かです。
また、バレット食道は、一度なってしまうと
なかなかよくならず、完全に治ることはないといわれています。
バレット食道にならないためにも、逆流性食道炎を
放っておかずに、早めに根本的に完治させることが大切なのです。
次回の内容は、『病院では対処療法しかしてくれません』
を準備していますので、もうしばらくお待ちいただければと思います。