84、 パキスタン:史上最悪、洪水の死者2000人超 | NPO法人生涯青春の会

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 【ニューデリー栗田慎一】パキスタンで先月下旬から続く大雨による洪水被害は、浸水や倒壊などの被害家屋が05年のパキスタン大地震の被害家屋を4万軒上回る65万軒となり、死者も推定2000人を突破、建国史上最悪級の水害となった。背景には、「対テロ」戦の長期化が招いた貧困層の拡大で、土地代のかからない河川敷に人々が大量に住み着いていたことが挙げられる。後手に回った政府の対応に国民の怒りは収まらず、パキスタンは新たな政情不安を抱え込んだ。


 雨はアフガニスタンやインドと国境を接する北部地域を中心に降り続き、洪水や土砂崩れ、鉄砲水の被害はインダス川やその支流域で頻発。被害は、下流域のパンジャブ州や河口があるシンド州へも広がり、基幹産業の綿花畑が冠水

するなど来月からの収穫が絶望視されている。


 政府の最新集計によると、死者は北西部カイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)を中心に計1700人。しかし、同州政府は「調査できていない地域が多く、もっと多い」と2000人を超えていると主張。避難民も1200万人とパキスタン地震時の約4倍に達した。


 地元メディアが「建国史上最悪」と報じた今回の水害の背景には、「貧困」がある。


 パキスタンは現在、1日の収入が1ドル未満の「貧困ライン」以下で暮らす国民が人口の37%と過去最悪だ。特に米政権がパキスタンに武装勢力掃討作戦を強化するよう圧力を強めた約2年前から貧困が拡大し、戦闘地域から逃れた人々や都市の貧困層が河川敷周辺に移住していった。


 さらに、こうした貧困層の多くは今回、水害から家や家畜を守ろうと自宅に残り、逆に命もわずかな財産も失ってしまった。


 そんなさなか、ザルダリ大統領は今月上旬、フランスと英国を家族を連れて公式訪問した。フランスでは、パリ郊外に自身が保有する豪華別荘に滞在し、メディアの前でサルコジ大統領と握手する際、長男ビラワル氏を脇に立たせて「外交デビュー」させた。英国では、インド訪問時にパキスタンのテロ対策を指弾したキャメロン首相と笑顔で握手し、事実上不問に付した。


 これらは、豪雨被害や対テロ戦による治安悪化に苦しむ国民の怒りを増幅。主要メディアは、ザルダリ氏が英国であった支持者との会合で参加者から靴を投げられたと報道。国内でも、野党勢力などが主催する反政府デモが活発化している。


 汚職体質や親米策に国民から非難を浴びてきたザルダリ氏は、水害対策でも失点を重ねたことで、深刻な政治危機に陥っている。

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毎日新聞 201089日 1127分(最終更新 89日 1152分)