ありがとう、って言うのが苦手だった。

言うたびに、何かがこみ上げてきた。




「そんなふうに思ってくれるなら、もっと親を大事にしなさい」

「感謝してるなら、文句言わないで」




そんな言葉がセットで返ってくるたびに、

「ありがとう」は、心からじゃなく、恐る恐る言うものになった。




でも私は、本当は言いたかったんだと思う。




ちゃんと伝えたかった。

心から「ありがとう」って、言ってよかった日もあった。




でも、「ありがとう」のあとに

“また傷つく”って思うと、やっぱり言えなかった。




今は少しずつ、変わってきた。




ありがとうを言いたいときに、言っていい。

その気持ちを誰かに渡したいときに、まっすぐ渡していい。




ありがとうって、

「誰かのため」じゃなくて、

「自分の優しさ」のために使っていい言葉なんだと思えるようになってきた。




あなたの中にある「ありがとう」も、

大切にしてあげてくださいね。